全部さん(中身別人)、ハイスクールD×Dにて公務員してます 作:夢落ち ポカ
ちょっとだけ戦闘っぽいシーンを追加しました、っポイですから捕獲的なものではないです。
月影機関地下5階、そこには機関員たちの訓練場があり、マクバーンはそこで2人の部下の教導を行っていた。
「おらおら、もっと走れノロマども!!
追い付かれたくなかったら死ぬ気で走れ!!」
「ぱっ、パイセン!!?
ソレ死ぬ!!
火避けの護符貫通する激ヤバワンコっす!!??」
フリードが自らの追ってくる炎の異形に全力で逃げていた。
走り込みという初歩的な訓練であるが、一歩間違えれば焼死必死の訓練である。
そしてもう1人、青髪の少女がフリードの2,3歩ほど先を走っていた。
「フリード、口を開く前に足を動かせ!!」
「おシャラップ新人ビッチ!!
パイセンに拾われたからっていい気になんなよ!?
聖剣がなかったら体力だけしか取り柄のない青髪ビッチめ!!」
「私にもゼノヴィアという名前があるのだが・・・」
「―――余裕だなフリードに
追加だ喜べ!!」
ヘルハウンド―――獣を象った劫炎で対象を焼き尽くす原作由来の
当初10匹のヘルハウンドが2人を追走していたが、元気の有り余っている二人にマクバーンが倍プッシュ、更に10匹追加して絶望的な戦力比1対10の地獄のマーチが始まる。
人外との戦いは人の身にとって常に命懸け、マクバーンのような超越者の肉体を持っていない彼らにとって、身体能力の向上は任務中の死亡を避ける為どの機関員も行っている基本中の基本。
普段であれば簡単な追尾術式を避けながら走り込みを行うだけの筈が、今日に限ってマクバーンがいたことで命懸けの訓練へと早変わりしてしまったのである。
教会の訓練機関とはまるで違う命懸けの訓練に、ゼノヴィアは『これをクリアしてのけたあの先輩たちヤバ過ぎる』と休憩スペースでスポドリを飲んでいる先輩機関員たちを見て戦慄していた。
「マジヤバイ死ぬる!!
ここは術者の妨害をすることで激ヤバワンコにご退場してもらって走り込みノルマをクリアするのだ!!」
「この機関ヤバ過ぎるだろう・・・やはり破れかぶれでこの機関に入るの間違えたか!?」
神の不在をコカビエルから知らされ教会へ確認の連絡を取ると真実であったこと、その直後に破門されていたところ、駒王市を出ようとしていたマクバーンに見つかって拾われた彼女は壊れたエクスカリバーを教会へ返上し月影機関へと入った彼女は早速後悔し始めていた。
マクバーンはゼノヴィアの戦闘能力を見極めるためにもこの訓練を課しているが、フリードについては討魔が先日の迂闊な発言の罰も兼ねていた。
フリードの対応は間違いではない、発動中の術を止める為には強引にその術を消してしまうか、術の行使者である術師を戦闘不能、あるいは継続して術を使えないように妨害してしまうかのどれかになる。
懐から手榴弾を手に取ると手際よくピンを引き抜き後方のヘルハウンド、そしてマクバーンに投げつける。
魔道具化させた特性手榴弾である、ヘルハウンドは爆風にあおられ吹き飛んで距離は取れたが消えずに追いかけてくる。
マクバーンはと言えば手榴弾の爆風など意に介さずにいた、不意打ちのつもりだったが、障壁が展開されていて防がれたようである。
「いやん、このワンコ元気すぐる!??
中級悪魔程度ならお手軽に吹っ飛ばせるパワーな筈にゃのに!?」
「諦めろフリード、過度に抵抗して走り込みに使う体力がなくなって焼死するぞ!?」
「くっ、新人ビッチの発言を肯定するのはチョー不本意だけどその通りか!!」
「元気なフリードは倍プッシュな、喜べ10匹追加だ」
「神は死んだゼ!!」
「傷心中の私にそれはきついからやめてほしい・・・!!」
無慈悲にも更なる倍プッシュを宣言され生存確率は更にさがった。
その15分後、何とかノルマをこなせた2人に残ったノルマを指示してその場を去っていく。
生存率100パーセントの代わりに密度のあるノルマを言い渡された2人はがむしゃらにノルマをこなしていったのだった。
***
月影機関の最上階にある一室に、来客者がいた。
時代錯誤な
どうやって座っているかは不明だが、ソファーに十二単という組み合わせは最悪なのに大して女性は型崩れしようと何食わぬ表情で座っているあたり、神様って適当だとマクバーンは内心ぼやいていた。
「―――なるほど、三大勢力で会談とな?
