君に奏でる子守唄   作:ペンギン隊長

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剪定事象の没ルート。七章前。本編は違う設定になる筈
あらすじのあの子にロマンが含まれている場合


なんて滑稽なお話だ!

 

 

 召喚に立ち会ったものたち全てが己の目を疑うしかなかった。

「…えーと…いや、すまないね。驚かせてしまったかな?」

 困ったように微笑をうかべて頭をかくその人物を、マスター二人は、マシュは、知っている。いや、知らないが、知っている。しかし、その人物は彼らに対してそのような表情を浮かべ、そのような事を言うような人物ではないはずなのだ。

「サーヴァント、キャスター。真名はソロモン。一身上の都合により、ここに現界したよ」

 そう言って、ソロモンは何処かで見たようなへらりとした笑みを浮かべてみせた。

 

 

 

「えっ…えっ………何で?なんて?」

「どうも。ラスボスじゃない方のソロモン王です」

「えええええええ!?」

 ソロモンが真っ先に向かったのは管制室で忙しく働いていたドクターの元だった。丁度その場に来ていたダ・ヴィンチも厳しい視線をソロモンに向けている。

「どうも、君はこの件の真相を知っているようだね?」

「そりゃあ、解決した後の世界線からこちらに来ているからね。というか、その関係でドクター・ロマンティックに言わなければいけないことがあるんだ」

「…言わなければいけないこと?」

「――君の持つ奥の手は、この世界線では使えない」

「………え?」

 虚を突かれたような顔をするドクターに、ソロモンはにこり、と笑ってみせる。

「君がそれ(・・)を使わない世界線というのが必要でね。ちょっと因果がおかしなことになっているんだけど、この(・・)私が成立するためにあちらのマスターが色々と無茶をしたものだから」

「待って。…待ってくれ。それは、つまり、やっぱり、僕たちが最後に対峙するのは」

「ゲーティアを連れてこれたら早かったかもしれないけど、彼、すっかり炬燵が気に入ってしまったらしくて、なかなかこたつむりを止めてくれなくてね。…いや、いたところで説得できるかと言われると難しいところではあるのだけど」

「だから待ってってば!!」

 とても動揺して必死になっている様子のドクターに、ソロモンは微笑さえ浮かべてうん?と首を傾げてみせた。

「魔神柱たちは、本当に、ソロモン王の魔神たちなのかい」

「ああ」

「そして、ソロモン王はその首魁じゃない…少なくとも、目の前の貴方は、貴方という側面はそうではない」

「ああ。別側面が首魁というわけでもないよ。…いや、ある意味では別側面なのかな?」

「…アレは、使えない。アレでは解決しない?」

「その辺りの扱いはまだ何とも。確かに、あちらの世界線では、君の奥の手が敵の首魁を倒す為の決定打になったのだけれどね」

 あはは、と場面に似つかわしくない笑顔を浮かべてソロモンは言う。

「後々、ドクター・ロマンがどれだけカルデアの皆に愛されているのか、思い知ってくれ、と物凄く怒られる程度には有効だったよ。私としては、やり逃げ出来ればそれが一番良かったんじゃないかな、と思わないではないくらいに」

「…いや、それはおかしい…だろう?だって、僕がアレを使っていたら」

「カルデアに保管されてた聖杯、全部つぎこんでの無茶をされてしまってね。"僕たちがどれだけ苦労して手に入れたか知らない外の連中の手にゆだねるより何倍も有用な使い方だ"、なんてマスターは言っていたけれど。まあ実際、一度は消滅してるんだよね、当然」

「・・・」

 悲しげな顔をして黙ってしまったドクターの代わりに、ダ・ヴィンチが言う。

「それで、君は何故このカルデアに召喚されたのかな。まさか、君が代わりに奥の手を使う、なんて理由じゃあないだろう?」

「それは勿論。それでは意味がないからね。ちょっとご都合主義(デウスエクスマキナ)みたいになってしまうけれど、マスター…の、同位体、というべきかな?と組んで別のアプローチで頑張ってみようかと」

「それは、つまり…」

「ね、アイカちゃん。君もドクターが消えるのは厭だろう?」

「それは勿論。友達とはいずれ別れる相手であったとしても…可能であれば長い付き合いでいたいものです。…しかし、僕で役に立つんですか?」

「あちらの世界線の君が太鼓判を押してくれたよ。実行そのものは可能だろうって。問題は、準備が間に合うかどうかだね。…流石に、ぶっつけ本番で出来るほど甘くないだろうし」

「俺たちに手伝えることはありますか」

「うーん。場合によっては、七つ目の特異点は君一人で解決してもらって、その間ずっと私とアイカちゃんで準備をする事になるかもしれないね」

 ソロモンの言葉に藤丸は真剣な目をしてその目を見る。ソロモンはそれにへらりとした笑みを返してみせた。

「きっと、君なら大丈夫だよ、立香君。この私は、直接は知らないけれど…君も、世界を救う最後のマスターだ」

 

 

 

 

