サルースの杯   作:雪見だいふく☃️

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さて、大惨事と化しているホグワーツ城内でピーブスを探す。

 

絵画の住人たちが困っているような落書きは、消してまわり、壁に描かれた悪口も消しておく。

 

 

とりあえず名指しの悪口は見つけたものから全て消しておかなくては……

 

 

フィルチさんには、2時間もたてば全て消えるので消して回らなくても大丈夫という、旨のメモを飛ばしておくのも忘れない。

 

 

 

 

 

道行くゴーストや絵画たちにピーブスの居場所を聞きながら歩いていくと、天秤を掲げた魔女の像の前で捕まえることができた。

 

とてもご機嫌らしい。

 

 

「おやぁ?授業は終わったのかい?」

 

「終わりましたわ、こんなにたくさん描いたらもうクレヨンも残り少ないのではないかしら?」

 

 

「そうなんだよ!次のをくれ!!!」

 

 

ほら、と見せられたクレヨンは親指の爪程のサイズになっている。

 

 

 

「貴方がこんなに派手にやってくださったものですから、もう所持していられないですわ。今ある残りの9本全て差し上げますから、屋敷しもべたちの厨房以外にも何か私に教えてくださらない?」

 

 

 

持ち込み禁止のものは没収されるのだから(前回で学んだ)。

 

 

 

「う~ん、じゃあお前が寮を抜け出すときは見回りに見つからないように騒いでやるってのは?」

 

「いいですわね、それでいきましょう」

 

 

 

 

そろそろ『禁じられた森』に行ってみたいと思っていたのだ。

まだ体力的に難しそうだが、その体力をつけるためにも夜の時間は貴重だ。

 

消灯時間後に見回りの先生方に見つかる危険少なく動けるなんて、とても便利だろう。

 

 

 

とはいえ、気分屋なピーブスをどこまで信頼するかは別問題だけど。

 

 

 

 

ご機嫌で飛び去ったピーブスを見送り、次の目的地へ。

 

残りのクレヨンを渡す前にピーブスに厨房への行き方を教えてもらった。

 

大広間を通りすぎ、地下へとおりる。

 

今は夕食までもしばらくあるため人通りはまばらだが、念には念を。

 

認識阻害のネックレスを取り出し首へとかける。

 

 

透明マントのように姿を消してくれるわけではないが、人々の意識に止まりづらくはなる。

 

 

いつぞやのダイアゴン横丁で活躍したこの子は、デザインが気に入っているのもありいつも持ち歩いているのだ。

 

 

入口は地下一階の廊下に掛かったフルーツ鉢の絵だそうだ。

 

 

「さて、梨のお腹をくすぐる?だったわね」

 

 

わかりやすく大きな、緑の梨の描かれた絵の前に立ち、梨へと指を伸ばす。

 

 

ポルターガイストたるピーブスは、壁やら床やらを通り抜けるから扉は必要ない。

が、歴代のイタズラで名を馳せた生徒たちから聞いて正しい入り方も知ってはいたと言うことだ。

 

 

猫の顎をかくように、優しくくすぐると梨は笑い声をあげて身をくねらせる。

……梨の絵?なのよね??

 

いくら魔法界といえど笑い声をあげる梨なんて……いや、泣きわめく大根のようなものがいるんだもの、実在するのかもしれないわ。

 

 

そっと指を遠ざけると、梨だった絵は、緑のドアノブへと変化した。

 

 

 

「ピーブスはほんとのことを教えてくれたようね…」

 

 

そっと扉となったフルーツ鉢の絵を開くと、途端に肉の焼ける匂いや野菜が煮込まれる匂いが漂ってくる。

 

するりと、身を滑り込ませ後ろ手に扉を閉め部屋のなかを見渡す。

 

 

ふむ、とても広い厨房にたくさんの屋敷しもべたちだ。

 

 

厨房は大広間の真下にあるんだろう。

大広間と同じ位に広く、大広間と同じように四つの寮のテーブルと思われるものが置いてある。

(全く同じだから、余計に大広間と同じだと感じるのかもしれない。)

 

天井は高く、部屋の端では大きなレンガの暖炉が部屋全体を暖めていた。

 

 

お伽噺の挿し絵でありそうな景色だ。

 

 

部屋の中には少なくとも100人ほどの屋敷しもべがせっせと調理をすすめていた。

なるほど、こうして私達の食事は作られているわけか。

 

 

 

「お嬢様、何かわたくしめらにご用がおありでございますか?」

 

パタパタと、大きな耳をはためかせながらプティよりも若い屋敷しもべが近寄ってきた。

 

 

「いいえ、貴女方の働く姿が見たかっただけなの。邪魔をしてしまったわね、ごめんなさい」

 

 

「滅相もございません!!お嬢様がたのお手伝いをするのがわたくしめらの幸せなのです!!さぁ椅子をどうぞお座りください!お菓子はいかがですか?お飲み物は?」

 

 

「ありがとう、では紅茶をいただける?いつも夕食を楽しみにしているのよ、だからつまみ食いはまた今度にするわ。ありがとう」

 

 

キラキラと蝋燭の光を跳ね返す大きな目は、琥珀のような色をしている。

 

ふむ、ここの屋敷しもべたちはとても幸せに生きているらしい。

ダンブルドア校長につかえているのか、ホグワーツ城なのかはわからないけれど…屋敷しもべ達が怯えずに暮らせることはとても良いことだわ。

 

 

「どうぞ!お砂糖とミルクはこちらにございます。お熱いですからお気を付けてくださいませ!」

 

「ありがとう。……とても美味しいわ、また来てもいいかしら?」

 

「はい!!!いつでもお待ちしております!!」

 

 

 

 

暖かくて、賑やかだけど、生徒たちが鳴らす騒音とは違ってここの賑やかさは嫌いじゃない。

オープンテラスのカフェで街並みを見ながら読書をする人の気持ちが、少しだけわかった気がする。

 

生き物の気配は、安心する。

なにより、彼らは奉仕対象を害さない。

悪意をもって、何かを成すことがない。

 

 

……けして、プティを思い出して里心が刺激されたとかそう言うことではないのだ。

 

 

 

 

 

 




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