白野ちゃんは叶えたい~凡才だけど頭脳労働~   作:フロストエース(仮)

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 ※注意書き(本編をお読みになる前に)



 先日、今作品における「原作とクロス元の世界観が合っていなさすぎる」との作品そのものを否定する意見をいただきました。

 筆者の価値観を押し付けるつもりはございません。原作では普通な世界観であるラブコメに、Fateを割り込ませているワケであり、勿論ながら世界観が合っているとは筆者も微塵も思ってはいません。

 ですので、あらかじめ“そういうもの”とご理解の上でお読みになるようお願い致します。
 それが受け付けられないのであれば、ブラウザバックを推奨致します。

 それでも良い、というお方はどうぞお進みください……。







第1話 岸波白野は庶務りたい

 

 

 私立秀知院学園───。

 

 かつて貴族や士族といった高貴な家の子らを教育する機関として創立された、由緒正しい名門校である。

 

 時代は移ろい、貴族制が廃止された現代でなお、富豪名家に生まれ将来、国を背負うであろう人材が多く就学している。

 

 そんな彼等を率い、纏め上げる者が凡人であるなど許されるはずもない!

 

 学園の全生徒を纏め上げるのが、生徒会である。そして、その中でも生徒会内すらも問わず、校内トップクラスの能力を持つ者が二人。

 

 秀知院学園生徒会、副会長───四宮かぐや。

 

 総資産200兆円。鉄道、銀行、自動車───ゆうに千を超える子会社を抱え、5大財閥の一つに数えられる『四宮グループ』。

 その本家本流、総帥・四宮雁庵の長女として生を受けた、正真正銘の令嬢である。

 その血筋の優秀さを語るが如く、芸事、音楽、武芸いずれの分野でも功績を残した正真正銘の『天才』。加えて、校内一───否! 道行く誰もが思わず振り向く美貌まで備えている才女。

 

 それが、四宮かぐやである。

 

 そして、その四宮こそが支える男こそ、秀知院学園生徒会長、白銀御行。

 

 質実剛健、聡明英知。学園模試は不動の1位!

 全国でも頂点を競い天才たちと互角以上に渡り合う猛者である!

 

 多才であるかぐやとは対照的に、勉学一本で畏怖と敬意を集め、その模範的な立ち振舞いにより、外部生でありながら生徒会長へと抜擢される。

 

 代々、会長に受け継がれる純金飾緒の重みは、秀知院二百年の重みである!!

 

 

 そのような二人が校内を並んで歩いていれば、周囲からは黄色い声がわき起こるのは自然であり必然!

 

 中には、

 

「いつ見てもお似合いな二人ですわ」

 

「ええ。神聖さすら感じてしまいます」

 

「もしかしてお付き合いなされてるのかしら? どなたか訊いてくださいな……」

 

「そんな! 近づく事すら烏滸がましいというのに、できる筈が御座いません……っ」

 

 

 などといった声もある程に、校内においては何かと話題を呼ぶ存在なのである。

 

 

 

 

「……………」

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだか、噂されてるみたいですね。私たちが交際してるとか……」

 

 お茶の用意をしながら、かぐやは件の噂噺を白銀へと告げる。場所は生徒会室。彼らが普段から執務を執り行う場所である。

 

「そういう年頃なのだろう。聞き流せばいい」

 

「ふふ……そういう物ですか。私は、そういった事柄に疎くて……」

 

 どうという事もない、とでもばかりに、かぐやの淹れた茶を口にする白銀。

 

(ふん。俺と四宮が付き合っているだと? くだらん色恋話に花を咲かせおって。愚かな連中だ。が、まぁ……

 

 

四宮がどうしても付き合ってくれと言うなら、考えてやらん事もないがな……!)

 

 

 その心境たるや、余裕綽々であり、更にかなりの上から目線であった。

 というのも、彼には自信を持って、四宮かぐやが己に好意を抱いていると推測できるデータが、頭の中にあるからだ。

 

 それというのも、最近読んだ雑誌に掲載されていた───『見落としがちな女のラブサイン特集』、それによるところの、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……である。

 

(まぁ確実に、向こうは俺に気があるだろうし。時間の問題か……)

 

 たかが雑誌、されど雑誌。掲載されている記事の真実はともかく、世間一般でそういった意見があるのも事実。故に、白銀は確信を抱くに至ったのである!

 

 

(くく…。さっさとその完璧なお嬢様の仮面を崩し、赤面しながら俺に哀願してくるがいい)

 

 などと、白銀が心の中でほくそ笑んでいる一方、かぐやはと言えば澄ました微笑みを携えながら、その心の内では、

 

(全く。下世話な愚民共。この私を誰だと思ってるの? 国の心臓たる四宮家の人間よ? どうすれば私と平民が付き合うなんて発想に至る?)