 ラスボス対策のための、策の準備のため、二人で会議室を貸し切りにして籠ったところで、世間話のようにアイカはソロモンに問いかける。

「ところで。ソロモン王はどんな状況なら世界を滅ぼすんです?」

「滅ぼさないよ。…ああ、いや。でも…まずあり得ない話ではあるけれど、天の主に命じられたら、滅ぼすかも知れないね」

「…成程。ってことは、ダビデ王の見解は正しかったのか」

「…えっ」

 初めて驚いた様子を見せたソロモンに、アイカは己が三つ目の特異点でダビデと話した時の事を告げる。それを聞いて、ソロモンは少し困ったような顔をして微笑った。

「そうか…父上にそこまで理解されている世界線もあったのか…」

「ほぼ育児放棄してたらしいとは聞いてましたけど」

「うん、まあ、その点は彼を責めないでくれるかい?何しろ、父上が手塩にかけて育てた子供は皆碌でもないことになっているから。私は、生まれてすぐに神に捧げられたし」

 ソロモンの言葉に、アイカはこいつ何言ってるんだ?みたいな顔をした。

「そんな零か百かみたいな感じだからそんな極端な子供になったんじゃなくて?」

「…そう見えるかい?」

「人は、生まれた時から人間である訳じゃないんですよ。…って、言っても釈迦に説法なのかな。人間らしさとは、成長する中で獲得するものです。僕はそれをよく知っている。…西洋の神がそうであるかは知らなかったですけど、神の求める無垢さは非人間性といってもいいですからねぇ」

「…ああ。そっかー…こっちの世界線の君はあっちの君より私よりなんだね」

「やー、何かエレナが言うには僕、啓示スキルとか付いてるらしいんですよね。…というか、その様子じゃ、伝承じゃあ啓示を受けたのは一度きりって話だったけど、ホットライン常駐的な?」

「まあ大体そんな感じになるよね」

「うわあ、ろくでもない」

 くすくす、とアイカは笑う。ソロモンもそれに合わせるようにくすくす笑いをした。

「だから…うん。私は、自分で選んで物事を実行したのは、サーヴァントになってからが初めてなんだ」

「王様って大変ですね。僕はまあ、選択肢こそ出されましたけど、選んで実行してるのは僕自身ですよ。…少なくとも、僕の認識の上では」

「うん。責任が無くなったから、好きに選ぶ事も許されるんじゃないかって」

 眩しげに眼を細めて、ソロモンは言う。

「選んで、自分の選択の結果の、責任を自分で取って…最終的に、あっちのアイカちゃんに滅茶苦茶怒られたんだけど」

「僕が他人の悔いのない選択に怒るって珍しい。余程アホな事したんですね」

「酷いなあ」

「そりゃあ、幾らいつかは縁切りされる関係と覚悟していても、自分から友達だって言ってくれた人が自分より先に自己犠牲をしていなくなったら怒りますよ。ね、ドクター」

「改めて聞いてもアイカちゃんの友達観はひど…」

 あれ、と目を丸くして己を見るソロモンに、アイカはにっこりと笑ってみせた。

「言ってなかったんですけど、ドクターに会う前にマシュに、なんとなくドクター・ロマンに似てるって言われてたんですよ僕」

「根拠それなの!?」

「馬脚が現れましたよ、ドクター・ソロモン。事情はさっぱりですけど、まあ、ドクターが何やら大きな秘密を抱えているらしい、という話は聞いてましたので」

「えー、あー、いや…ね?私は()そのものではないんだよ。記録は持っているけれどね」

「それはわかりますよ。一人称違いますし。なにより、ドルオタ臭がしない」

「私は、マギ☆マリは、卒業しました!!」

「え、何があったんです?あんなに依存していたのに…」

「そこは突っ込まないでくれ。今となっては黒歴史なんだ…」

「なにそれこわい」

 そう言って、くすくす笑った後にアイカは言う。

「まあ、あなたのやりやすい方でいいですよ。どちらにせよ、僕にとってのドクターとあなたは別の人間ですから一緒にはしませんから」

「うう、優しいんだか、酷いんだかわからないお言葉…うん、でも、まあ…ちょっとは普通の人間みたいに振る舞わせてもらおうかなあ。どちらが楽とか、あまりないんだけどね」

 

 

 

「なるほど。本体が術式であるのなら…」

「勿論、実際に対峙した上で調整(アジャスト)は必要だろうけれどね。基礎的な構成(データ)はこの魔導書(レメゲトン)に記された通りである筈だ。…というよりも、私の使い魔の情報が書かれている魔導書、と定義されているから此処に記されているというか」

「…一体二体ならまだしも、七十二柱全部その場で解析するというのは現実的じゃないですからね。主に解析にかかる時間からいって。解析中の防護はサーヴァントに頼むという手もありますけど」

「魔導書との相違点は主に、一度人間から変身するという手間(ラグ)を挟んでいることによるズレということになるのかな。…ただ、七十二柱は事前に八割方解析できたとしても、その複合体であるゲーティアに関しては…」

 議論する二人の間に、ぬっと褐色の腕が差し込まれる。

「ん?どしたのくーさん。呼んでなかったよね?」

「………主に懐く褐色肌刺青男士は俺一人で十分だ」

「…。え、何?罰ゲーム?何の賭けをして負けたの?」

「アルジュナ君は?」

「アイツはもう一人(ふじまる)の担当だから関係ない」

「いや、アルジュナは刺青ないよね。…ないよね?」

 

 

 

 

 






(終局特異点)
「なっ…貴様は…!?」
「いえーいゲーティア、見てる~?」
『(絶句)』
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