サルースの杯   作:雪見だいふく☃️

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ホグワーツにはゴーストが住み着いている。

 

 

それはもう、たくさんのゴーストが出入りしている。

一説によると、世界で1番たくさんのゴーストが住み着いているのがホグワーツなのだとか。

 

そして、その環境に生徒もはじめは驚くものの(入学式前の悲鳴は毎年の恒例行事らしいが)すぐに慣れてしまい、ゴーストと暮らすことが普通になっている。

 

各寮に1人代表するゴーストがついている程、生活のなかに馴染んでいるのだ。

 

 

スリザリンには『血みどろ男爵』が。

 

グリフィンドールには『ほとんど首なしニック』が。

 

レイヴンクローには『灰色のレディ』が。

 

ハッフルパフには『太った修道士』が。

 

 

 

それぞれには、其々の生前と死した後の逸話がある。

それは彼らの口から語られるためその全てが真実かはわからないけれど。

 

とにかく彼らは生徒たちに親切である。

道に迷えば親切に教えてくれるし、時には悩みを聞き、相談にのってくれることもある。

 

何より彼らはホグワーツを愛しており、その要素足る私達生徒のことも可愛がってくれているようなのだ。

 

 

 

そう。

彼らはゴーストだ。

生者の痕跡、霊魂である。

 

 

 

「なぁなぁなぁなぁ?おちびちゃん?面白いもんもってるだろー?このバケツ引っくり返されたくなかったらぜーんぶ置いてってよ」

 

「……血みどろ男爵に言いつけますわ」

 

「まった!ぜんぶじゃなくてちょっと分けてくれるだけでいいよ」

 

 

 

 

はぁ、と大きなため息が私の口からもれた。

 

 

それも、これも、私の頭上で逆さまに浮かびながら泥水入りのバケツを揺らす『ピーブス』のせいである。

 

彼、というのかコレ、というのか。

人の形をしているのだから彼と呼ぶが……ピーブスはゴーストのように、白い肌と壁や天井、床を関係なく通り抜ける事が出来る半透明のピエロのような姿の男の形をした『ポルターガイスト』だ。

 

ゴーストと似ているが、発生条件も何もかもが違う。

ポルターガイストは現象だ。

 

 

だから、頭上のバケツも持っているように見えるだけであれはピーブスによって浮かべられているということになる。

 

 

そんなことはどうでもいいか。

いや、ホグワーツにポルターガイストは彼1人しか存在しないから興味はあるのだけど。

 

 

とにかく、コレをどうにかしなくてはいけない事に変わりはない。

 

 

 

ことの発端は、ついさっき。

たまたま1人で歩いていた先に、泥団子を壁の絵に向かって投げているピーブスと出会ってしまったことから始まる。

 

彼は血みどろ男爵を恐れているらしく(先輩方から聞いた)、スリザリン寮の近くにはあまり来ないし、スリザリン生には滅多に絡まない。

 

 

が、それも絶対ではない。

 

どうやらとても機嫌がいいらしい様子のピーブスは鼻歌混じりの泥団子投げを切り上げ私のもとへ飛んできたのだった。

 

 

どうやらハロウィンの頃から校内で時折見られるようになった私や、ウィーズリー製のイタズラグッズに興味があるらしい。

 

ウィーズリーツインズといえば、クリスマスプレゼントにそれぞれ魔法道具製作用の工具セットを贈ったところ、休み明けからそれぞれに師匠と呼ばれるようになった。

 

廊下で見かけるたびに「「師匠!!!!お疲れ様です!!!」」と大きな声で叫ばれるのは、ただの嫌がらせだと思っている。

 

 

 

「ちょっとわけて、ですか……これもタダじゃないんですのよ?ピーブスは私に、代わりに何をくださるんですの?」

 

「フィルチの猫を遠ざけてやろうか?」

 

「ミセス・ノリスはお友達ですから結構ですわ」

 

腕を組み、顎を擦りながら考えるポーズのピーブスがくるり、くるりと回りながら目の前を漂っている。

 

……そのせいで廊下に泥が跳ねているが、私にはかかっていないので気にしない。

 

 

 

 

「それじゃあ嫌いなやつらに泥をかけてきてやる」

 

「嫌いな方などいませんから、それもいりませんわね」

 

 

 

そろそろ次の授業に間に合わなくなってしまう。

 

逆さまになった状態で、うなり声をあげながら考え続けるピーブスを引き連れ、次の授業の教室へと歩いていく。

 

 

「うーむ…そうだ!!!屋敷しもべたちの厨房につれてってやる!肉も酒もお菓子もなんでもでてくるぞ?」

 

 

「あら……それはいいですわね」

 

 

 

屋敷しもべがこの城にもたくさんいるのは分かっていたが、彼らの姿を見たことはない。

お洗濯もお掃除も全てがいつのまにか終わっているのだから、彼らの存在はまるで魔法のようだ。

 

 

「お!じゃあ今すぐ連れてってやるよ!!!」

 

「授業がありますから。その後にお願いしますわ。その間お暇でしょうから前払いとしてこちら、差し上げますわね」

 

「ヒュー!分かってるねぇ!」

 

 

 

ポーチから、直径3センチ程の大きな赤色のクレヨンを取り出しピーブスへとわたす。

 

 

「そちらは描いたものが勝手に動き出す、魔法のクレヨンですわ。何にでも描けますわ、壁も布も水や、空気にも。しばらくすると勝手に消えますが……」

 

「へぇ。じゃあこれはお前にやる」

 

 

一緒に浮いてついてきていたバケツが目の前に置かれた。

うん、いらない。

 

 

 

呑気な挨拶と共に飛び去ったピーブスを見送り、呪文学の教室へと向かう。

(バケツは壁際に寄せて置いておくことにした。)

 

 

 

 

 

*******

 

 

 

 

 

「うわぁ……サルース。コレあんたでしょ」

 

「私は授業がありましたもの。ピーブスが勝手にやったのですわ」

 

 

 

「それ……通じるといいわね」

 

 

パンジーとダフネの呆れ顔が廊下と私の顔を見比べている。

 

……真っ赤なクレヨンで描かれた落書きたちが教室を出た私達の前を闊歩していたからだ。

 

どれもこれも見事に大きく描かれており、股下2メートルはあるキリンのような不思議な絵の下を戦々恐々潜り抜ける生徒や、虫のようなタコのようなよくわからない生き物の絵を大きく迂回して廊下を通る生徒など。

 

この授業の間に、ピーブスがとにかく派手に落書きしまくったらしい。

 

 

これは……持ち込み禁止リストに載ってしまうパターンだわ。

 

いまのところ、ハロウィンの日にフレッドとジョージが女装を披露したあれ以外は禁止になっていなかったのだけど……

 

 

 

 

 




ピーブスとの遭遇回。

廊下の様子は、lbのとある場面を思い浮かべていただければ。
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