白野ちゃんは叶えたい~凡才だけど頭脳労働~   作:フロストエース(仮)

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第6(裏)話 早坂 愛は相談したい

 

 早坂 愛、という名の少女が居る。

 

 秀知院学園2年にして、かぐやと白野のクラスメイトであり、そして幼き頃から四宮家の近侍(ヴァレット)として勤める少女。

 

 代々四宮家に仕える家系に生まれ、彼女の両親は四宮家の現当主である雁庵直属の部下である。

 そして彼女も親と同じように、四宮の長女であるかぐやの専属付き人として業務に従事している。

 

 その付き合いは長く、かぐやとの主従関係は小等部からの10年にも及び、早坂はかぐやが猫を被らずに接する数少ない人物の一人でもある───。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ? 相談、ですか?」

 

 

 

 とある喫茶店にて、早坂の対面では、和風パフェをスプーンで突っつきながら、どこかで見た事があるような気のする色香漂う女性が、怪訝そうな顔をして頭の上に疑問符を浮かべていた。

 

「はい。先日の釣り大会の折りに、かぐや様とうちの生徒会長をデートさせようという話になったのですが、これが中々に難しくて……。そこで、そちらの主人から色恋事ならタマモさんが適任だとお聞きしまして、失礼ながらお呼び立てしました」

 

 (くだん)の女性───というには、もう何度も登場しているので今更感はあるが、改めて紹介すると、彼女の名は玉藻の前。

 岸波白野の従者の一人にして、白野との付き合いは従者たちの中では1、2を争う古参メンバーの一人である。

 それゆえ、白野からの信頼も厚く、色々な面で頼りにされている。また、見た目に反して経験豊富(?)であるため、このように誰かからの相談──主に恋愛事で──を請け負う事も少なくない。

 

「いやまあ、こうして奢っていただいてるワケですし、ご主人様からの推薦でしたら光栄の限りでございますけれど……。して、そのご主人様は何処(いずこ)に? 一緒にいらしたとお聞きしていましたが……」

 

 キョロキョロと店内を見回す玉藻。しかし、どの席にも白野の姿は見当たらない。店員に扮しているのでは、と玉藻は通り過ぎていくウェイターにも目を光らせていたが、やはり居ない。

 

「岸波さんでしたら、もうお帰りになられましたが」

 

「えぇー!? せっかく恋愛相談に乗じてご主人様とイチャラブしようと思ってたのにー」

 

 クネクネと身を捩らせながら不満をこぼす玉藻。

 早坂は思い出す。白野が玉藻を呼び出して、「後は任せた」と逃げるように退散していったのを。

 目の前の玉藻の姿に、なるほど、だから逃げたのかと早坂は一人納得していた。

 

「それで、恋愛相談……とは言っても、早坂さんではなく貴方の仕える主人の、でしたっけ?」

 

「はい。どうにかデートさせるところまで持って行きたいんですが、何か良い案はありますか?」

 

 早坂の問いかけに、玉藻はうーん、と頭を捻らす。考え込む玉藻を見つめながら、早坂は主を思い浮かべて、心の中だけで溜め息を吐く。

 

 何も、早坂とて最初は他力本願ではなく、自身でも策を練っていた。白銀のブロマイドは、かぐやが策を講じて手に入れたとはいえ、名目上では早坂のもの。

 ならば所有権は自身に有ると主張するのは、何もおかしな事ではない。これ以上ないアドバンテージ、好機を手中に収めたとも言えるだろう。

 

 そこで一つ、早坂が考えた、というか実行したのは、“ブロマイドが欲しければ白銀をデートに誘え”というものだった。

 多少……いや、思い切りストレートな物言いではあったが、これくらいはっきり言わないと、かぐやは誤魔化してしまうのは目に見えている。

 

 故に、早坂は強引と理解しつつも、主人に対し諭したのだが、

 

『そ、そんな女性から誘うだなんて、はしたないわ! 私は四宮かぐやよ? きっと会長にとっての私は、清楚で貞淑な美少女として、あの鋭い目には映っているはず。なのに、そのイメージをぶち壊すような真似をできるはずがないじゃない!』

 

 ……早坂は、思い出してぶちギレそうになるのを堪えた。

 

 とまあ、割りと強情なかぐやを簡単に説得できるはずもなく、その後も色々と試してみたものの、結局どれも不発に終わった。

 一人であれこれ悩んでいても、このままでは打開策は見つからない。そう考えた末に、協力者である白野にヘルプを頼み、白野経由で玉藻に連絡を取った───それが今回の経緯である。

 

