全部さん(中身別人)、ハイスクールD×Dにて公務員してます   作:夢落ち ポカ

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お待たせしました。

今回も戦闘回です。

オリ主が灼いていきますよ原作キャラを。



カウントダウン 下

 

 ―――宣戦布告。

 

 三大勢力が和平にこぎ着けた先にこの宣告に、サーゼクス、アザゼル、ミカエル、そして側近や会場の護衛をしていたリアス達もこの事態に騒然として、追撃とばかりに現れた魔法陣にアザゼルは舌打ちしてしまう。

 

「はじめまして、現魔王サーゼクス殿・・・そして各勢力のトップの皆様」

 

 魔法陣から胸元を大胆に開けたドレスを着た褐色の女性が現れ、見下した目でサーゼクス達を見る。

 

「これはいったいどういう事だ。

 前魔王の末裔、カテレア・レヴィアタン」

「サーゼクス、我々旧魔王派は禍の団へ参加を決めました」

 

 サーゼクス達はその言葉を聞くと何とも言えない表情をしていた。

 

 旧魔王派―――かつて三大勢力の戦争後期、停戦するか継戦するかで争い、最後まで継戦すべきと現体制―――サーゼクスたちと戦い敗北した派閥だ。

 

 カテレアとサーゼクスが自分たちの主張をはじめ、そのやり取りにやはり人間界の都合を全く考えていないもので、アマテラスが先ほど激高したことをサーゼクスたちはさっぱり頭から抜けたようで、日本神話側は冷めた目でその様子を眺めていた。

 

「・・・会場内に妙な違和感があるな」

「空間が止まっているのぉ・・・忌々しい神器じゃな」

「ボスボス、そこの悪魔ども固まっちまってるんだけど、今のうちに撃ってもいいすか?」

「気持ちは分かるのだけどみんなが見てるからやめようね、ほら、あの頭の悪そうな赤い女悪魔は動いてるよ」

 

 リアスと一部の眷属は動いているため、フリードの不用意な発言に先ほどの宣戦布告と相まって巫女服を着た少女姫島朱乃が殺意の籠った目つきで睨みつけている。

 

 アジア系の容姿をした彼女が悪魔であるのに神に仕える巫女の服を着ている神経をマクバーンは聞いてみたくなり、声を掛けようと口を開こうとしたが、固まっていた眷属も動き始めていた為その機会は失われた。

 

「なんか睨まれている件?」

「・・・お前が物騒なこと言ってるからだろ?」

「そういえば、グレモリー眷属に名前負けしてるけど厄介な魔眼系神器を持ったハーフのヴァンパイアがいましたねぇ・・・マクバーン、手っ取り早く焼いてきてくれるかい」

「・・・まぁ、この場であれば三貴神の護衛はお前らで充分か、行ってくるわ」

「ま、待ちなさい!!

 ギャスパーは私の眷属よ、勝手な真似はさせないわ!!」

 

 リアスは討魔の発言に勝手な行動を制止するように声を上げるが、マクバーンは気にせず会議場を出ていく。

 

「我々はテロ行為の原因を排除する為に動いているのですから、邪魔される謂れはありませんよ女悪魔。

 そもそも、管理も出来ないバケモノ(・・・・)を眷属だなんて気取った言葉で取り繕わなくとも奴隷製造機とでもいえばいいものを、本当に迷惑極まりない」

「・・・パイセンがいなくなったらボスが超絶口が悪くなったしワロスワロス!!」

「ほんに、100年前から変わらぬのう討魔は・・・」

「ぶっちゃけ借りてきた猫にもなるだろ、マクバーンは強いぜ?

 俺も大火傷負わされて10年ほど身動き取れなかったぐらいだからな!!」

「あれは愚弟が悪い、暇潰しで現界してケンカ売るとか恥ずかしいあまり日蝕起こしてしまいましたよ」

「各神話からクレームが来て大変じゃったな・・・それもこれも愚弟がマクバーンにケンカなど売るからじゃ!!」

 

 アマテラスは当時の状況を思い出して高天原に各神話からの神使からの抗議文が押し寄せてきて日蝕を起こしてしまったツクヨミと謝罪文を書いていた。

 

 反省の色の見えない愚弟(スサノオ)の肩を引っ叩くも効いた様子もなくケロリとしていた。

 

「リアス、マクバーンよりも早くギャスパー君を助けましょう!!