妾は聞いておらぬな・・・のうツッキー、お主は聞いておったか?」
ツッキーと呼ばれた銀縁メガネのスーツを着た青年は女性をねめつけていた。
「姉上・・・そのふざけた名称は止めてください。
月読命という名がありますれば・・・」
「諦めろってツッキー兄者、姉者は言い出したら飽きるまでずっとこの調子なのは知ってるだろ?」
「黙れ愚弟、お前まで私にそのふざけた名称を使うな!!」
月読命と呼ばれた青年の横で茶化すのはオールバックに革ジャン革パンと決め込んだ青年で、茶化した瞬間怒鳴られてもどこ吹く風か飄々としていた。
この3人、否、3柱が日本における三貴神、アマテラス・ツクヨミ・スサノオとは誰も気付かないだろう。
「話を戻すぜ?
連中は近日中に勝手に占拠している駒王市で天使、堕天使を呼び込んで三大勢力の会談を行う予定らしい。
堕天使側で内偵させている機関員からの情報や捕縛したコカビエルからも似たような情報を吐いていたから確度は高い情報だ。
日本神話はもちろんのこと、日本政府もそんな連絡は来ていない。
三大勢力は開催国の了承も得ずにそんな会談を行うんだとよ」
マクバーンのぞんざいな口調に三貴神は特に気にした様子もなく鷹揚に頷いていた。
言葉はこの日本において確かに重要視される大事だが、マクバーンの言葉に神々への敬意がない訳ではないことを知っているからこそ流していての特例措置だ。
「情報に感謝じゃな、よく頑張ったと妾が言っていたと伝えるのじゃぞ討魔よ」
「もちろんです、天照大御神。
月読命もいつも御加護のほど感謝しております。
この加護のお蔭で我らは異形の退治に民草に被害を及ぼさずに済んでおります」
討魔の丁寧な言葉遣いが神への分かりやすい言葉遣いというものだ。
「当然です、夜は私の領分。
夜の一部を区切る程度造作もありません。
・・・あとマクバーン、アメリカでの長期に渡る仕事お疲れさまでしたね」
「兄者がデレているだと!?」
月影機関の背景にはツクヨミがついており、夜を区切る―――結界を操る加護を機関員たちに授けていた。
昼と夜を分ける術式であり、やろうと思えば日中であろうと使えるこの力は異形討伐時において近隣への被害を防ぐ為有用であった。
他にも気が向いたとき限定ではあるが八百万の神々が気に入った機関員に好き勝手に加護を与え神の使徒を生み出している。
機関員全体の数は100を超えてはいるが、それでも日本全国を守るのにはまだ足りていなかった。
「黙れ愚弟、喋るな。
大体、いい年をした神がチャラチャラした格好をしてTPOを知らないのですか!?」
「いいじゃんだって俺って
それに革ジャンとか革パンとかデザイン的にも俺好みだし?
姉上もスーツとか似合いそうだぜ?
兄者は逆に似合い過ぎて笑える」
「日ノ本言葉が乱れている・・・」
「イメチェンしてみようかのう妾」
「自由過ぎるだろうこの神々」
「まぁまぁマクバーン、こういう鷹揚なところが日本の神々の良いところだよ」
神話で語られる三貴神の仲の悪さ程ではないが、一般の姉弟のやり取りと見てもおかしくはないだろう。
実際はそれぞれマイペース過ぎてどれも噛み合っていないという辺り、神話の真実も拡大解釈された結果なのだろうと思うことにしたマクバーンなのであった。
脱線した話は結局近々アマテラスとスサノオがツクヨミとお揃いのスーツ姿で『お出かけ』するという事が決まり、本題に移っていく。
「三大勢力の横暴は日頃の報告書をご覧の通りでございます。
他の神話や国家も似たようなもの、下手に民草が被害に遭い抵抗することで及ぶ被害が甚大過ぎて座しているばかり。
北欧神話は三大勢力と勢力圏も近いこともあり最低限の付き合いはしているようです。
なんでも、レーティングゲームなる悪魔の眷属同士で争わせるコロッセオの低俗版と言いましょうか、数百年に及ぶ拉致事件の裏はこのレーティングゲームが原因であると見て間違いないかと」
今更な解説だが、三貴神の表情は真剣そのもので、普段マイペースな神々が一様に受け止めているのはそれだけこの事態を重く見ているという証左でもあった。
「そこで使われているっていうのが悪魔の駒っていう『他種族だろうと悪魔という種族に変換する』道具だな。
冥界由来の鉱物を使っているらしく、埋蔵量が後どれほどあるかは知らねぇが、それをどうにかしなければ今後も強引な拉致とそこからくる眷属化は止まらないだろうと神オモイカネも憂慮していたぞ」
「ふむ、討魔や。