 ひとしきり考えた後、玉藻は何か閃いたようにみこーん、と狐耳をピンと立たせる。ちなみに、ケモミミとモフモフ尻尾は隠しておらず、どちらもコスプレで通している。何を言われても、何と聞かれようとも、自らのアイデンティティーは曲げないキャス狐さんである。

 

「かぐやちゃん───じゃなくて、かぐやさんに、ブロマイドを餌として会長さんとデートさせる。そこまでは良い考えだと(わたくし)も思います。あとはやり方。そこを煮詰めていくだけでございますね。そこでなんですが、例えばこんなのはいかが?」

 

 玉藻曰く、映画のチケット(日付に指定のあるもの。もしくは期限が決まっているもの。できれば恋愛物が好ましく、期日の近いもの)を二枚用意し、それをかぐやに無理矢理にでも押し付ける。その際かぐやにはそれとなく、白銀を誘うように声を掛けておき、かぐやからデートに誘わせるように誘導する。ブロマイドは映画に上手く誘えたら報酬として渡すといった具合だ。

 人間というのは、期日が迫れば焦って判断力が疎かになりがちになる。これは、そこを上手く突いた作戦と言えるだろう。

 

「……ふむ。なるほど。確かに妙案ですが、そう上手く事が運ぶでしょうか? だってあのかぐや様ですし」

 

「そこはそれ。ご主人様からもよくお聞きしますが、かぐやさんは会長さんと恋愛頭脳戦? とかをしていらっしゃるのでしょう? でしたら、そこはかぐやさんに任せるしか無いかと。その気にさせる手段は多岐にわたりますけど、ここは一つ作戦成功の為にも、かぐやさんを軽く煽ってみては?」

 

「自信はありませんが、せっかく案をいただいたので試してみます」

 

「あ、そうそう。どうせならアドレス交換しときません? ご主人様を介してやり取りするのも私的には合法的にイチャラブできるのでウハウハ、むしろバッチコイですけども、そちら様としては面倒でしょう? 間に人を通してやり取りするより、直接的に連絡を取れるほうが利便性も良いですからねぇ」

 

 こうして早坂は、玉藻とメル友になった!!(♪~ファンファーレ)

 

 

 

 

 

 

 しばらくのガールズトークを楽しんで、四宮邸へと戻った早坂。早速アドバイスを活かすべく、かぐやの私室へと足を運ぶ。

 ノックし、入室の許可を得ると、室内ではかぐやがベッドにうつ伏せに倒れ込んでいた。

 

「早坂、今日の帰りは居なかったみたいだけど、どこかに行ってたの?」

 

「あー、はい。友人と喫茶店に寄ってました。少し相談事もあったので。かぐや様にもその事は今朝に伝えたはずですが?」

 

「そ、そうだったかしら?」

 

 早坂は嘘を言っていない。かぐやがそれを忘れていただけの話である。

 

「あ、そうだ。かぐや様、このあいだの続きですが、映画デートとかどうですか? 恋愛映画なんて、まさしくデートの定番ですよ」

 

「映画……。恋愛映画、会長と二人で……」

 

「そうです。愛を囁くシーンを二人並んで見た時には、ムードも最高潮に達し、その帰り道、どちらからともなく告白してしまう……なんて事もあるかも。それこそ“魔法にかけられて”と言えるでしょうね」 

 

「なにそれステキ。いやでも、映画に誘うなんて難しいことを私ができるの……?」

 

「いつものように、会長の方から誘うように差し向けたらどうです?」

 

 まあ、それができたら苦労はしない。早坂とて、それは飽きる程に理解していた。だからこそ、かぐやの逃げ道を完全に潰してしまうべきなのだ。

 言い逃れや追及が来る前に、早坂はかぐやの反応すら見ずに自室へと戻ると、服を仕事着に着替え、いつも通りの近侍としての仕事も着々と終わらせ、空いた時間を使って早速ネットで映画情報を検索する。

 

「……恋愛映画、恋愛映画。有るには有るけど、いざ選ぶとなったら悩む……」

 

 最寄りの映画館で今期の上映中の恋愛映画は三つほど。

 一つは悲恋の物語で、ざっくり説明すると、物語の途中で死に別れた恋人にもう一度逢いにいくために死者と話ができるという伝承のある秘境の地へと向かい、再会は果たすというもの。

 恋人同士ならともかく、まだ付き合ってすらない二人にそれを見せるのはどうなのか。早坂は脳内審議の末にこの映画は除外した。

 ちなみにタイトルは『今、逢いに行きたいです』。どこかで聞いたような題名だが、気にしてはいけない。

 