 彼らは本気でギャスパー君を殺す気です!!」

「キャスリングを使うわ!!

 グレイフィア、お願い!!」

「お供します、部長!!」

 

 そういうと、リアスと一誠は転移していった。

 

「・・・・・・はぁ、くだらない」

 

 討魔としてはマクバーンがギャスパーを滅ぼそうがリアスが先にギャスパーを救出しようがどうでもよかった。

 

 三貴神が気儘に振舞っている所為もあるが、既にこの地における裁定は下っている(・・・・・・・)

 

 戦争だ、待ちに待っていた戦争である。

 

 この茶番劇(・・・)が終わり次第、討魔は月影機関を総動員して日本全域に点在している三大勢力の拠点を丁寧に几帳面に確認し再確認し草の根をわけて一切の差別無く心を込めて一匹も余さず日本から一掃する。

 

 それからは冥界、天界に向けての総力戦だ。

 

 日本神話、日本政府における最高戦力を総動員して攻め滅ぼす、絶滅させる。

 

 この星にバケモノはいらない。

 

 討魔の張り付いた笑みのその瞳の奥には狂気が渦巻いていた。

 

 

 ***

 

 マクバーンが校舎を探索している中、校舎の外では魔術師たちが白龍皇ヴァーリによって転移直後の攻撃という不意打ちに対処できず殲滅の憂き目に遭っていた。

 

 とはいえ、バトルマニアなヴァーリの表情は冴えない。

 

 それもその筈、不意打ちにも対処できず、プチプチとアリを潰すような感覚にさせられているようで、戦いとも呼べない代物でヴァーリの求める闘争とはまるで違うものだった。

 

 堕天使総督であるアザゼルも援護とばかりに光の槍を雨の如く降らせているものだから精々が中級悪魔程度の実力の魔術師たちで話にならない。

 

 会場にいたライバルに成り得る筈の赤龍帝一誠も素人に毛の生えた程度の実力で、ヴァーリとしても不満で仕方がなかった。

 

 だからだろうか、不満の解消先を近くにいる彼に目を向けてしまったのは。

 

 曰く、日本神話勢力において最強格。

 

 歴代の白龍皇・赤龍帝を何度も殺害してみせたあの火焔魔人に挑戦してしまいたくなるのは、バトルマニアとしての性なのか、はたまた自殺願望の表れなのか。

 

 歴代最強の白龍皇としての自負のあるヴァーリの『覇龍』であればマクバーンにも勝利出来るのではと考えてしまうのは蛮勇と呼ばれるものなのか。

 

『やめておけヴァーリよ、今のお前ではマクバーンの本気に耐えられようがない。

 歴代最強の白龍皇よ、今は雌伏の時だ』

 

 光翼より白龍皇アルビオンがヴァーリを制止する。

 

 アルビオンとしても、ヴァーリという最高の器をマクバーンという最悪の相手に焼き尽くされるのなど願い下げだった。

 

 アルビオンの願いは赤龍帝ドライグとの決着、ただそれだけだ。

 

「だがアルビオン、奴は今1人だ。

 このチャンスをふいにしてしまえば、次の機会なんていつ来ることか・・・それが俺には耐えられそうにない!!」

『ヴァーリ、止めろっ!?』

 

 アルビオンの悲鳴の如き制止も虚しく、ヴァーリは旧校舎に向かっているマクバーンの側面に急襲を掛けた。

 

 触れた相手の力を10秒ごとに半減させ、己の力へと変換させる神器『白龍皇の光翼』の禁手(バランスブレイク)である白銀の鎧は校舎の壁を易々とぶち抜き、マクバーンの後頭部に目掛けて拳を上げる。

 

 完全な奇襲、最高速度を維持したまま突貫したヴァーリの速度に反応できず、マクバーンはヴァーリの拳を受けた―――筈だった。

 

「―――あづぁっ!?」

「―――あぁ?

 ・・・なんだ、白い龍の方か?