 

 この少女、白銀とはまた別の次元(いみ)で、完全に上から目線であった。

 

(まぁ、会長にギリのギリギリ可能性があるのは確かだけど。向こうが跪き、身も心も故郷すら捧げるというなら、この私に見合う男に鍛え上げてあげなくもないけれど……。まぁ、この私に恋い焦がれない男なんて居ないワケだし? 時間の問題かしら?)

 

 四宮の家に生まれたが故の宿命か、はたまた上流階級であるが故か。いかんせん、かぐやは優秀過ぎるが為に、プライドが尋常成らざる程に高いのである!

 

「ククク……」「ふふふ……」

 

 

 

 

「…………………、」

 

 

 

 

 果たしてお気づきになられた方は居るだろうか?

 先程からもう一人、白銀とかぐやの様子を観察している者が居るという事に。

 

 二人が廊下を並んで歩いていた時も、そして今、生徒会室にて仕事の合間に二人が休憩を挟んでいるこの瞬間も。

 黙って二人を見ている、影の薄いその存在こそが、生徒会庶務にして四宮かぐやのクラスメイトでもある、この物語の主人公───岸波白野、その人である。

 

(……え? 何を笑ってるの、この二人? やだ、ちょっと怖い……!)

 

 白野もまた、庶務の仕事に勤しんでおり、次の会議で配る資料のコピーをせっせとホチキスでまとめていた。

 先に一段落ついた会長に、かぐやが茶を淹れて噂噺について口にしたところまでは良かった。

 白銀が噂を一蹴し、かぐやも困ったように笑みを浮かべる。そして、何故かその後、二人して互いに聞こえぬように静かに、それでいて不敵に笑いだしたのである!

 

 想像してほしい。目の前で急に笑いだす者が居れば、誰だって怖いだろう。

 

(というか、会長は噂をあしらってるけど……これどっちも互いに意識してるんだよね。かぐやなんてチラチラ会長の事を見てて露骨だし)

 

 そう──プライドが高い二人だからこそ、当事者であるというのに、そこに気づけない。加えて、よく自分の世界に入りがちな二人。それが余計に拍車を掛けていた。

 

 逆に、第三者であり、それと同時に生徒会のメンバーでよく一緒になって仕事をする事の多い白野は、持ち前の洞察力もあり二人の関係性をなんとなく察していた。

 

 恋愛事に鈍そう(白野目線で)な白銀が読んだ雑誌も、白野が気を回して白銀の妹経由で彼に読むよう誘導したのだ。つまりは白野のお節介である。

 

 白野から見ても、とにかくもどかしい二人の関係性に、早々に決着をつけたい。そう思っての隠密行動であったのだが……。

 

(……告白、できるのかなぁ? 二人とも、割りとチキンなとこあるし。うーん、心配)

 

 未だに笑みを浮かべ続ける二人を心配しつつ、自らの作業に集中する白野だったが───

 

 

 

 などとやってるうちに、半年が過ぎた!!

 

 その間、特に何もなかった!

 

 

 

「そういえば今日、庭の噴水にある甘いりんごとさくらんぼのレリーフの奥深くにカタツムリが……」

 

「ああ、俺の妹が昔、暑いからといって噴水に入って風邪を引いてな。本当、感情で動くとろくな事に……」

 

 執務をこなしながら、他愛ない雑談を交わす白銀とかぐや。だがしかし! 胸中で渦巻くのは、そんなのほほんとしたものではなかった!

 

 この何でもない期間の間に二人の思考は、『付き合ってやってもいい』から、『如何に相手に告白させるか』という思考へとシフトしていた!!

 

 つまりは、白野の心配は見事的中。それどころか、もっと面倒な事に発展していたのである。それ即ち、恋愛頭脳戦!!

 

 この生徒会室の中で、超高校級の頭脳が高度な駆け引きを行っている事に、

 

「あ~、そういえばですね~」

 

 書記の藤原千花は全然気づいていなかった!! むしろバックにポワポワ感を醸し出している程である!

 

「この間、駅前に新しい喫茶店がオープンしたそうで、そこの開店オープン割引券を戴いたんですよ~。でも、期日が明日までなんです。私、今日と明日は家の用事で行けないので、良かったらどうぞ~!」

 

「ほう……」←備考・白銀、ドケチ

 

 藤原書記のスカートのポケットから取り出されたのは、一枚の割引券。どうやら一枚でドリンク二杯まで使えるらしかった。

 

「ふむ……思った以上に割り引くな。その程度の金額なら、俺の財布にも優しいし、せっかくだから行ってみるか。ドリンク二杯までなら、もう一人誰か……」

 

 白銀の言葉に、かぐやが目を見開く!