 二つ目。こちらは純粋に、とある男女が出逢って恋に落ちていく過程を描いたもの。いわゆる、ラヴでロマンスな王道を行く系だ。特徴を挙げるとするならば、男性は現代にそぐわない戦車──それも猛る牛が引くもの──に普段から乗っている点か。女性は特に変わった点はなく、あえて言うなら中性的な容姿をしている事が挙げられる。

 タイトルは何の捻りもない、主役であう男性のイメージそのままの『戦車男』である。余談だが、登場人物の中には、白野の知己によく似た人物が数名出ているらしい。

 

 そして、三つ目。

 恋愛物ではあるが、先に挙げた二つと違うのはラブコメであるという事。それも、コメディ方面に力を入れているらしく、ブラウニーを思わせる一人の男子高校生と複数のヒロインとのドタバタな日常を描いたもの。

 同じ学年で勝ち気なお嬢様。どことなく陰があるけど可愛い後輩。長年の付き合いのある破天荒な女教師。長身であるのを気にしているお姉さん系美女。シスターなのにドSな少女。どこかズレたところのあるイケメンな大人の女性。

 そしてメインヒロインであると思われる、小柄でありながら凛々しく毅然とした金の髪の乙女。

 彼女らに振り回される主人公の羨ましい苦労話を楽しむ、といった内容である。タイトルは、『Fate/hollow ataraxia ~ブラウニーの女難~』。ちなみにこの作品には前作もあり、そちらは三部作の超大作らしい。

 

 少し遠くの映画館なら、まだ他にも上映しているのだが、白銀家の家計をこそ思えば、それは酷というもの。

 早坂はひとまず候補として、今挙げたものから二つ目と三つ目に絞り込む。

 

「………。イロモノ系ばっかり。個人的には、戦車男が気になるところ……」

 

 せっかくデートさせるのだ。ならば、その勢いを利用しない手はない。どうせなら告白まで持って行きたい早坂は、迷った末にコメディを捨て、ロマンスを取った。

 

 すなわち、予約するチケットは『戦車男』である───!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから三日後の四宮邸にて。

 

「かぐや様。こちらをどうぞ」

 

 と、かぐやが早坂の声に釣られて見れば、その手に握られているのは細長い紙切れが二枚。

 

「え、なに……? チケット?」

 

「はい。映画のチケットです。会長と二人分。座席は指定で、上映の日取りも決まっていますので、それまでに会長との映画の約束までこぎ着けてくださいね」

 

「あ、ちょっと早坂!? いきなり何!?」

 

 半ば強引に押し付けるように、持っていたチケットをかぐやへと渡すと、早坂は追及されるよりも先に退散する。

 これで退路は潰した。あとはかぐやがチキンぶりさえ発揮しなければ、早坂の狙い通り、白銀にかぐや自身を映画へと誘わせる計画を立て始めるだろう。

 

 ……まさか一週間も動きがなかったのには、早坂も予想だにもしなかったが。

 

「あ、そうだ。肝心な事を忘れてた」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでまた相談、でしたっけ?」

 

 今度はとあるファーストフード店にて、やはり早坂の対面には玉藻の姿があった。前回は仕事中の呼び出しのために割烹着のままであった彼女だが、今回は予め会う約束をしていた事もあり、カジュアルな私服での登場だ。

 特に変わった点もないピンクのパーカーにホットパンツと、普通にオシャレで可愛らしい服装なのだが、彼女が着ると何故か色っぽくなるので、店内でも結構な人目を引いていた。特に男性の割合が高めで。

 

「アドバイスの通り、映画デートの作戦という事で決まって、チケットも日付と時間指定のものにしました。なのですが、会長の予定を把握するのを忘れてたんです」

 

「ふむふむ。つまりはマッチングの問題ですねぇ。まあ、心配は要りませんよ。生徒会の皆さんの動向は私どもとしましてもチェックしておりますし、会長さんのバイト先のほとんどは、うちの雇い主の経営の系列ですので。あまり頼りたくはありませんが、あの金ぴかにシフト調整してもらうよう打診しましょうか。それくらいなら手を回すのは簡単かと」

 

 たかだかアルバイト一人のシフトを調整するためだけに、ウルク財団のトップを動かすと玉藻は言う。かぐやも大概だが、それ以上のあまりに大それた話に、早坂は一瞬面食らう。

 

「本当に大丈夫なんですか? 言ってしまえば、こんなかなりしょうもない事で、ウルク財団のトップに動いてもらうなんて。正直恐れ多いんですけど」

 

