サルースの杯   作:雪見だいふく☃️

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コンパートメントの外の廊下は人で溢れ、規律の欠片もない雑踏に外へ出る気力がなくなった。

が、出渋る私をハリーとロンが放っておいてはくれなかった。

二人から両腕を引かれてコンパートメントから連れ出されることとなる。

 

狭い廊下を人が押し合い圧し合い進んでいく中に混ざり気分が悪くなった私はロンがドン引きするほど蒼白だったらしい(ゴーストってたぶんこんな感じだぜとはロンの言い様だ)。

 

プラットホームへ降りてからは人の流れにのり、歩いていく。

暗くなった外は寒くてじめじめしている。

 

途中で特徴的な声が聞こえてきた。

 

「イッチ年生はこっちだ!イッチ年生!」

 

声に顔を向ければ、ランプが揺れており

大きな身体で一年生を先導する、ルビウス・ハグリットその人である。

 

 

「イッチ年生はこっちだぞ!ハリー、元気か?」

 

 

手を振って答えるハリーを尻目に、1年生とそれ以上の学年の生徒たちは別の方向へ歩いていくらしい様子に気づいた。

この道案内つきの待遇は今年だけらしい。

歩く方向が違うことから道を覚える必要はなさそうだ。

 

木々に囲まれた狭い小道をぬかるみに足をとられ、小石につまずきと散々な様子で1年生だけに減った集団はハグリットさんの後をついていく。

 

外歩きに慣れない私にとってはこれは地獄の苦行だった。

 

 

「ちょ、サルース?ほんとに大丈夫?」

 

集団から置いていかれかけている私にハリーとロンが合わせてくれていたせいで三人揃って1番後ろを歩くことになっている。

 

「キミほんとに体力ないなぁ。外に出たことないのかい?」

 

 

「……ご想像にお任せするわ」

 

 

ロンが呆れるのも無理はない。

ぬかるみに足をとられて滑ったのも、小石につまずいてこけたのも、私なのだから。

 

 

「……『清めよ(スコージファイ)』これで問題ないわね」

 

「サルース見てると勉強についていけるか心配になるよ…」

 

「パーシーみたいな人って意外といるもんだな…」

 

 

成功するかわからないけれど、とりあえず手を動かすというのは大事だ。

開発だって呪文だってそれは変わらないはず。

何事も、実践。

 

ドラコはご実家で杖を使った予習もしてきたらしくその彼が言うには、「呪文のコツはね、スペルを意識してしっかりと発音することそして正しい杖の振り方この2つだね。母上は過程と結果だとおっしゃったけど僕は父上の説明がしっくりきた」とのことだ。

 

二人から向けられる変なものを見る目を受け流しつつ歩みを続ける。

転けそうになる度に二人が支えてくれるため新品の制服とローブが泥にまみれる事態は以降起こらなかった。

 

木立を抜けると、大きな湖と星空が私たちを迎えた。

そして星を写す湖の向こう側にはホグワーツ城が聳え立っていた。

 

城の窓には明かりが灯り、星空の中に浮かぶように見えた。

 

 

美しい景色に歓声や息をのむ音が辺りから聞こえてきた。

私たち3人も勿論のこと、この美しい光景に魅せられる。

 

 

「…すごい!」

 

「魔法のような景色だよね」

 

 

「えぇ……」

 

 

 

ロンのはしゃぐ様子も、ハリーの言葉もとてもこの景色を言い表すには足りないみたい。

 

 

いつか、これを形にしたい。

言葉にできないほどの感動を作りたいと、そう思った。

 

 

 

 

それから、ハグリットさんに促され私たちは小舟に四人ずつ乗り込み移動を開始した。

 

私たちは1番最後だったこともあり、3人で船に乗り込んだ。

 

 

漕ぎ手もなく滑るように動き出した小舟は湖を渡っていく。

この湖にも魔法生物がたくさん生息しているらしい。

 

水中人や大イカなんてここ以外では魔法界でも秘められた場所にしかいない。

ここも森と同様開拓せねば…と、考えているうちに小舟は城の麓へと着いていた、

 

いざ目の前に迫る石造りの古城は見上げてもその先が見えないほどに大きく、ホグワーツ城からは複雑な呪いの詰め込まれた魔法具と出会ったときのような高揚感が沸き上がった。

 

 

 

 

さて、ハグリットさんの案内はどうやらここまでで終わりらしい。

大きな扉の前で全員が立ち止まり、待機となった。

 

案内役を引き継いだのは濃緑のローブの女教授、ミネルバ・マクゴナガル教授。

ハグリットさんとは違い、厳格さを雰囲気に纏う背筋の通った方だ。

 

鋭い視線を1年生の集団へと向けられ、ざわついていた集団の声が一瞬で途絶えた。

 

……とはいえ、その視線には新しい生徒を想う慈しみの色が見えるのは気のせいではないだろう。

 

 

「新入生の皆さん、ホグワーツへようこそ。これから組分けの儀式が行われます」

 

 

組分けの儀式と聞き、一度は静まったざわめきが再び広がった。

決闘するだとか、試験があるだとか口々に周囲の友人と話す声が聞こえてきた。

 

 

ハリーとロンも何か試験があると思っているのか、予想を話し合いながら不安げな面持ちで周囲の声に意識を向けているようだった。

 

 

さて、と私も思案する。

 

試験、筆記テストのようなものであればありえるかもしれない。

未成年の魔法が認められていないのだから現段階で実技は問われないだろう。

 

だが……ここは世界に誇るホグワーツ魔法学校である。

 

 

もっとずっと魔法的魅力に満ちた手段だといい。

 

 

 

 

……決闘ならそれはそれで、面白そうだとは思うけど。

 

 

 

 

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