 行き成り襲いかかってきて何がしたいんだお前?」

 

 先に声を上げたのはマクバーンの苦悶の声ではなく、ヴァーリの悲鳴だった。

 

 常時展開でもしていたのか不可視の障壁、さらにその劫炎を付与させた性質の悪い障壁を殴ったヴァーリは右腕が肘の辺りまで燃え上がった。

 

 苦悶の声を上げながらヴァーリはマクバーンと距離を取るが、その闘争心の籠もった瞳ははっきりとマクバーンを捉えていた。

 

 その様子を見てマクバーンはヴァーリが自分と襲撃者を間違えたのではと考えたが、すぐにその可能性を投げ捨てた。

 

「―――なるほど、手引きした(・・・・・)のはお前だな、白龍皇?」

 

 都合の良い事に校舎にはマクバーンしかおらず目的地である吸血鬼のいる部屋まではまだ距離がある。

 

 外で魔術師たちを皆殺しにしていたヴァーリが自分を捉え、我慢出来ず襲いかかってしまったと完璧な推察をすると、ヴァーリは兜を外し不敵な笑みを浮かべた。

 

「あぁ、開催場所や時刻、転移陣のマーキングをして連中―――禍の団を誘き寄せたのは俺の役目だったからな。

 三大勢力のトップをこの場で倒し、冥界をレヴィアタンの末裔カテレアたち旧魔王派が真の魔王に返り咲く、それが今回の計画だそうだ。

 俺は頃合いを見て離反して不意討つ筈だったんだがな・・・日本勢力最強のお前に挑みたくなって、少し早いが裏切らせてもらったという訳だ」

 

 話していく内に、ヴァーリの腕の火傷が段々と消えて、否、半減(・・)していく。

 

 怪我に対しても神器の力で回帰した事実にマクバーンとしては『前にも見た光景だ』とどうでもよさげな様子で完全回復したヴァーリを見やっていた。

 

「・・・で、不意打ち喰らわせようとして反撃どころか自動迎撃用の術式に気付きもせず突っ込んだアホが俺に挑むだって?

 テロリスト―――禍の団だったか?

 何を提示されたのか・・・バトルマニアのお前のことだ、どこぞの神話勢力との戦いの舞台を用意するとでも言われて惹かれたのか?」

「何から何までご明察だな、アースガルズ、北欧神話との戦争を用意してくれるそうだ」

 

 アース神族、ヴァルキリーを筆頭に戦士の集う北欧神話勢力との戦いはさぞバトルマニアのヴァーリには魅力的に映ったのだろう。

 

 マクバーンとしては隻眼の老人と戦乙女の2人組を思い出して目の前のヴァーリを見た。

 

 禁手の白銀の鎧を装着していることから、戦いにおいては天性の素質があるのだろう。

 

 ただ、それを活かすには血の気が多すぎて、マクバーンにとって白龍皇はカモ同然(・・・・)だった。

 

「・・・アルビオン、お前俺と戦う気か?

 歴代の白龍皇が俺と戦ってどんな末路を辿ったか、覚えていない訳がねぇよなぁ?」

『―――不本意ではあるがこれも運命という奴なのだろう。

 赤いのとの約束は次代とのものになりそうだが・・・』

「アルビオン、先の一撃は確かに反撃を受けたが、マクバーンは俺の速度に反応しきれていなかった。

 それに障壁とはいえ、俺は奴に触れた!!

 ならばあとは俺のターンだ―――Divide(ディバイド)!!」

 

 神器が一瞬光ると、障壁の厚みが半減(・・)した事に気付いたマクバーンは焔を念じた。

 

 詠唱はいらない、ただ念じるだけで起こす異能をマクバーンはヴァーリに放つ。

 

「くっ、その火焔、尋常じゃない熱量だな、当たらない方がよさそうだ!!」

『ヴァーリ、奴には絶対に触れるな!!

 奴に触れて我が半減を使えば、先の障壁同様、有り余った力を放出するよりも早くお前が燃え尽きてしまうぞ!!』

 

 火焔を半減させず飛び上がって避けるとアルビオンがヴァーリにマクバーンとの戦い方を伝えていた。

 

「―――時間が押しているんだ、邪魔すんじゃねぇっ!!」

 

 ヘルハウンド―――獣を象った劫炎で対象を焼き尽くす原作由来の戦技(クラフト)を放つ。

 

 炎の異形はヴァーリを囲むように襲いかかっていく。

 

 フリードやゼノヴィアに対して行っていた訓練時より更に早く、密度のある炎はヴァーリを追い立てていく。

 

