旅に出てから二週間、俺は今ニビジムで門下のトレーナーたちを相手にバトルを繰り広げていた。もう三十分は続いているだろうか。
荒野のようなフィールドには乾いた砂と、大小様々な岩や柱。ジム特有の自然環境を再現した空間に、苦戦させられている。
想像していたほど、ジム戦というのは甘くないらしい。バッジ0個の子供がいきなりジムリーダーと戦いたいと訪ねて行っても、はいいいですよ、とはならない。実力を証明しなければ、ジム戦にさえたどり着けないのだ。
そんなわけで、まだ見ぬジムリーダーと相見えるため、アイアントのように現れる彼らとヒイヒイ言いながら戦っている。
ゼニガメのあわ攻撃が炸裂し、ようやく相手のイシツブテが倒れた。
もうそろそろ勘弁してくれ…。相手のトレーナーも実力は並じゃない。俺のような初心者トレーナーが相手をするには荷が重すぎるのだ。それをチートボディとゼニガメのタイプ相性の有利でゴリ押して、なんとか勝ちを拾っている。
4人目のトレーナーが出て行った後、奥からようやくお待ちかねの人物が姿を見せた。
「待たせたな、俺がニビのジムリーダー、タケシだ。」
とりあえず言っておくと、半裸ではなかった。ラフなトレーナーにジーンズといういでたちで、高身長も相まってしっかりとした青年、という印象がにじみ出ている。手を差し出してきたが、俺はそれを取らなかった。
「待たせすぎだっつの。ま、残念ながら俺はまるで消耗してないわけだけど。」
先発でバトルしていたゼニガメは正直ジムリーダー相手に繰り出せないほど疲労していたが、グリーンボディはそれを表情に出さないばかりか、煽りまで入れてくる。隣でゼニガメも、えっへん、とばかりにドヤ顔を決めているが、体のあちこちにダメージを受けているのは可愛らしくも一目でわかった。
「いや、すまない。だがこうして挑戦者の力量を測るのはジムの規則のようなものだ。大目に見てくれ。」
「へいへい、どうせ負けないし、気にしてねえよ。」
うん、さすがの減らず口。ただタケシの隣に侍ってる少女がキレ気味にこっちを睨んでるのが怖い。さっき倒したトレーナーの一人だ。タケシにそれ以上無礼なこと言ったら殺す、という思念がビンビンに伝わってくる。申し訳ない。このボディは割と勝手に口走っちゃうんだ。
少女を手で制してタケシは苦笑した。
「まずは君のポケモンの傷を治そう。」
言いながら高級そうなパッケージのきずぐすりを取り出すと、慣れた手つきでゼニガメの回復を行なった。ゲームのようにみるみるうちに体力が回復し、ゼニガメは元気を取り戻してぴょんぴょん動き回る。
「礼は言わないぞ。」
「言われることでもない。」
タケシは微笑して立ち上がった。一瞬ブリーダー、という職業が頭をよぎった。この世界のタケシは、それを夢見ていたりするのだろうか。
「気を取り直して、早速ジム戦と行こう。俺はこの二体を使う。君は六匹までポケモンを使うといい。」
当たり前のようにそう言ってタケシは二つのボールを取り出す。
「なんだ、手加減のつもりか?」
「いや、ジムのルールに則っているだけだ。対戦相手のバッジの数に対応して、ジムリーダーは使うポケモンやルールを変更する。君はまだバッジを持っていないんだろう?」
「…まあ、ルールがそうだって言うなら、ありがたくそうさせてもらうけど。」
ここでごねても始まらないので頷いておく。まあ、顔には不服そうな表情が張り付いているだろうが。
お互いフィールドの端に移動して、ボールを構える。ピリッとした緊張感が場を支配して、いつになく心が騒いだ。初めての公式戦、気合は十分だ。
「両者、準備はよろしいですか?」
審判の声に俺たちは小さく頷く。
「ルールは二対六のシングルバトル。道具の使用は禁止。先に相手の使用ポケモンを全て戦闘不能にした方の勝利とします。それでは、バトル始め!」
二つのボールがフィールドに投げ込まれる。
「いけ、マンキー!」
