パンジー達のもとへ戻りつつ先生方のお席を確認する。
「……あら、私のほかにも何方か気づかれたのかしら」
額を押さえて蹲るクィレル教授と、黒い煙の消火を行っているスネイプ教授とその周囲の先生方が見えた。
ハリーの様子を確認してみれば、どうやらスニッチを見つけたらしい。
……けして短くない時間をハリーが足止めされていたにも拘らず、スニッチを取られるならこの試合は完全にスリザリンの敗けね。
「戻りましたわ」
「おかえり!!!!よかった!またどっかで怪物と闘ってるのかと思ったわよ!」
「流石にサルースでももう無いわよ。まぁ、貴女が危ない目に遭わなくてよかったわ」
「はい!お二人ともご心配をおかけしました!」
二人からのハグを受け、クィディッチピッチへと視線を戻せば、どうやらちょうど試合が終わったところらしい。
金のスニッチをかかげるハリーが、チームメイトに、囲まれているところだった。
*****
「あら、サルース?変わった本を読んでるのね」
「ハーマイオニー、ご機嫌よう。妖精の記したとされる本らしいの。拡大鏡を使いながら読まないといけないなんて不思議な本ですわね」
親指の第一関節ほどのサイズの本には、妖精の秘術が記されている。
『エンゴージオ肥大せよ』では中身が読めなくなるなんて本当に変な本だ。
クィディッチの試合からしばらく、クリスマスも目前に迫り薬草学のハウスまでの移動が辛いこの頃。
図書館に来るときはパンジーたちはほとんどの場合、最近着いてこなくなった。
……休みの時間まで勉強はしたくないとのことだ。
課題をこなしにたまに一緒に来ることもあるけど、大体は他のスリザリン生と遊んでることだろう。
「ハーマイオニーは調べものですか?」
「えぇ、なかなか文献がみつからなくてしらみ潰しに読んでるとこよ」
どっさりと音を立てて積まれた本と共にハーマイオニーが向かいの席に腰掛ける。
魔法史関連の本ばかりだ。
ビンズ教授のご担当される魔法史は、睡眠時間にあてている子達が多いのにハーマイオニーは本当に真面目だ。
ちなみに私は、魔法史は主な魔法族が多く暮らす国については学び終えてしまっている。
だから、ビンズ教授の当事者としての話を楽しみにしつつ(驚くべき事に彼はゴーストだ!)、手元は次の魔法具の設計図を書いたり、雑誌への投稿用原稿を作ったりと内職にあてている。
ハロウィーンの夜以来、ハーマイオニーとは図書館で顔を合わせる度にお互いに無言で本を読む時間を過ごしている。
勿論、お互いに連れがいるときにはその限りではないけれども。
……あの日、ハーマイオニーは仲直りをしたロンとハリーと友達になったらしい。
あの状況になったのはある意味ロンのせいだと言ってもいいのにハーマイオニーは優しいし心がニフラーのお腹くらい広い。
私はお節介の結果であるし、ロンは関係ないので変わらず奇妙な距離感の友人をしている。
ふと、ハーマイオニーが本から顔をあげた気配を感じて視線をあげるとやはり、何か話したいことがあるらしい。
「……?」
「……ねぇサルース。ニコラスフラメルについての蔵書ってどこにあるか分かる?」
ふむ、やはりハーマイオニーは勉強熱心だ。
かの錬金術師については魔法史でもまだずいぶん先まで扱わないはずなのに。
そんなに難しい顔をせずとも、彼の蔵書ならそれこそ腐るほどここにはあるだろう。
「フラメル氏のことなら……何について調べたいかにもよりますが、資料としてはフランス魔法界についてまとめたものの辺りか、錬金術関連の本のところにあるかと。あとはオペラの棚とかですわね」
フランスで一番有名と言っても過言ではないくらいの方ですからね。
ダンブルドア校長の蛙チョコに名前がでるほどの御方だからイギリスでもとても有名だ。
なにせ、不死の人なのだから。
彼の作った『賢者の石』は命の水と黄金を作り出すだなんて本当に……錬金術は奥が深い学問だ。
永遠の命と黄金を作り出すための媒体はいったい何なのか、一度しっかりと学んでみたい。
「フランス……錬金術!!!!『賢者の石』だわ!!!!どうりで『近代魔法史』や『今世紀の著名な魔法使い』に名前がないはずよ!!!!!ありがとう!サルース!!」
「えっ!あ、はい!」
「それじゃあ私!そろそろ行かなくちゃ!!!またね!!!」
バタバタと積み上げられた本を抱えて退席したハーマイオニーを唖然と見送る。
入口の方でマダムピンスに注意を受けている声が聞こえ、図書館はもとの静寂にもどった。
「……なんだったのでしょう?」
最近、ハリーやロンが図書館に来ていたのと関係がありそうだ。
先日、ハリーと口論になってしまったことがあった。
******
「スネイプが箒に呪文をかけてたんだ!アイツは僕を憎んでる!!!!絶対に怪しい!」
「クィディッチのときの事なら私だって見ておりましたわ!スネイプ教授はスリザリンの不利になるような事は致しません!外部からの妨害なんてどう足掻いてもルール違反ですもの!!!彼がそれをやるなら試合前に呪われていますわ!!!」
魔法薬学のあとのこと。
あの三人と図書館への道すがらクィディッチの試合の話から、ハリーの箒に呪いをかけていたのは誰かという話題になった。
あの時の黒い煙はハーマイオニーが、スネイプ教授のローブに火をつけたから起こったらしい。
随分と過激だがそれは別にいい。
……ただ、スネイプ教授がハリーを殺そうとしているという言葉はダメだ。
「でもハーマイオニーが火をつけたとたんに箒が大人しくなったんだ!!!アイツしかいないじゃないか!!!!」
「あの時!!!!私も先生方を疑いましたわ!スネイプ教授の他にも同じ条件に当てはまる方がいらっしゃいました。ですからそちらにも妨害があったから呪文がやんだのですわ!!!」
「あのフクロウはサルースだったのね」
「なんの事でしょうか?存じ上げませんわ!」
ハーマイオニーの呆れた目が解せない。
火をつける方がびっくりだ。
それに私がやった証拠がありませんでしょう?
「だけどアイツはハロウィンの日だってトロールの騒ぎを起こして、自分は三頭犬の部屋にいってたんだ!!!!」
「「ハリー!!!」」
「あ!……何でもない。兎に角、アイツが怪しいのは間違いないんだ。じゃあねサルース!」
「待ってよ!ハリー!」
足音も荒く歩き去ったハリーと追いかけたロンを見送り、ハーマイオニーがこちらを振りかえる。
「ごめんなさいね、サルース。ところで貴女が見つけたもう一人って誰だったの?」
「いえ、命を狙われたんですもの。怒るのも仕方ないわ。……クィレル教授です。彼がハリーに呪文を唱えていたことは間違いありません。……正直なところ、どちらの先生が呪いを唱え、どちらの先生が反対呪文を唱えていたのかわかりません。……けれどスネイプ教授が、わざわざスリザリンの試合で、それを行うはずありませんわ」
スネイプ教授がフリント先輩方の熱意を知っていて、そんなことをするなんて思えない。
「クィレル教授……そう。覚えておくわ」
******
以来、ハリーとロンとはあまり話していない。
というより避けられているようだ。
喧嘩したことなんてはじめてで、どうしたらいいのか分からないことが最近の悩みになった。
原作よりも答えを知ることが早くなってしまった、ハリー。
クリスマス休暇に透明マントで禁書の棚へいくイベントが抹消されてしまった。