パチパチと鳴り響く拍手の中、スリザリン生のいる机へと向かう。
既に私の次の生徒の名前が呼ばれたため、私はゆっくりとドラコの隣に空けられたスペースへと腰を下ろした。
「やぁ、サルース。無事にここで会えて安心したよ。君の顔色ではあのぬかるんだ森の道は抜けてこれないかと思って。船に乗っている様子も見かけられなかったし」
「こんばんは、ドラコ。私でもちゃんとホグワーツに辿り着けるわよ?……まぁ最後尾だったのだけれど」
ほら見たことかと、呆れた顔をするドラコに頬が膨れるのを感じてプイと顔を背けつつ組分けの様子へ視線を戻す。
どうやらあと数名で終わるらしい。
最後の生徒が席へつくと、一際大きな拍手が各机から沸き上がり先輩方や私達の喜びが伝わるようだった。
それからダンブルドア校長の短いお言葉があり、それから夕食となった。
何も乗っていなかった机の上の食器に溢れる程の食べ物が突然に現れる。
同時に良い香りも広間に満ち、胃が刺激されるのを感じた。
……どうやら私もお腹が空いていたらしい。
カボチャジュースやポークリブ、ポップコーンにマッシュポテト……少し私には重たいか。
うーん、と取りあぐねていると私の前に生野菜とフルーツ、サンドイッチが出てきた。
ホグワーツの屋敷しもべ妖精達は優秀らしい。
プティの作る料理以外ではあまり美味しいと思うものはなかったけれど、ホグワーツの食事も悪くないようで安心した。
「サルース、君知り合いはいないのかい?」
周りの先輩方や同級生達と挨拶や会話を交わしていたドラコがふとこちらに目を向けた。
挨拶はいいのか、と言っているらしい。
言葉に周りへ目を向ければ、何人かは私を知っているのか目があった。
……私が知っている人はいないか。
「……あまり家から出ないものだから」
「全く出てないの間違いじゃないのか?……ほら、あっちにいるのが魔法省の癒者管理局の息子で……──」
ドラコの紹介のもと、先輩方や友人となるであろう同級生と挨拶を交わす。
全く両親の家系や職業、家族構成まで教えてくれるだなんて至れり尽くせりだ。
というかドラコの貴族教育が徹底していて、こんなに馴れ馴れしく接していて良いものかと迷うところだ。
子供である彼らスリザリン生の中に私の顧客は四年生辺りからいるらしい。
たまに見覚えのある名前があった。
ゾンコの方のお客様か。
そして家名の方では何人もお客様がいる。
一通りドラコの説明と紹介を聞き終えた辺りで机の上から食べ残しが消え去り綺麗になった。
先輩方が教師席へ視線を向けるのに習い先生方へと目を向ける。
ダンブルドア校長が立ち上がりこれから話を始めるところだった。
空腹が満たされ、あとは寝るだけとなった子供達に集中力は残されていない。
そんな私達に話された内容は、なんてことない生徒達への業務連絡だ。
管理人のフィルチさんから、授業の合間に廊下で魔法を使わないようにという注意。
今学期は二週目にクィディッチの予選があり、寮のチームに参加したい人はマダム・フーチに連絡。
最後に……とても痛い死に方をしたくない人は、今年いっぱい四階の右側の廊下に入ってはいけない。
それらを告げたあと、解散となった。
「スリザリン生の諸君、特に上級生は一年生を中心に寮までしっかりとついてくるようにしたまえ。二年生は新しい後輩を妹と弟のように思え、三年生以上の皆は今年も寮生を家族と思い支え会うように。さぁ、僕達の家はこっちだよ」
どうやら彼がスリザリンの監督生らしい。
上級生によって速やかに一年生を中心とした群れが出来上がる。
外にいくにつれて高学年の生徒が取り囲む形になっているらしい。
……これでは迷子になる方が難しいだろう。
「ごきげんよう、バークさんでしたよね。ホグワーツはたくさんの隠し通路や隠し部屋、それに危険な仕掛けがたくさんあるの。だから安全な道を一年生が覚えるまでは上の学年の子達が付き添うのよ」
キョロキョロと、動き回る肖像画の主達を目で追いかけて集団の中にあって一人でいた私の隣にならんだ先輩が言外に迷子にならないように、と注意を促してくれた。
「ごきげんよう、ありがとうございます先輩」
「当たり前のことをしているだけよ、貴女も私達の妹なのだから」
にっこりと笑って、告げる先輩に私も微笑みを返し前を向く。
『スリザリン』は団結力が素晴らしいらしい。
遅れない程度に周りの景色を見ながら地下へと続く階段を通り、スリザリン寮へと進んだ。
前の生徒に続き寮の中へ足を踏み入れると、落ち着いた緑と銀の装飾にどこか実家を思い起こした。
談話室の奥にある窓は真っ暗だが時折月の光が差し込むのかゆらりと優しい煌めきがそこが水中であることを告げている。
暖炉は温かく燃えており、私達の帰りを待っていたかのように温もりを部屋へと届けていた。
「さぁ、今日はもう遅いそれぞれ部屋へ戻り荷物をほどくように。一年生は男の子は左の階段を、女の子は右だ。自分の名前がかかった部屋へ入るのだよ。それからまた今年も愚かな者が出る前に忠告しておくが、夜間の外出は禁止、門限は守るように。そして男子諸君は女子寮には入れないように呪いがかかっているから、無謀なことはやらないこと……と、他にも注意事項はあるが下の子達が限界らしい。おやすみなさい、良い夢を」
うつらうつらと話を聞くうちに身体が傾いていたらしい。
気づいたら隣の女の子……確かグリーングラスさんだったはずだ……に、支えられていた。
「あら、少しは目が覚めた?」
「えぇ、ごめんなさいもう大丈夫」
「別にこれくらい構わないわ、ほら置いていかれる前に私達も行きましょう」
言葉と共に手を引き階段へとつれて行ってくれ、そのまま部屋まで一緒だった。
お互いに自分のスペースへ分かれると部屋まで運ばれていたトランクを開け、寝間着になり最低限の荷解きの後ベッドへ倒れ込んだ。
「おやすみなさい、バークさん」
「おやすみなさい、グリーングラスさん」
「……ダフネでいいわ」
「サルースと呼んでね」
どうやらはじめて、女の子の友達が出来たみたいだ。