◆中央暦1638年11月 デュロ沖 大東洋上
『デュロ』は海流の乱れる南の海域を避け、フィルアデス大陸の西へ航行を続けていた。
皇国最新鋭の魔導蒸気船の上では、船員たちが甲板のモップがけをおこなっていた。船員の一人が手を動かしながら雑談を始める。
「そういや、
「さあ?知らんな。」
『デュロ』の船倉には大量の木箱や樽が積まれている。その中身は皇国で製造され、ロウリア王国に輸出されるワイバーン用の餌で、成長促進、能力向上のために粉末魔石を大量に含んでいる。
この、劇薬一歩手前の餌には寿命が大幅に縮んでしまう副作用があったが、「ロデニウス大陸の統一には数年持てばよい」とされた。
さらに、パーパルディア国家戦略局は安全のため、統一戦争が終わる頃にはワイバーンは皆、副作用により死ぬという具合に魔石の量を調整した。
下っ端の兵が、そんな国家戦略局の計画を知るはずもない。
◆パーパルディア皇国 エストシラント
国家戦略局の文明圏外担当部では局員が上司に報告を行っていた。
「イノス課長、『デュロ』から定時連絡です。」
課長と呼ばれた上司が報告を読み上げろという。
局員が暗号で送られてきた魔信を読み上げる
「魔導機関に故障なし、航海は極めて順調」
『デュロ』は順調にロデニウス大陸へ航海を続けているようだった。
「課長この計画がうまくいけば我々の大手柄となり大出世も間違いなしですね。」
「ああ、パルソよこの6年の歳月をかけて極秘裏にロウリア王国を支援してきたが、その苦労も報われるというものだ。」
◆大東洋『デュロ』
『デュロ』では防空訓練が行われていた。
この世界では、ワイバーンが航空戦力としてあるので、文明によって程度の差はあれ対空兵器を搭載していることが多い。
デュロには対空兵器として従来の
「対空魔探に感あり、敵騎数4、西より接近」
「対空戦闘よーい」
水兵たちが慌ただしく砲にとりつく。
「右舷、ワイバーン発見、4時の方向」
「まだだ、まだ射程に入らんぞ……いまだっ射撃開始ー撃て撃てー」
魔導砲を扱う水兵たちは点火、次弾装填の手順を繰り返すが轟連式魔導砲を扱う兵は違った。
砲の横についているハンドルをぐるぐると回している。もちろん空砲なので弾は出ず、音が鳴るだけであった。
パパパパパパ……
『轟連式魔導砲』毎分約200発という、いままでの銃とは隔絶した発射速度、陸戦に用いれば革命を起こすであろう兵器であった。
『デュロ』はロウリア王国をめざす。
あ~雪だ雪だ