 直接的な半減を封じられたヴァーリは距離を取った事を後悔するが、戦い方が制限されても、出来る事はあった。

 

Divide(ディバイド)!!』

 

 距離を半減させることでの短距離転移とでもいえばよいのか、ヘルハウンドの包囲網から抜け出したヴァーリはマクバーンとの距離を詰めた。

 

 マクバーンも歴代の白龍皇の力を見知っている以上、この程度の特に驚くほどでもなく、淡々と詰将棋の如く追加のヘルハウンドを投入した。

 

 避け続けるヴァーリだが、右腕の違和感を目を向けると驚愕する。

 

「なんだと・・・回帰させた火傷がまたっ!?」

 

 半減させることで右腕のを回帰させることで回復させた火傷がまた現れたのだ。

 

「はっ、ちょっと戻した程度で俺の焔が消える訳ねえだろうが!!

 ―――オラ、喰らいな!!」

 

 マクバーンの足元に赤い魔法陣が展開、即座にヴァーリの頭上に灼熱の球体が出現した。

 

 止めどなく火焔が放射され、トドメとばかりに焔の球体が落下する。

 

 半減を使えない以上、全力で障壁を張って防ぐしかないヴァーリは融解していく障壁に更に障壁を重ねていく。

 

「うおおおおおおおおおおっ!?」

『ヴァーリっ!?

 くっ、反射が使えれば!!』

「負け惜しみが上手くなったなアルビオン!!

 生憎だが反射なんて使えたところでぶち抜くぜ!!」

 

 しかし、障壁が融解するまで時間はかからなかった。

 

 全身に火焔を浴びてしまったヴァーリは墜落していく。

 

 ぐしゃりと、受け身を取ることも侭ならないまま地面に激突したヴァーリに異常を感知したのか、アザゼルがカテレアとの戦闘を切り上げてやってきた。

 

 人工神器による禁手によって鎧姿のアザゼルはヴァーリの惨状を見るなりマクバーンを睨みつけた。

 

 事情を知らなければ、マクバーンがヴァーリを襲ったようにも見えなくはないだろう。

 

「ヴァーリ!?

 マクバーン、テメェヴァーリに何しやがった!?」

「裏切りってたスパイが襲いかかったもんで反撃しただけだ。

 どけアザゼル、白龍皇の今代はここで始末する。

 ついでに二天龍なんて後々面倒な事になりうる神器は人の世には不要だ。

 ここで完全に滅ぼして(・・・・・・・)終わらせてやる」

『なにっ!?

まさか貴様の焔は神滅具ですら・・・!?』

 

 アルビオンの声にマクバーンが嘲笑うかのように焔を掲げた。

 

「ご名答だアルビオン・グウィバー、本気の焔でなくとも、俺の焔は神器を滅ぼすことが可能だ。

所詮は外法で出来上がった兵器、次の転生なんざさせずここで終わらせてやる!!」

「ま、待ってくれ!!

 こいつは俺の息子も同然・・・俺がしっかりと言い聞かせるから、殺すのは・・・!!」

「笑わせる、望んでもいないのに宿っちまった神器をお前たちは刈り取る時、所有者の家族の説得をお前たちはどうした?」

「それは・・・」

 

 言い淀んだアザゼルに、堕天使の方針が重しとなって圧し掛かった。

 

 そう、宿った神器が暴走して周囲に被害が及ぶ前に回収する為、堕天使は神器所有者を殺して奪っていた。

 

 中には幼い子供もいて、現れた堕天使の前に家族が立ちはだかった事もあった。

 

 見逃してほしい、後生だ、異形を前に命をかけて説得する家族に現実が見えていないと切り捨てたのは自分達だ。

 

「―――アザゼル、逃がしません!!

 ・・・そこの人間、邪魔です、どきなさい!!」

 

 追い掛けてきたカテレアがアザゼルに迫るが射線上にマクバーンがいたことで蛇の宿った魔力でマクバーンを急襲した。

 

「燃えろ!!」

 

 だが、マクバーンの焔はカテレアの魔力を完膚なきまでに燃やし尽くしていく。

 

「そんなっ、真のレヴィアタンたる私の力が!!」

「少々混じった程度の力で調子に乗ってんじゃねえぞバケモノ!!

