×1939年→○1638年でした。
未来に跳ぶところだった…
『デュロ』出港
◆中央暦1638年10月 デュロ港
停泊し、貨物の積み込みを行う魔導船『デュロ』のひとつ隣の埠頭に停泊中の100門級戦列艦『ムーライト』の甲板には、二人の兵士がいた。若い兵が、自分たちの乗る戦列艦とほとんど同じ大きさの船を指差し、年上の兵に話しかける。
「先輩!あの隣にある船はいったいどこの所属なんでしょうか。」
「ん?ハーゲルト、お前聞いてなかったのか?あれは今度海軍が建造した新造艦で、噂によると艦全体が鉄でできていて、しかも帆を使わずに動くらしい」
「帆を使わずに…?ミリシアルやムーの魔導船のようなものですか?」
ハーゲルトは昔、皇都エストシラントで見たミリシアルの魔導船を思い出していた。
「まあそうなんじゃないか。あと、あの船はパルネウス商会に貸されているとか」
パルネウス商会とは、海運業で有名で最近では国家戦略局とも関係を深め、文明圏外への武器輸出の噂も流れる商会だ。
「最近ロデニウス大陸がきな臭いのは…「おーいレンジ、甲板長がお呼びだぞー。」ちっ、すまん、いってくる。」
同僚に呼ばれた年上の兵は、梯子のように急な階段を降りていった。
◆蒸気式魔導船『デュロ』甲板
甲板では艦長ダースが船員たちに航海の予定を説明している。
「このたび、南方調査へと向かうことが決定したが、この船の乗組員はまだこの船に慣れていない。そこで慣熟訓練も兼ねて文明圏外のロウリア王国まで往復してくることになった。積み荷はロウリア王国への
艦長の説明を聞いた船員が隣の船員に話しかける。
「なあ、文明圏外って行ったことあるか?」
「あるわけないだろ、そもそもパーパルディアからでたことすらねーよ。ロウリア王国ってどんなとこなんだ?」
「ロウリアは人口だけはとにかく多くて、亜人嫌いで有名な国らしい。最近隣国との関係がきな臭いとか。」
フィルアデス大陸の南、ロデニウス大陸に位置するロウリア王国は人口約3,800万人、ロデニウス大陸西半分の領土をもつ(文明圏外としては)大国で、ここ数年隣国クワ・トイネ公国、クイラ王国との関係が悪化していた。
ゴウン…ゴウン…ゴウン…ゴッ…ゴッ…ゴッ
「おっ、動き出したぞ」
ついに『デュロ』の蒸気式魔導機関が軸を通しスクリューを回し始めた。港で働く男たちに見送られ、煙突から黒い廃棄魔素の煙を風に流しながら力強く、『デュロ』はロウリア王国へ航海を始めた。
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