「まあ、おそらくは大丈夫かと。詳しい話は言えませんが、かぐやさんの恋の行方を、ご主人様並びに私どもにとっても見てみぬふりなど出来ません。うちの金ぴかも、その点に関しては誰よりも理解しているでしょうから。むしろ進んでちょっかい出さないかが心配というか……」

 

「はあ……?」

 

 玉藻の言葉の真意は分からないまでも、ともあれ白野とその関係者たちは、かぐやの恋(本人は恋心を否定しているが)を前向きに応援している事だけは早坂も理解できた。

 

「何はともあれ、絶対の保障はできませんが、会長さんのバイトと映画がブッキングする事はほぼ無いと思ってくださいまし。ただ、家庭の事情などの個人的かつ私的な用事などは、流石にカバーしきれないのでご了承を」

 

「はい。何にせよ助かります。ありがとうございます」

 

「いえいえ。困った時は助け合うのが人の世の常ですので。それにそちら様には、ご主人様の手助けもしていただきましたし、お互い様ですよ」

 

 早坂の礼をにこやかに微笑みながら受け取る玉藻。白野という暴走の起点(スイッチ)さえ無ければ、彼女の持つ高い対人スキルはフルに発揮されるのだ。

 さて、これで一応の相談は終了したのだが、それでお開きというのもどうなのか。そう思った早坂は、このままガールズトークをすれば良いのだと思い至る。

 前回も同じ流れではあったが、それはまだ初対面だった時の話で、当たり障りの無い世間話程度をしただけ。

 今は連絡を取り合う間柄になった事もあり、早坂は一度踏み込んだ話をしようと、会話を試みる。

 

「ところで、釣り大会の時に岸波さんのお知り合いという男性が二名居たんですが、あの方々もタマモさんと同じ使用人なんですか? どちらもけっこうなイケメンでしたが、特に岸波さんは肌の浅黒い男性と仲睦まじくされているように見えましたけど」

 

「あー、はいはい。誰だかすぐに分かりました分かりますとも。あれでございましょう? やたらキザったらしいニヒル気取りの白髪頭。あー、ムカつく。マジでムカつきますことに、ご主人様は誰よりも信頼している風なんですよねぇ。因縁浅からぬのは確かですが、それが私どもの誰よりも強い因果をお持ちというか何というか……」

 

「つまり、岸波さんはあの男性に好意を抱かれていたり?」

 

「……どうでしょうねぇ。あるとしてもちょっと気になる年上のお兄さん程度かと。おそらく、ハッキリとは自覚していらっしゃらないでしょうけどね。それにご主人様はともかく、あのバトラーさんは人の好意に素直に応えようとしない節がありますので。まあ、あの方が歩んできた人生も関係するのかもですが」

 

 煮え切らない答えではあるが、恋心にまでは至っていない、というのが玉藻の見立てであるらしい。

 

「そうですか……。私にはお似合いに見えたんですが」

 

「それはそれで私気に入りませんけど~! それより、早坂さんはどうなんです? 気になる男性は居ます?」

 

「私、ですか。私は……」

 

 逆に質問され、早坂は答えに詰まる。これまで自身の望みを押し殺し、やりたい事、してみたい事もせずに、かぐやに仕えるだけであった自分。

 願望が無い訳ではない。早坂とて年頃の少女。異性と交際してみたいし、何も気にせずに日がな一日遊んでみたいと思う事もある。

 だが、現実は違う。そう簡単にそれを許してもらえるような家に早坂は生まれていない。四宮家に代々仕える家柄。従者の一族であったとしても、早坂家も名門に名を連ねる家系なのだ。

 せめて、成人するまで。自分の面倒は自分で見られるくらいにならなければ、完全なる自由は許されないだろう。

 

「すみません。特に誰といった方は……」

 

「ふむ。見るに、早坂さんも色々と苦労なされている様子。なかなかそういう機会が無いのは仕方ありませんが、運命の相手との出逢いとは何時(いつ)訪れるとも知れません。いずれは、あなたにもきっと素敵な出逢いがあるでしょう。それに関してはご主人様と運命的な出逢いを果たした私が保証しますとも」

 

 経験に勝るものはないと言わんばかりに、白野との出逢いは運命であったと言い放つ玉藻。そこから怒涛の惚気(のろけ)が1時間は続き、帰る頃には甘々な話の聞きすぎで早坂の胃はもたれまくっていた。

 

 

 

 数日が過ぎ、かぐやが白銀の予定を盗み見た事で、映画とのブッキングは起きないと自信満々に主から伝えられた早坂は、無事に約束が果たされた事を知り安堵した。

 あとは、かぐやが白銀に映画の件をどうけしかけるか、その一点に尽きる。

 