「出てこいイシツブテ!」
向こうはさっきジムのトレーナーたちとのバトルでも使われていたイシツブテだ。ただ、体格はそれらより一回り大きく、がっしりとしていた。目つきも鋭く場数を踏んでいることが見て取れる。対して俺のマンキーはトキワシティ周辺で捕まえてタケシ対策に育てていたかくとうポケモン。まったく歯が立たないということはないと思いたい。
両者の眼光はぶつかり、火花を散らす。
「マンキー、からてチョップ!」
勢いよく駆け出し、イシツブテに接近していく。相手は動かずじっとこちらの攻撃を見据えている。さっきトレーナーたちと戦った時も思ったが、いわタイプのポケモンには己の防御力への強い信頼があるらしい。だから攻撃が至近距離まで迫っても動じないし、トレーナーの指示を待つことができる。
「イシツブテ!丸くなるだ!」
タケシが叫ぶと、イシツブテは腕を自分の体を守るように組み、鈍く光を帯びた。
からてチョップは完全に直撃した。しかし、イシツブテはのけぞらなかった。それはまるで、本当に岩石でも殴っているかのような、手応えのなさだ。
「ころがるだ!」
まるくなるをしたことにより威力が増したころがるがマンキーに襲いかかる。
「マンキー、けたぐり!」
ここで逃げてころがるの速度を稼がれると厄介だ。転がり始めを狙い、足払いが放たれる。イシツブテの下腹部を強く打ち付けた。
岩のようだった体が心持ち浮き上がる。だが、回転は止まらず、マンキーはそれに飲み込まれてしまった。
「キーッ…!」
マンキーの悲痛な叫びがこだまする。吹き飛ばされて俺の足元に倒れこんだ。
「大丈夫かマンキー?」
俺の問いかけに頷き返すその瞳はまだ闘志を燃やしている。ゆっくりと起き上がり、マンキーは再び拳を構えた。
「立ち上がるか。だが、ころがるはまだ続いているぞ。」
「いいぜ、すぐ止めてやる。」
轟音を立てながら、イシツブテはころがるを続けている。続いているということは加速しているということ。ゲームでは5ターンの間ころがり続け、一回ごとに威力が倍に上がっていた。そして5ターン目の攻撃ののち、技は解除される。
「マンキー、フィールドの岩を飛び移りながら逃げ回れ。」
考えたのは、ころがるの効果が解除されるまで逃げ回る、ということ。ニビジム特有の岩のフィールドを利用し、遮蔽物として、あるいはジャングルの木と見立てて飛び回る。
「追いかけろ!」
イシツブテは加速して追いかけ、岩にぶつかるたびにそれを破壊していく。時には先回りやフェイントを挟みながら、積極的に逃げ場を潰している。
タケシはジムリーダーなんだから、このフィールドでの戦闘方法は熟知していて当然か。ころがるの効果が切れるまで逃げ延びられるかどうか。
時間にして1分か2分、利用できる岩が尽きた。タイミングとして最悪だ。ころがるはちょうど、最速に達した。こんなことなら、逃げまわらずに早く叩いておくべきだったか。
「押しつぶせ、イシツブテ!」
まるでスポーツカーのような速度で迫るイシツブテ。マンキーは覚悟を決めたように立ち尽くす。ぶっつけ本番だが、やってみるか。マンキーもちら、と俺に視線を送り、頷いた。タイミングは読み間違えない。衝突の瞬間、叫んだ。
「…いまだ!きしかいせい!」
同時にマンキーが拳を突き出す。ドン、と音がしてイシツブテはサッカーボールのように弾かれた。だが、マンキーも無事ではすまない。同じように、いやそれ以上の威力で反対方向に跳ね飛ばされる。そして駆け寄ると目を回して気絶していた。
「マンキー戦闘不能、イシツブテの勝ち!」
「っ…!」
「よく耐えたイシツブテ。」
「…イッシィッ」
イシツブテは立ち上がっていた。さすがにダメージは大きかったようだが、それでも倒すには至らなかった。
俺はマンキーをボールに戻して、ぐっと握りしめる。反省は後だ。切り替えろ。次の手を考えないと。
