サルースの杯   作:雪見だいふく☃️

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大冒険のハロウィーンの夜から暫く。

あんなことがあったのに、ホグワーツはまるで変わらず、これまでと変わらない様子で日々を過ごしている。

 

 

もちろん、学校へのというか校長への苦情の手紙は私達の両親から届いたし(勿論他の寮の、生徒からもだ)、マルフォイ氏も議会に話題を出したりしたらしい。

 

そもそも、ハロウィンパーティ中の出来事なので全校生徒がトロールの侵入を知っているし、ホグワーツでの秘密はイコール公然の事実となるらしい。

トロール討伐が生徒によって行われたことも、噂になっている。

 

……子供たちは親への手紙にそれを他意なく記したとしても、それを聞かされた大人の意見は……ということだ。

 

 

 

まぁ私達の見えるところで何かがあったわけではないので、ホグワーツがどんな対策をとったのかなんて知るよしもないのだが。

 

 

 

さて、喉元過ぎればというには早すぎる生徒達からのトロール事件への関心の薄さには理由がある。

 

 

クィディッチシーズンが到来したからだ。

 

 

開幕後の第一試合は、グリフィンドール対スリザリン。

しかも今年はグリフィンドールに秘密兵器がいるとなれば、その興奮も倍増している。

 

 

秘密兵器、というかハリーだけれど。

 

 

 

いつぞやの箒の授業でマクゴナガル教授に連れ去られたハリーが、最年少シーカーとしてチーム入りしたことはすぐに公然の秘密となった。

 

グリフィンドールは練習の様子を他寮に非公開として、その実力を隠していたようだが……スリザリン寮のクィディッチキャプテンである、フリント先輩達の様子を見るに意味をなしてはいなさそうだった。

 

 

 

「いいかお前達!!!今年もスリザリンが寮杯をいただくためにはまずこの試合だ!!!勝つぞ!グリフィンドールのクズ共に目にもの見せてやれ!!!」

 

「「おう!!!!」」

 

 

 

 

朝からずっとこんな調子で談話室を賑やかしている。

 

 

 

「……私も行かなくてはダメなのかしら」

 

「サルース!クィディッチよ?楽しみじゃないの?」

 

「あー…パンジー、私もサルースに賛成。暑苦しいし外寒そう」

 

 

スリザリンカラーのバンダナを首に巻いたパンジーは私とダフネにも同じように緑のアクセサリーをつけながら楽しそうにしている。

 

残念ながら、私とダフネは少数派なのだ。

 

『クィディッチは魔法族の魂に刻まれた本能だ』なんて本がベストセラーになるくらい熱狂的かつ伝統的なスポーツとなっている。

 

 

 

スリザリンにいる数少ないマグル生まれの子達も、周囲からクィディッチのルールを聞き、面白そうにしている。

 

 

 

1チーム7人からなるチームと、三つのゴール。

 

 

クアッフル、ブラッジャー、スニッチからなる三種類のボールを取り合う競技だ。

 

 

 

 

クアッフルを、ゴールに入れたら10点。

ブラッジャーは相手を妨害するためのボール。

スニッチはシーカーが捕まえるボール。

これを捕まえると試合終了で、同時に150点を獲得する。

 

 

 

確かに、クィディッチの歴史は古く魔法族が箒で空を飛ぶようになった頃から存在している伝統的なスポーツだ。

 

 

 

 

マグルのスポーツと比較するのも、歴史的にその成り立ちを考察するのも楽しいとは思う。

 

とはいえ……この寒い中外で風に晒されながら観戦するのはちっとも魅力的ではない。

 

 

それに加えて、だ。

このスポーツが合理的でない(魔法族の文化は全体的に合理性に欠けるがさらに)と思える理由がある。

 

このクィディッチ、スニッチを捕まえるまで試合が終わらないのだ。

 

雨でも、風でも、雪でも、雷が降ったってそのルールは変わらない。

 

 

マグルに比べて魔法族の方が寿命が長いとはいえ、限られた時間で試合を行う『ベースボール』や『ラグビー』とやらの方がよっぽど見る人に優しいと思う。

 

どちらも見たことはないが。

 

 

 

 

 

 

「さ、できたわよ!!!」

 

「わーお。力作ね」

 

 

ぼんやりと賑やかな談話室を眺めている間に、パンジーのヘアーアレンジが終わった。

 

どうぞ、と笑顔で渡された鏡には顔の両サイドの髪から緑と銀のリボンを編み込まれ、ぐるりと頭の後ろまでを囲った私の顔が映っていた。

 

 

 

確かに力作だ。

 

「本当にパンジーは指先が器用ですのね、ありがとうございます!」

 

 

「ふふん、誉めたって何も出ないわよ?」

 

「ヘアアレンジの本買ってるくせに」

 

「ちょっとダフネ!あれは自分のためよ!」

 

 

 

毎朝の恒例となった私の髪を結う時間。

 

最近の仕上がりが早くて綺麗になったと思ったらそういうことだったのね。

今度パンジーの黒髪に似合いそうな髪飾りを作ってプレゼントしよう。

 

 

 

「ありがとうございます、折角のセットですから……私も観戦に行きますわ。とりあえず自慢してきますね」

 

私と替わってダフネをソファに座らせ、パンジーにダフネの髪もやってしまえとアイコンタクトをしたら、にっこりと笑ってくれたので伝わったことだろう。

 

 

 

「いってらっしゃーい!ダフネは任せて!」

 

「ちょっ……サルース!……パンジー私は程々でいいわよ。需要ないし」

 

「そんなことないけどまぁ……程々にやってあげる」

 

 

 

 

******

 

 

 

 

しっかりと防寒をして、二人と一緒にクィディッチ競技場に向かう。

 

 

 

スリザリン生以外はみんなグリフィンドールを、応援しているらしい。

 

相変わらずのアウェイである。

 

 

 

ところで、話題の人ことハリーは無事なのだろうか?

 

こんなにたくさんの人に見られながらの花形ポジションで初プレイだなんて、物凄く緊張するだろうに。

 

 

 

 

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