サルースの杯   作:雪見だいふく☃️

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ポーチの中身を戻したところで、ハリーとロンの背後へと忍び寄る赤毛の姿があることに気づく。

 

 

彼らは確か……ロンのお兄様の…

 

 

「「わっ!」」

 

 

「うわぁ!?フレッド?!」

 

「わぁぁ!ジョージ!!!」

 

 

 

 

そう、フレッドとジョージ・ウィーズリーだ。

 

 

 

「ご機嫌いかがかな?お三方」

 

「スリザリンのお嬢さん……サルースだっけ?君を探していたんだ!」

 

 

 

単刀直入に聞くけど、と二人の声が揃う。

 

 

勢いが激しすぎて、先の質問に話しかけられている私もハリーとロンもなんの反応も返せていないのだが……

 

 

 

「聞くところによると」

 

「かの高名な魔法道具店、ボージンアンドバークスの関係者だとか?」

 

 

「創業者の片割れの孫娘だとか??」

 

 

 

ハリーとロンのそれぞれの背中へのし掛かっていた体勢から一転、交互に話す二人がずんずんと近づいてくる。

 

 

もとからハリー達とも遠くない距離に座っていたのだからその距離はあっという間に詰められ、言葉が終わる頃には、両側から覗き込まれるような体勢に背筋が反る。

 

 

 

 

「え、えぇ。カラカスタス・バークは私の祖父ですわ」

 

 

 

 

入学してから私に向かって、直接それを言ってきたのはこの二人がはじめてだ。

 

ボージンアンドバークスはノクターン横丁にある店、すなわち闇の品を扱っているということだ。

 

 

グリフィンドールの二人が何を言うのか、身体が緊張で固くなるのがわかった。

 

 

 

「「まじかよ!!!!それって最高にクールだぜ!!!」」

 

 

 

満面の笑みでお互いにハイタッチを交わす様子に呆気に取られる。

 

 

 

 

「あの……それだけですの?」

 

 

つい、そんな言葉が出てしまった。

 

息のあった仕草でこちらに顔を向けた双子がまた交互に話し出すのを心の準備が整わないまま聞くことになる。

 

 

「ん?や、聞きたいことはいっぱいある」

 

「だがまぁ、お嬢さんが思ってるようなことではないかな」

 

「そ、サルースお嬢様が心配しているようなことじゃあない」

 

 

 

「ただちょいと、噂の信憑性が上がったもんだから喜んでしまっただけさ!」

 

「そーゆうこと、俺達のホントに聞きたいことはサルースの家系じゃあない」

 

「バーク家なんて純血貴族のご子息はそうそう沢山いる名前じゃないしな」

 

「ウィーズリーと違ってな」

 

 

さっきの質問はただの事実確認だと、言いたいのだろうか。

 

自分達の言葉にケラケラと笑う双子を見ながらそれでは何が知りたいのかと考える。

まさか、闇の品を横流せとでも言うつもりだろうか?

……そうは見えないが。

だがこの二人が悪戯を趣味にしていることはこの1週間の学校生活ですらスリザリンの私のところまで聞こえてきていたから……それもある、のか?

 

もしくはお父上であるアーサー氏に何か手柄を……っていう様子ではないわね。

 

 

「……それなら、私に何をお聞きになりたいのですか?」

 

 

至近距離で騒ぐ二人に、知れず後退りしていた体から膝の上に乗せていたポーチが芝生へと落ちる。

 

ピタリとふざけあいを止めた二人が言う。

 

 

「まどろっこしいのはナシにしようか」

 

「俺達が聞きたいのはシンプルな事さ」

 

 

「「魔法道具の開発者だってのはホントかい?」」

 

 

笑顔の消えた真剣な眼差しの同じ顔が私を射ぬく。

 

 

「……えぇ。私は魔法道具の製作者よ」

 

 

 

闇の品でも悪戯道具でも、私の生み出す作品は自信を持って世に送り出している。

クリエイターであることを隠したりしない。

 

 

「それは重畳」

 

「なんて運命的な出逢いでしょう」

 

 

 

二人が揃ってニヤリと笑う。

 

 

 

「「ちょっとサルース借りるぜ!」」

 

 

 