 人界に魔性の居場所なんざ既にねぇ、とっとと自分たちの領域に戻って一生内ゲバしとけや!!」

 

 ヴァーリを頻死に追いやった火焔の球体がカテレアに襲い掛かる。

 

「きゃああああああああああああっ!?」

 

 障壁を張る間もなく火焔が直撃したカテレアは悲鳴と共に火焔の濁流に飲み込まれ、そのまま跡形もなく消えていった。

 

 最上級悪魔を超え魔王に迫る力にまで強化されたカテレアを瞬殺したマクバーンに、ヴァーリを逃がそうと算段を立てようとしたアザゼルの企みは即座に頓挫した。

 

 呻く事しか出来ないヴァーリを抱えるとアザゼルは必死で回復術式を掛けるが、治癒した場所に残っていた火傷が広がっていき堂々巡りにしかなっていない。

 

『まずいぞアザゼル、ヴァーリの状態が・・・!!』

 

 アルビオンの悲鳴がヴァーリの状態が深刻であることを示唆しているが、アザゼルの回復術式を以てしても回復の兆しは見えない。

 

「くそっ、くそっ!!

 どういうことだっ、治しても治しても火傷が広がるだと!?

 おいマクバーン、その焔いったいどういうカラクリだ!?

 そんな力を持った神器、今まで見たことがねぇ!!」

「タネも仕掛けも詠唱もしてねぇぞ?

 神器に頼っている訳でもねぇ。

 俺は―――ただ念じるだけで焔が出せる、それだけだ。

 一切の原因もプロセスも無しに『結果』だけを引き出す能力―――異能とでもいうといい」

 

 三大勢力由来の『神器(セイクリッドギア)』という視点中心でしか物を見られなかったアザゼルに、マクバーンは正直に己の力が一体どういうものなのか伝える。

 

 伝えたところでどうにもならないと、絶望を与えるために。

 

 アザゼルはただ呻いた、なんて理不尽だと。

 

 だが、その恨み言もかつてのどこかにいた三大勢力の被害者たちの怨嗟と同じもので、巡り巡って帰って来たものといっていい。

 

「じゃあとっとと始末するか。

 どきなアザゼル、お前にはまだ(・・)利用価値がある。

 殺すのは最後にしといてやる・・・が、そいつは、白龍皇はダメだ。

 生かしておけば後の人界の禍根となる、この場で絶対に滅ぼす。

 どかないというのなら死刑台の順番は最初に変更だ、義息子か種族、どちらか選びな」

 

 子を持つ親として、種族の長としての究極の選択が迫られた。

 

 既にマクバーンは焔を念じていつでも放てる準備が出来ている。

 

 ここで反撃したところで先のカテレアよりも健闘出来る程度だ、マクバーンの焔を凌げる自信がアザゼルにはなかった。

 

「頼む、この通りだ!!

 神器と悪魔の駒の安全な摘出方法を俺たちは今研究している、その研究の総てを差し出してもいいっ、日本にも今後一切近付かない手を出さない、約束する!!

 だから頼む、ヴァーリを助けて・・・見逃してくれ!!」

「今度は命乞いか・・・どんな気分だアザゼル?

 お前が、部下たちがやって来たことが巡り巡って己の義息子に降りかかってきた心境は?」

 

 虫の息のヴァーリの呼吸音が断続的になっていく、問答をしていくだけでヴァーリの命の灯火は尽きようとしていた。

 

「ああ・・・ああっ!?

 ま、マクバーンっ、何が欲しいっ!?

 望む物は全て差し出すからっ、ヴァーリから神器を抜き出す、人を襲わないよう俺たちの拠点から一生こいつは出さない!!

 人界にも俺たち堕天使は今後一切行かないよう俺が責任を持って監視する、怪しい部下は全部殺してでも止めるっ!!

 だから・・・後生だ、ヴァーリが・・・ヴァーリが死んじまうっ!!

 助けて・・・助けてくれぇ!!」

 

 それは父としての、種族の長としての混じり合った切実な懇願だった。

 

 回復術式を絶やさずに掛け続けながらもアザゼルはマクバーンに慈悲に縋った。

 

 マクバーンはアザゼルの必死の願いに吐き捨てるように口を開いた。

 

「・・・本当に、笑えるよ。

 心の底からの言葉を、もっと早く、こんなことになる前にお前たちから言い出していれば―――」

「―――ア・・・ざ・・・」

 

 ヴァーリの腕がだらりと落ち、アザゼルの腕に抱えられた最愛の義息子(ヴァーリ)の瞳から輝きが消えた。

 

「・・・・・・・・・ああ、ああっ!?

