サルースの杯   作:雪見だいふく☃️

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鏡の裏の秘密の通路を見つけた翌日。

日曜日は課題もやらなくてはいけないということで、ダフネたちは寮に残り、私は一人湖の側で大イカを眺めていた。(私の課題は勿論終わっている)

 

 

 

……二人から階段を下りるのは一緒にいるときにしろと言われてしまったのである。

木陰の芝生にハンカチを敷いて座る。

そして昨日借りた本を広げれば完璧だ。

 

 

新作の魔法具案も思い付きそう。

妖精の呪文のうち杖なしの『本物の妖精達の魔法』についてとある小鬼が書いた本を図書館で借りたのだ。

 

それから、勿論魔法道具の本もあったから借りた。

 

 

 

 

そうして読書をしていると、ふと周囲の笑い声に読書中だった意識が浮上した。

 

 

 

 

「……大イカさん…人懐っこいのね」

 

 

水遊びをする上級生や他寮の人達と10本の足を器用に使って遊ぶ様子は、よっぽどそこらのゴーストよりも子供好きな様子だった。

 

 

 

「あれ?サルース?」

 

「あ、ほんとだ」

 

 

 

 

呼ばれた名前に振り向けば、ハリーとロン。

 

 

「ご機嫌よう、二人とも。素敵な休日を過ごしてる?」

 

 

「まぁまぁかな!サルースは?」

 

 

「私もまぁまぁってところかしら」

 

 

 

 

そのまま並ぶように腰を下ろした二人は別段の用事があって湖を通り掛かったわけではないらしい。

 

「サルース、グリンゴッツに泥棒が入ったって話汽車の中でしたよね?覚えてる?」

 

「ちょ、ハリー?(サルースにアレを知らせるのか?)」

 

「(いや、意見を聞くだけだよ)」

 

 

汽車の中ではどうしてその話題になったのだっけ……確かロンが話題を出したのだったか。

それからハリーが何か……言っていたような気がするが忘れてしまった。

 

 

 

「えぇ、覚えているわ。日刊予言者新聞はその話題ばかりだもの」

 

 

 

二人とも新聞を購読して読むとは思わなかったけど最近の日刊予言者新聞はその話題ばかりだったからグリフィンドールで噂になったりしてるのだろう。

 

 

「あれサルースはどう思う?犯人は何が欲しかったんだろう?」

 

 

 

 

「唐突ね……そうね、まず犯人はグリンゴッツに侵入できるなんて本当に優秀な魔法使いだと思うわ。あそこって呪いも呪い避けも魔法具も魔法生物も何でもありの地下迷宮なのよ?その中へ忍び込んで捕まる……いえ生きて出られるなんてよっぽどだと思うわ。だから欲しかったものはお金じゃ手に入らないもの。この世に1つしか無いような、他に代えの利かない何かだと思うわ」

 

 

 

「代えの利かない何か、か。それってさポケットとかに入るものなのかな?だってほら盗んだ後マグルの映画だと大掛かりな怪盗とかはトラックとかヘリに財宝を詰め込んで逃げるけどあそこでそれは無理だと思うし」

 

 

 

マグルの映画……?はわからないけれど(トラックやヘリコプターはわかる)、きっと泥棒が主役の物語。それもただの盗人ではなくて盗むことをエンターテイメントにしている怪盗、ときたか。

 

怪盗ってことはこの『何も盗まれなかった事件』のことをハリーは犯人の魔法社会に対する意思表示の1つだと思っているということ?

 

 

 

「ポケットに入るものってなんだい?宝石とか……?」

 

 

ロンはハリーのマグルに関する例えはお父様の影響でついていけてるのだろうか?……いや、わからないことを放置した可能性のが高いな。

 

 

 

 

「そうね……宝石とか……身分を表す家紋入りの何かとか色々あるわね。でもポケットに入るサイズだからといって小さなものとは限らないのよ?」

 

 

 

コテンと首をかしげて意味がわからないと表現するハリーと、何をいっているんだと言葉に出てしまっているロン。

 

……いや、マグル育ちのハリーはともかくとしてロンはご実家で見たことがあると思うのだけど。

 

 

 

二人のために、傍らに置いてあったドラゴン皮のポーチを引き寄せて膝の上におく。

 

 

 

「ハリー、ロン、このポーチの中には何が入っていると思う?」

 

 

 

「え……女の子の持ち物なんてわかんないけど、ハンカチとお財布とか?」

 

「ママは化粧品とか鏡も入れてたな」

 

 

 

「そうね、それだけ入れてたらこのサイズのポーチでは一杯になってしまうわね。では中身を一部出してみるわね?」

 

 

 

 

二人の前に二人が言ったものを並べていく。

(化粧品、と言っても簡単な保湿薬と日焼け止めなんかしか入っていないポーチだ)。

 

 

 

「で、ここから先はそれに加えての鞄の中身ね?」

 

 

 

手帳、筆記具、ゾンコの袋、本、本、本、お菓子、ソーイングセット、魔法薬の小瓶がいくつか……と、出していく。

 

 

明らかにポーチに入る量ではない物達に二人の口があんぐりと開いている。

 

 

 

「このポーチには検知不可能拡大呪文っていう容量を大きくする魔法がかけてあるの。そうするとこうして、ポーチの間口を通るものならある程度なんでも入れておけるわ」

 

 

「あ!うちのクローゼットそれかも……!」

 

 

 

 

ロンはご家族が多いし確かにそうかもしれない。

 

 

 

 

「すごいね……!これどんなものにもかけられるのかい?ポケットとか普通の袋とか」

 

 

 

「ある程度強度はあった方がいいわよ?壊れたら失われてしまうかもしれないし、全て出てきてしまうかもしれないもの」

 

 

 

 

探知不可能拡大呪文が使えるほどの魔法使いがかけた呪文が壊れるなんてことは滅多にないとは思うけど、姿をくらますキャビネットなんかは調子が悪くなると変なところに引っ掛かるみたいだし、姿くらましもばらけると聞く。

 

空間に影響を及ぼす呪文は、それ故に危険でもある。

 

 

「そ、そうなんだ。珍しいものだと思った方が良いってことかな?」

 

「そうね、ウィーズリー家も純血貴族に家名を連ねる家ですもの。そういった魔法具を所有しているのは基本的には貴族、もしくは優れた魔法使いのどちらかね」

 

 

 

 

 

ちなみにだが、単純にポケット等に拡大呪文をかけた場合物を詰め込んでいく過程で1つ問題が発生する。

 

空間が広がるだけでは、物の管理はできない、ということだ。

 

 

 

ワンルームが二部屋、三部屋と増えたわけではなくてただ単純にワンルームのまま床面積だけが増えている状態になるわけで、そこへ物を詰め込み続けると、取り出す際にとても苦労することになる。

まぁ、呼び寄せ呪文があるので失せ物になるほどではないが……。

 

 

 

私が持っているポーチは勿論、検知不可能拡大呪文や盗難防止呪文だけでなく空間を隔てるための呪文や自動的に収納物を規定の場所へ片付ける呪文なんてものも重ねがけしてある優れものだ。

 

 

 

と、いった込み入った話は二人は求めていないようなので思うに留めておく。

 

 

 

「純血だから貴族だなんてヘンな話だよなー。僕の家にはお宝どころかガリオン金貨の1枚すらないってのに!」

 

 

 

ロンの言葉に苦笑を返しつつ、ロンのお父様が聞いたら泣きそうだと思った。

 

 

 

 

 

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