「ハッ、ジムリーダーってだけあって、他の雑魚とは格が違うみたいだな。だけど次のポケモンでケリをつけさせてもらうぜ!」
心情とは裏腹に、グリーンマウスはまるで取り乱さず、楽しげに言う。
次のボールを投げ込む。現れたのはバタフリーだ。キラキラとはためく羽、大きな瞳は案外愛らしい。トキワの森で捕獲したが、まさかここで出すことになるとは思っていなかった。
「…なるほど、悪くない選択だ。飛んでいればころがるを食らうことはない、ということか。だが…。」
そう。それだけで攻略できるほどジムリーダーは甘くない。
「イシツブテ、いわおとし!」
直径二メートル以上はあろうかという岩を生み出したイシツブテは、バタフリーのいる方向に打ち出した。
「かわせ!」
ひらひら飛び回って回避する。
「連続でいわおとしだ!」
「させるな!ねんりきだ!」
新たな岩を打ち出そうとしているイシツブテにねんりきを食らわせる。防御力においては岩石のように硬い相手だが、特殊攻撃にはそれほどでもない。イシツブテの体は地面に強く叩きつけられた。
堪えられたが、マンキーとの戦闘で負った傷のためか、動きは鈍い。再びいわおとしを放とうとバタフリーに視線を送ったのを見て、
「反撃の隙を与えるな!ねんりきだ!」
バンッ、とクレーターができるほどの力でその体を押し付ける。イシツブテは辛そうに歯を食いしばった。
「よし!とどめのかぜおこし!」
烈風が吹きすさび、フィールドを駆け巡る。土煙が一面に上がった。
「くっ、イシツブテ!」
視界が晴れると、イシツブテは目を回して倒れていた。
「イシツブテ戦闘不能、バタフリーの勝ち!」
「さっきのダメージが響いていたか。」
「これで倒れたポケモンはお互い一匹。追い詰めたぜタケシ。」
「なるほど、面白い。」
タケシも熱くなってきたのか、瞳を燃やし、口元を綻ばす。モンスターボールを強く握り、気合を込めるように投げ上げた。
「こいつは俺の切り札。さっきのように行くとは考えないことだ。」
登場したポケモンに抱いた感想は一つ。でかい、でかすぎる。見上げると首が痛くなるほどの巨体。本当に生き物なのか、わからなくなるほどだ。
「いわへびポケモンのイワークだ。君はこいつを、どう突破する?」
興味深そうに問うてくるが、その雰囲気は強者、ジムリーダーとしての貫禄に満ちていた。二十歳そこそこの青年が出していい威厳じゃないって。
「関係ねえよ。俺が負けるなんてありえない。」
俺の不安などなんのその。口だけはペラペラ調子のいいことをのたまう。タケシはそれを聞いて、嬉しそうにこちらを睨んだ。おいお前実はバトルジャンキーなの?さらに相手を盛り上がらせてどうすんだよ。さっきの女の子なんかポーッと顔赤らめてバトル観戦してるけどさ。ちょっと頼むからタケシさん落ち着かせてくんない?
「フリー、フリー!」
バタフリーまで気合い入ってきてる。待て落ち着け。場の空気に乗せられるな。俺はトレーナーなんだからしっかり戦況を把握しないと。イワークは体長およそ9メートル。3階建ての一軒家並みのでかさで、いくらバタフリーが飛んでいようと尻尾を伸ばせば届きそうなほどでかい。いわ技に四倍の弱点を持つバタフリーを続投させるのは愚策だ。有利に立ち回れるポケモンに交代すべきだ。
「戻れバタフリー。」
交代で繰り出し、元気よく登場したそいつは、俺が一番信頼している相棒だ。
「さあ、始めようぜタケシ。決着をつけてやる。」
タケシside
俺がその少年に出会った時、最初に感じたものは『才能』だった。整った顔立ちから溢れる自信、軽薄そうな笑み。切れ長の瞳は鋭く俺を見据え、品定めするように鈍く色づいている。大器の片りんはすでに芽吹いていた。センスは申し分ない。戦わずとも差し向かいに立てばわかるものだ。
しかし惜しいと思った。そういう人間にいくらか出会ったことがある。そのことごとくは才覚ほどの結果を残せず、あるいは途中でトレーナーをやめ、去っていった。