 ヴァーリ、ヴァーリぃっ!!

 返事をしてくれ、返事をしろっ!?

 アルビオン、ヴァーリはっ、ヴァーリはどうなった!?」

 

 アルビオンからの返事もなく、ヴァーリの体がゆっくりと崩れていく。

 

 悲劇的な光景ではあるのだろう、義理とはいえ息子を失った辛さというのは子を持たないマクバーンからしたら想像しても完全に理解することはできない。

 

 だが、『大切な存在を失った』という喪失感という点でなら理解することは可能だ。

 

 それでも尚マクバーンの心が冷め切っているのは、目の前にいるアザゼルという堕天使の総督の身も世も無く泣き伏してしまっている姿を見てしまったからだろう。

 

 今になってこれまでの被害者たちと同じ立場に立たされてようやく思い知ったという事実に言葉もなくただただ呆れていた。

 

 ヴァーリが消えた後には白く輝いている光が残っていて、マクバーンはそれが直感で神器『白龍皇の光翼』であると気付くと、アザゼルの目の前で焔を放った。

 

 悲鳴もなく、灼き尽くされていく光は抵抗を見せるが念押しとばかりに放たれる焔に耐え切れず、その輪郭が崩壊していく。

 

 最初は泣き伏せていたアザゼルも、神器が放つ光が崩壊していくのを見ていただけだったが、ある事を思い出して声を上げた。

 

「マクバーン、止めてくれ!!

 その中には・・・その中にはヴァーリがいる、残留思念だけでも残っているんだ!!」

 

 歴代の二天龍の使い手は死しても残留思念としてその意識を残していることを思い出したアザゼルはマクバーンの凶行を止めるよう懇願した。

 

 だが、その懇願も意味離さず、更に焔が放たれる。

 

「・・・・・・それは生きているとはいわねぇよ、こびり付いたシミ(・・)に価値を見出すとか見所が違うな堕天使総督」

 

 焔を放ったマクバーンに、アザゼルがその焔を防ごうと障壁を張る。

 

 種族の長とあってか、カテレアとの戦闘で消耗して尚も強固な障壁を張るアザゼルに、マクバーンは油断せず2回、3回と焔を増やしていく。

 

 「あああっ、あああああああああああああああああああぁaaaaaaaaahhhhhhhhhhhhhhhh!?」

 

 理不尽の焔を前に、障壁は融解してアザゼルの身に耐え難い痛みが襲う。

 

 この場でアザゼルを殺すことに神の子を見張る者(グリゴリ)との戦争に影響がでるのではと火力を弱めようかと考えた矢先、光が燃え尽きたのか消滅(・・)した。

 

 丁度いいとばかりにマクバーンは焔を止めると、倒れ伏したアザゼルの状態を確認した。

 

「・・・へぇ、本気じゃねぇとはいえこの状態でも生きているとはな。

 アザゼル、理不尽に子供を焼かれた気持ちは実に最悪だろう?

 その気持ちを忘れないことだ、堕天使の命運は尽きかけているが、部下と他の勢力をきちんと押さえこんでおけば種族の命運も守れるかもしれねえぞ?」

 

 そう言い残し、マクバーンは当初の目的であったグレモリー眷属、ギャスパーを捜索しに旧校舎に向かっていく。

 

 意識が落ちるまで、アザゼルの瞳は先程までヴァーリがいた場所を見つめていて、心の中で最愛の義息子の死を悼み涙を零したのだった。

 

 

 




ちょっと悩んだ末にこの結末。

ヴァーリは正直後半まで残そうか…と思ってたけど早死にしてしまった。

バトルマニアは早死にしてしまいました、ヴァーリファンの方、ごめんなさい。

・・・はっ、これがオリ主のイきりという奴かも!?

アザゼルも半殺し?になり堕天使勢力はいきなり窮地に・・・作者もこれにはにっこり。

ワインが進みますなぁ(愉悦)

ではでは、また次回。


三大勢力の滅びる順番は?

  • 天界
  • 冥界
  • 冥界(堕天使)
  • 地上の三大勢力

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