 男女で喫茶店でお茶する。それはつまり、デート!

 ここで白銀に自分を誘わせたなら、それはもう告白させたようなもの。気になる異性をお茶に誘う、その構図自体がイコール告白に他ならないとかぐやは判断!

 

 一方で、白銀もかぐやを誘うというところまでは思考が及んだ。が、しかし! 自分から誘うのは絶対にNO!!

 男から女をお茶に誘う時点で、「え? もしかして好きって思われてんじゃね?」と相手の女性に思わせる事に繋がり、遠回しな告白と捉えられかねないのである。

 たとえ直接的な告白でなかったとしても、()()であると相手に認識されてしまえば、その瞬間に敗北が決定してしまう!

 恋愛とは、告白した(好きになった)方が負けなのである!

 

 故に、白銀からお茶に誘う事はNG。しかし、それはかぐやにしても同じ事が言える。

 

 如何にして、相手に誘わせるか。それが今回の肝であると言えよう!

 

「流石に俺一人でドリンク二杯も飲むのは気が引けるな。かといって、せっかく二杯までは有効ならば使わねば損というもの。藤原書記は用事、石上会計も今日は帰ったし……どうだ? 四宮か岸波も行くか?」

 

 ここで白銀が仕掛ける! かぐやだけでなく、白野を候補として入れる事で、()()()()()()()()()()という狙い撃ちではないとアピールする事に成功する!

 

「え、私? うーん、私も今日はちょっと。帰ったら今日は月に一度の中国拳法の特訓があるので」

 

「そ、そうか(中国拳法の特訓てナニソレ……!?)」

 

 なし崩し的に巻き込まれた白野であったが、既に先約があると誘いを断る。……実は用事などなく、本当のところは白銀とかぐやをデートさせる為の嘘である。

 嘘も方便。この場合、優しい嘘をついたと言うべきか。

 

「それなら仕方ない。四宮はどうだ?」

 

 白野が断った事により、自然な流れを作る事に成功する白銀。しかし、かぐやが白銀有利な流れを許す筈がない!

 

「そうですね……。私も今日は空いてませんね。明日なら大丈夫なのですが……」

 

 かぐやもまさかのキャンセル! だが、当然ながらこれはわざとである。今日は、と強調し明日なら空いていると伝える事により、明日の予定が無い事をアピール! これにより白銀に自然と明日に誘わせるための口実が生み出される。

 更にそこに、デートの約束をより磐石なものとするための援護射撃を白野は行う!

 

「会長、確か今日も明日も珍しくバイトが休みだよね? 圭ちゃんに『帰ったら、お兄の小言がウザイから避難させて(遊びに行かせて)』っておねだりされたし」

 

「いや待て!? なんだかルビがおかしくなかったか? まぁ、確かに今日明日と予定は無いが……」

 

 白銀、かぐやと白野の連携プレイにより窮地に立たされる!

 

(くそぅ……! このままでは、俺から誘う事になってしまう! それだとまるで、わざわざ明日に予定を立ててまで四宮と喫茶店に行きたいと言っているようなものではないか……!)

 

(ナイスアシストです岸波さん……! これで会長は今日一人では行かず、明日に誰かと行くという選択肢を選ばざるを得ません。ドケチな会長の事ですから、せっかくの二杯分の割引券を無駄に使うなんて真似はしないでしょう。さあ会長、さっさと私を誘いなさい……!!)

 

 圧倒的に優位に立つかぐや! 追い詰められた白銀!

 果たして、勝利はどちらの手に掴まれるのか……!?

 

「……あー!?」

 

 生徒会室が緊張に包まれる中、場違いなまでのすっとんきょうな叫びを上げたのは藤原書記!

 

「この割引券、よく見たらドリンク二杯に関してはカップル限定ってなってますよ!!」

 

「カッ……!」「プル……!?」「だと……!!?」

 

 想定外の事実に、白銀とかぐやはおろか、白野までも驚きに愕然とする。

 

(会長もっとちゃんと見てから言ってよ!? ……あ。近眼だから小さい注意書きまでは見えなかったのか……!)

 

 白銀の痛恨のミスに、策略を立てていた全員の脳内がパニックを巻き起こす!

 カップル限定───そうと分かって割引券を使用するのは、互いにとってもあまりにリスキー!! それを容認してしまえば、明らかに好意を抱いていると公言するに等しいのである。

 

「カ、カップル限定か……。ふむ、ならば俺一人では使えんな。何せ、俺には恋人が居ない。せめて、フリだけでもしてくれる相手さえ居れば、なぁ……?」

 

 だが、白銀はまだ諦めていない!