声をあわせて私の手をそれぞれ取った二人がハリーとロンを振り返り告げた (ハリー達のことはすっかり忘れていた)。

 

 

気づけば自然な動作で立たされていた私の顔はハリーとロンと同じくぽかんと、状況についていけない事を現しているのだろう。

 

 

「……え?!」

 

「ちょ、二人ともサルースとは僕達が話してただろ……っておーい」

 

「行っちゃったね」

 

「あれ……サルース大丈夫かな?」

 

 

 

小さくなっていく二人が何やら話ながらこちらへ手を振っている。

……見送らずに止めてほしかった。

 

 

ブレッドか、ジョージかどちらかは分からないが私を掴むのとは逆の手で私の荷物もすべてまとめて持っているようだから手際が良すぎると思う。

 

 

こんな風に誘拐まがいな連れ去りをやりなれている、なんてことがないことを祈るばかりだ。

 

 

 

 

なんて、他人事のように意識を背けるのはやめて現状を受け止めることにする。

 

 

いや、全くわからないという事しかわからないのだけど。

 

 

 

「あ、あの!私を一体どこへ連れて行くのですか?」

 

「「秘密基地」」

 

 

とても楽しそうに歩く二人に声をかけると、足を止めないまま同時に声がかえってきた。

弾む声は悪戯を仕掛ける前のような期待と興奮が抑えきれない色と秘密を共有する共犯者のような音がする。

 

 

 

そんな二人に連れられてやってきたのは大広間の隅、今週のはじめに入学式の前に集められた小部屋とは別の小部屋だった(1枚の絵画に二人が何かを囁くとそこが開いて部屋が現れた!)。

 

 

五階の鏡みたいに二人が見つけたのだろうか?

……この二人ならあの鏡についても知っていそうだが。

 

 

 

部屋の中には何脚かの机と椅子、それからガラスの戸棚にあれは……

 

 

 

「『人形の家』ですか……?」

 

 

 

「「そうさ!こいつには昔から随分助けられたぜ」」

 

 

 

 

 

マグルの人形遊びで使われる小さな家をご存知だろうか?

一件の屋敷をもした家の壁を開閉式に開くことができ、開いた先にはミニチュアの屋敷が作られている。

と、説明してわかってもらえるかは微妙なところだが……

 

 

これは3年……いや4年前にサルースの紋を刻んで販売した女の子のお子さま向け玩具である。

 

 

 

この時期の作品は、製作者は両親でアイデア出しが私といったものだから正確には私の作品ではないのでここ最近のサルースの紋のものとは趣向が違う……が、イギリス魔法界で爆発的な人気を博した商品ではある。

 

 

……生産者は限られているため中々に高価な玩具となってしまったけれど、年間生産量を決めて予約制で今でも売っているので興味がある人には是非手にとって貰いたいものだ。

 

 

 

 

で、名前の通り幼い私が欲しがった少し特別な人形の家が何故ここにあるのか、という事だ。

 

 

 

 

「これ……対象年齢3才から11才の女児向けですよ…?なぜホグワーツに……」

 

 

 

 

「やっぱり知ってるよなー」

 

「バーク家から出てるから知ってるだろうとは思ったけどな」

 

 

 

 

うんうん、と頷く二人がうちのお客様だということは分かるのだけど。

 

それでもここにある意味がわからない。

 

 

 

 

「この家で作戦会議といこうぜ!」

 

「サルースなら使い方しってるだろ?」

 

「「じゃ!お先に!!」

 

 

 

ヒラヒラと鏡あわせに手を振ったかと思うと二人は小さな家の中へ入っていった。

 

 

 

 

勿論……使い方は心得ている。

 

 

これは魔法使いの人形の家。

 

 

 

小さなお人形に擬似的な家族ごっこをさせるのではなく…………自らがお人形となってこの中で遊ぶためにある。

 

 

 

「はぁ……このまま寮へ戻ってもいいのだけど…それはそれであとが面倒、かしら」

 

 

 

人差し指を玄関扉横の呼び鈴へかける。

 

「Mr.ウィーズリーツインズの家へお呼ばれされましょう」

 

 

 

 

 

くるりと、視界が暗転し目を開くとそこは姿見のあるごく一般的な玄関ホールと私を迎える双子の姿に変わった。

 

 

 

 




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