他の職種では知らないが、少なくともトレーナーの才能とは、イコールで成功という切符にはならない。いやもちろん、一つのバトルでうまくやることはできるだろう。ただし、それと信頼関係は別だ。才に恵まれれば、驕りが繁栄する。驕りはポケモンへの接し方につながり、不信を呼ぶだろう。そうして生み出された不協和音を携えて勝てるほど、バトルの世界は甘くない。真の信頼関係とは簡単ではなく、決して一朝一夕で育まれるものではないのだ。
ましてやグリーンは俺の出会った『才能』あるトレーナー達の中でも飛び抜けてプライドが高そうだ。それがある限り、本当の意味で強くなることはできないだろう。半ば落胆しながら、バトルは開始された。しかし、
「マンキー、きしかいせい!」
あのトレーナーとポケモンの通じ合った戦いぶりには正直驚かされた。イシツブテに押し負けはしたが、彼のマンキーは完全にトレーナーを信頼し切っていたのだ。たとえ自分がここで倒れても、グリーンがそれを無駄にはしないと。
俺はその信頼の源泉に興味を抱いた。
「君はこいつを、どう突破する?」
イワークを繰り出してそうたずねると、彼は不敵な笑みを浮かべてこう答えた。
「関係ねえよ。俺が負けるなんてありえない。」
なるほど、な。この言葉を聞いて、俺は少しだけそれを知った。才能に裏打ちされた傲慢、自尊心。それは本来忌避されるべきものだ。しかし彼の場合、実力があり、言葉と態度には真実味がある。だからポケモンたちは彼に付いてくる。強い後ろ姿、傲岸不遜に、信頼を寄せる。
柄にもなくワクワクしてきた。目の前の相手は今までで出会ったことがないタイプのトレーナーだ。血が湧き立つのを感じる。バトルを心の底から求め、彼と戦える期待感でボールを握る手が震えた。
バタフリーを戻してから繰り出したのはゼニガメだ。さっき門下のトレーナーたちを相手に使っていたポケモン。タイプ相性は向こうに分がある。だが曲がりなりにもジムリーダーである俺は、弱点のポケモンと戦う心得もある。それをわからないグリーンではないだろう。どう攻めてくるか、今から楽しみだ。
二匹のポケモンが出揃いバトルは開始された。最初に仕掛けるのはやはりグリーンだ。
「みずでっぽう!」
技の発動を見て、こちらも指示を出す。
「がんせきふうじ!」
複数の巨大な岩を打ち出し、水撃をブロックする。
「連射しろ、みずでっぽう!」
「がんせきふうじだ!」
手始めにお互い得意の技を撃ち合い、探りを入れている状況。避けては撃ち、防いでは撃つ。
ラチがあかないが、こういうこう着状態は公式戦などのバトルでは案外見かける。相手のトレーナーの力量は、技の牽制、その使い方と捌き方でだいたい見当がつく。グリーンはまだ荒削りだが、要所要所はしっかりと抑えていた。相手が嫌がるタイミングで技を撃っている。だからこちらもうまく踏み込めない。
永遠にも思える均衡。実際は三十秒と経っていなかったろう。しかしそれはバトルにおいて、とても長く、緊張感を持って感ぜられる。
「ゼニッ…!?」
ようやく、こちらのがんせきふうじがゼニガメを捉えた。それもそのはず、この技はたとえ当たらなくとも、岩をフィールドに残し相手の行動範囲を狭める。撃ち続ければ軍配があがるは明白だろう。
「いわおとし!」
降りかかる巨岩を、グリーンは険しい表情で見据えた。
「みずでっぽうだ、岩を撃ち落とせ!」
指示通り、ゼニガメは上空に技を放つ。かろうじてだが、岩は落下地点を変えて、ゼニガメに直撃はしなかった。だが、上に気を取られすぎだ。
「たいあたり!」
ドンっと鈍い音がして、ゼニガメを吹き飛ばす。小さな体は空を舞い、地面に転げた。
「ゼニガメ、もう一踏ん張りだ。頼む。」
グリーンの声を聞いて、ゼニガメは立ち上がる。やはり、彼らは強い信頼で結びついている。この不利を覆せると確信しているようだ。面白い…!