お主から見て、サーゼクスなる魔王めはどう見えた?」
「愚かな王でございます」
アマテラスからの下問に、討魔は一言で切って捨てた。
ツクヨミは討魔に下問の続きをせよと促す。
「自分たちの行いこそが善であり、その妨げになるものは如何様にも悪と断ずる最低最悪の精神構造をしています。
先日はマクバーンがいたから済んでいますが、あの場に私とフリード君のみで出向いていれば、帰ってこれなかったでしょう。
元々は反乱で成り上がった力だけが取り柄の悪魔、上から目線の物言いにさぞ冥界の古狸たちも煮え湯を飲まされている事でしょうね。
今回の会談でも、現体制に不満のある悪魔が徒党を組んで襲撃する可能性が決して低くない確率で出ているとオモイカネより下知を頂いています」
討魔からの答えに3柱はそれぞれ苦々しい表情をしてどうしたものかと考え込んでいた。
思考の海から最初に上がったのはスサノオだった。
「―――兵を発起するしかねぇんじゃねえか?」
すなわち挙兵、これまで数多の神々が思い浮かべては被害が大き過ぎると廃棄された案を再び立ち上げたスサノオに、アマテラスもそれしかないかと同意する。
「悪魔が現状占拠している土地を全て滅ぼしてから冥界に進行するか、先に冥界に進行するか。
天界にもシステムなる死した聖書の神が操っていたカラクリが残っておる。
我が民に神器という迷惑千万な代物を寄せ付けないよう手を打たねばならぬし、動員数は正に前代未聞の数となろうな」
「愚弟に姉上も、そんな簡単に言って・・・堕天使が確か冥界にもいた筈です。
三大勢力のトップの中でもあの無責任さは正直聞くだけで不愉快な存在。
悪魔の駒や神器を抜き取る研究をしているかもしれませんし、皆殺してやりたいですが活かしたままある程度捕縛しなければですね、用が済んだらブチ殺し確定ですが」
「殺意高過ぎるだろうこの姉弟」
マクバーンにとっても、三大勢力にはこれまで200年かけて何度も煮え湯を飲まされ続けて怒りの沸点は既に通り越している。
泣き喚いたところで死んでしまった者に比べたら自分の怒りなど当たり散らしたところでマクバーンの力は周囲に被害を及ぼしやすいことはこの世界にきてから何度も経験してきていることだ。
だがそれでも、三大勢力への怒りは眩暈がするほどに己の中に燃え続けている。
「それだけ溜め込んでいたんだよ、分かる分かる。
むしろ、マクバーンがどうして三大勢力に殺意をそれほど向けていないのか不思議でしょうがないよ。
きみ、気紛れではあったけど守っていた一族を悪魔に皆殺しにされていたよね?」
「言動に出していないだけだ、あの時の無様さは嫌でも覚えている。
守ってきた一族を皆殺しにされて、悪霊になっちまったあいつらをこの手で焼きつくした己の不甲斐なさに俺は悪魔をはじめとした三大勢力のバケモノどもが人と共存する事の出来ない害獣だと認識させられる事件だったからな」
討魔はそれが分かればよかったのか、胡散臭い笑み浮かべて物騒な話に花を咲かせる三貴神に声を掛けた。
「これより更なる内偵を進め、会談に合わせて月影機関は日本神話の勝利に向けて動かせていただきます」
「よかろう、妾たちも会談に向けてスーツを着こなしてみせるとしようぞ」
「姉上、その話はまた今度にしましょう、
愚弟、天津神・国津神の戦好きを集めそれを中心とした軍団を作れ。
総司令官は貴様だ、私は総参謀長をする」
「分かったぜ兄者、タケとかミカとかを呼ぶとするわ。
ていうか、俺総司令官っていわれても敵本陣に突っ込むけどいいのか?」
「好きにしろ、布都御霊之剣で近くにいる悪魔は全て皆殺しにすればいい、お前がすれば効率的だ。
マクバーン、貴方も冥界突入の際には同行してもらいますよ、力の全てを解放し、悪魔を、堕天使を滅ぼしなさい」
「妾は?」
「姉上は名誉顧問という事で兵たちの活躍を観戦されるとよいかと」
話も一通りの区切りを迎えたところで、マクバーンはふと思い出したことがあった。
「そういえば、この計画の名前はどうする?」
「アマテラスの威光を知らしめる軍―――AISAというのはどうじゃ?」
「ツクヨミ計画はどうでしょう?」
「スサノオと愉快な仲間たちとか最高だろ?」
「この姉弟ども、揃ってネーミングセンスが壊滅的だな」
「仲良しだねぇ」
マクバーンは三貴神のネーミングセンスの無さに月影機関で公募でマシなものを探すかと決めることにしたのだった。
読んでいただき、ありがとうございました。