 それがいつ実行に移されるのか。そればかりは、かぐやの裁量に任せるしかなく、今か今かと待ちわびる日が続いたが、今日ようやく映画を見に行く事が決まったのだと、かぐやより報告を受ける早坂。

 

「それも、よ? 会長から誘わせる事に成功したの! これはもう、告白されたも同然じゃない!?」

 

「いえいえ、かぐや様。それはまだ早計が過ぎるかと。告白ってつまりは、異性に好きである事、もしくは交際を求める事ですよ? 会長はその辺、ハッキリと口にされていましたか?」

 

 かぐやの着替えを手伝いながら、早坂は舞い上がった気分になっている主を嗜める。基本的には完璧人間のかぐやだが、完全に浮かれ切っている今の状況では、何かミスをやらかす可能性は高い。

 恋愛脳になりつつある彼女は、時折、恋愛頭脳戦においてポンコツ化する事があり、大概はかぐやがポカをやらかすか、白銀が機転を利かせるか、千花の妨害が入るかで作戦が失敗していた。

 割合としては千花の妨害がかなり多いが、それでもかぐやのミスによる失敗も有るには有る。主にここ一番で失敗させないためにも、早坂は早めの軌道修正を試みたのである。

 

 早坂の指摘に、意気揚々としていたかぐやも、

 

「そ、それは……それっぽい事は何も言ってなかったけど……」

 

 自信が少し薄れ、最後のほうは言葉も尻すぼみになっていた。

 

「もしかしたら、会長はかぐや様が映画を見る事で有頂天になって隙だらけのところを狙うために、わざと勝ちを譲ってきたのかもしれません」

 

 かぐやに語ってみせた早坂の推測は、かなり正確に的を射ていると言っても過言ではない。

 白銀が今回折れてまで、自らかぐやを映画に誘ったのは、まさしく映画を利用するためだからだ。

 最初は早坂と白野の起案により始まったデート作戦。かぐやと白銀をデートさせるために一計を弄し、映画デートに方向性が決まり、そしてかぐやが白銀から映画に誘わせるために千花を利用し、巡り巡って今度は白銀が根本の事情を知らないながらも、かぐやの策を乗っとらんとしている。

 

 恋愛頭脳戦。なるほど確かに、無駄に頭を使っていると、早坂は一人納得していた。

 

(……まあ、すごくしょうもないと思うけど)

 

 今思った事は口には出さず、早坂は自分の言葉によりようやく白銀の思惑に気付いたかぐやを眺める。

 四宮の娘として、度を越した英才教育を受けた完璧人間のかぐやも、恋愛事ともなればこうも抜けてしまうのかと、今更ながらに少し呆れた。

 

 ……けれど。

 

(私はそこが、かぐや様の好きなところでもあるんですよ)

 

 やはり、その想いは口に出す事はない。主人と従者、その垣根を越えるような発言は、早坂には許されないのだから。

 だから、この想いは胸に秘める。きっと、この先それを告げる事は無いだろうと諦めて。何か大きな変化でも起きない限りは、従者としてしか接する事は無いのだ。

 

「迂闊だったわ……! 勝ったと思って喜んでいたけど、言われてみれば会長がこうもあっさり落とされる訳がないものね。こんな簡単に落ちてくれるなら、今まで苦労するはずもなかったのだし。早坂! 早速会長との映画デートの対策を考えるわよ!」

 

 声高々に、早坂にも対策会議への強制参加命令が下される。バレない程度に小さくため息を吐きつつも、早坂は主人の言い付けに従うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

(あ、そうだ。岸波さんにも連絡しとかないと。当日は忙しくなりそうだし)

 

 

 

 




 
「BB~チャンネルー! 延長版!」

「というワケで、今回は映画デートにこぎ着けるまでの裏話でした!」

「というか、今更ですけどかぐやさんと白銀さん、原作だともう付き合ってるんですよねー。アニメ二期ではサブタイトルに取り消し線まで入ってしまい、そして原作でついに『告らせたい』というタイトル回収も済んでしまい、FGOのCCCコラボイベントが発表前と後でタイトル変わったくらい大きな変わりようじゃないですか?」

「それでも、二人の今後だったりとか、石上くんと飯野ちゃんの恋の行方とか、まだまだ気になるコトが山盛りなので、面白いんですけどね☆」

「それでは、次回こそ本当にデート回です! なるべく作者さんのお尻を教鞭でペンペン叩いて急かしますので、期待しないで待っていて下さいねー!!」

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