「イワーク、がんせきふうじ!」
「突っ込めゼニガメ!」
仕掛けてきたか。だがゼニガメのすばやさで、駆け抜けられるわけがない。何か策があるのか。警戒しつつ、技を細かく指示していく。
「ゼニガメの3メートル手前にがんせきふうじ!移動しながら撃て!」
距離を詰められなければこちらが有利。踏み込ませはしない。だがゼニガメは止まる気配を見せない。牽制で放ったはずのがんせきふうじに、もろに突っ込んでいった。
砂埃でうまく見えない。だが、確かに今、ゼニガメに技が直撃したのを見た。何を考えていたかはわからないが、戦闘不能は免れない。
「…ゼニガメ、みずでっぽう!!」
「!?」
倒れてはいなかったのか!?砂埃の中から、水撃が放たれる。だがおかしい。この威力はなんだ。水を束ねたように渦巻いた柱が、イワークめがけて突き刺されようとしている。さっきまでのものとはまるで別ものだ。
「イワークかわせ!」
「イワァッ!?」
遅すぎた。イワークはその技に直撃し、巨体が水で万遍なく濡らされる。
「とどめだ、みずでっぽう!」
「イワークッ!がんせきふうじだ!」
力を振り絞り、イワークは岩を展開する。だが、ゼニガメのみずでっぽうはそんな岩を物ともせず、突き破って直進した。
ドシンッ。イワークは、倒れた。
俺の一瞬の油断が、この勝負を決定付けたのだ。
無言でイワークをボールに戻す。そして、グリーンに視線を移した。
笑っていた。いや、笑みというには明らかに質の違う、無機質な眼光。今まで受けていた自信過剰で楽天的な印象とはまるで逆、冷淡な表情だった。
「イワーク戦闘不能、ゼニガメの勝ち!よって勝者、マサラタウンのグリーン!」
審判の声も遠く聞こえた。ただグリーンの表情が目に焼き付いて離れなかった。
「…グリーン。」
俺は呼びかけて歩み寄る。こちらに気づいて、いつもの雰囲気に戻った。
「タケシ、俺の勝ちだな。」
「ああ、俺の負けだ。ただ一つ聞いていいか?」
「ん?」
俺は胸に溜まっていた疑問をそのままぶつけた。
「俺は最後のがんせきふうじで、ゼニガメを倒したと思っていた。直感なんかじゃない。ひとりのトレーナーとしての経験からだ。なぜ耐えられた。そしてその後、みずでっぽうの威力が増しただろう。あれは…。」
「あー、簡単だよ。からにこもるを使った。そんでがんせきふうじをギリギリ耐えて、特性のげきりゅうで、水技の威力を上げた。」
こともなげに言ってのける。だが、そんなことがあり得るのだろうか。俺もその可能性は考えた。げきりゅうは、水ポケモンの体力がごくわずかになった時発生する特性。狙って使うことは不可能だ。そのはずだ。しかしグリーンはまるで、故意に発生させたような言い方じゃないか。
「狙っていたのか…?げきりゅうが発動することを。」
「ああ、まあな。」
目眩がした。この少年は、何が見えているというんだ。いや、もっと根本的な問題。もしそれができたとして、誰が実行に移す?ポケモンの体力を、『調整』しようなんて真似。狂気、異端。計算などという生易しいものなどではない、冷酷な未来への確信。グリーン、その底にあるものを、俺は見通すことができない。
「…そうか、完敗だ。どうやら君は、すでに俺の目に見える限界を超えている。」
バッジを手渡した。グレーバッジは彼の手に冷たく光っていた。その嬉しそうな表情は俺を惑わす。先ほどの冷徹な笑みとの対比は、まるで太陽と月だ。
「そしてこの先はジムリーダーとしてではない、ただのタケシとしての言葉だが…。君はきっと近い将来、ポケモンリーグに挑戦し、そして、結果を残すだろう。予想ではなく、これは確信だ。君には才能がある。そしてもしそれが済んだら、もう一度俺とバトルしてくれ。今度はちゃんと、同じ条件で、手加減はしない。」
この不思議な少年と、また戦いたい、本気でぶつかり合いたい。大人気なくも、衝動が抑えられなかった。
彼は当たり前だ、というように頷いた。
俺はため息をついて、苦笑した。
すぐ先の未来、グリーンがポケモンリーグを制覇する、そんなビジョンを想像して。
主人公の素はゲーム脳の凡人。でもポケモンの世界で生きてる人からするとやべえやつなんですよね。
批評や感想、いっぱいください、、