 是が非でもかぐやから喫茶店へ行きたいと懇願させる。明日が空いていると強調してきた以上、かぐやにも少しは喫茶店に行く意思があると読んだ上で、白銀は最後の一手を仕掛ける。

 

 そう、『嘘から出た真』作戦である!

 恋人のフリをする。つまりはカップルを演じるだけ。本当に付き合うのではない以上、多少は恥ずかしい思いをしようとも、自分を誤魔化せる、演技という名の都合の良い嘘!

 

 曲がりなりにも好意を抱く二人。演技であっても恋人気分は味わえる……あわよくば、そのまま相手に告白させる流れにまで持って行ける! ───かもしれない!

 

 白銀の苦し紛れの一手に、かぐやもまた追い詰められていた!

 

(恋人のフリ……。カップルを装い、会長と喫茶店デート……。でも、私から相手役を申し出るのはできれば避けたい。でもでも、演技とはいえ会長と喫茶店デートできる機会なんて今後もう無いかもしれない……! 断るのはNO! そこは乙女的に絶対NO!!)

 

 密かに焦るかぐや。そして勝負に出た白銀……!

 藤原書記による思わぬ事実発覚から、流れは急速に収束を始める───!

 

「あれ? この喫茶店を経営してる会社って……」

 

「あ。ウチの子会社の一つだ」

 

 またしても、藤原書記により衝撃の新事実が発覚!

 何を隠そう、喫茶店の経営社は、岸波白野の実家であり世界的な財団とされる『ウルク・シュメール・バビロニア・フロンティア』。通称『ウルク財団』の子会社だったのである。

 この十年あまりで、ギネス記録級の超急速成長を遂げ、経済界においては新参でありながら、“世界の頸動脈”と呼ばれるまでの成長へと至った巨大な財団である。

 

 それもそのはず。手を出した業種のジャンルは数知れず。衣食住全てを網羅しているのは当然として、カジノやリゾート経営といった娯楽類。未開の地の開発まで行っている。

 近頃では、とある芸能プロダクションを丸ごと買収し、アイドルのプロデュースにも力を入れているとの事。

 

 と、数多くの事業展開は驚く事に全てが成功し軌道に乗っているのである。その好調っぷりに裏で怪しい取引でもしているのではと疑われ、国際機関による綿密な調査も行われたのだが、結論からして完全なる白。

 これにより、名実共に清廉潔白で世界的企業として全世界から認められたのである。

 

 そんな超級の財団の養女である岸波白野であったが、特にその財力を充てにして生きているワケではなく、基本的には一般家庭と同じような生活を望んでいる。

 まぁ、望んでいるのであって、完全にそうであるとは言い切れず、実際は屋敷で生活させられていた。使用人も付けられ、監視はされていないが、フリーダムであるかと言えば否と言えるだろう。

 

 ちなみに本邸はニューヨーク。白野は日本の別邸で使用人たちと共に暮らしている。

 

 と、話が脱線したが、喫茶店の新事実に、

 

(岸波のとこの子会社かよ! 子会社とはいえ友人の実家が経営してる店でデートとか恥ずかしいにも程がある……!!)

 

(というか、岸波さんのご実家、経営してる子会社多すぎない!? 万越えとか、四宮家より多いんだけど!!)

 

 余談だが、ウルク財団の抱える子会社は国を問わず、業種も問わず各国に数多に存在しているため、とんでもなく太いパイプを有していた。

 

「………、」

 

(やっちゃったーーー!!!)

 

 口にしてからようやく事態の重さに気づいた白野。

 

(何気なしに聞かれたから思わず口に出た……。もうちょいでデートまでこぎ着けそうだったのに……千花、恐ろしい子)

 

 この場合、お家デートを親に目撃されるのに近いレベルで恥ずかしい事になると推測され、目に見えて白銀とかぐやが沈んでいるのが確認できた白野。

 

 気まずい空気の中、白野は逃げるように庶務の作業に没頭する。今この場で呑気にせんべいを齧っているのは藤原書記のみ!

 

 完全に機を逃した白銀とかぐやは、結局完全下校時刻まで互いに喫茶店について切り出せないまま、雑務を淡々とこなしたのだった。

 

 

 

 本日の勝敗結果───白銀、かぐや、白野の負け。(白野も仕事に逃げたため)

 

 

 

 

 




 
~補足~

原作における3年の庶務と会計監査は、今作においては居ないものとして扱っています。
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