それから、何か商品を持っていないのかと自分の話題から話を少し前へ戻したハリーの思惑通り、ロンが私の魔法具に興味を示した。
私はプティが持たせてくれたランチを開き(時計はお昼を少し過ぎている)、そこに詰まった私の好物たちを見てまた里心に悩まされていたのだが、その話題に付き合うことで、意識を逸らすことにした。
あとの二人の場合ロンはお母上の用意されたサンドイッチがあったが、ハリーは持っていなかったので私のものをわけ(もちろん、ロンにもだ)、ランチを取りながら会話をしている。
で、私が持っている魔法具だったか。
とはいえ、ポーチのなかに何か入れたか覚えがない。
荷物をまとめている時に何かあった気がするのだが……。
と、ゾンコの包みがあった。
「これは……私の商品ではないけれど、こないだ粗品として送られてきたものね。煙玉と、投げ付けた相手の後ろを鳴きながらついて回るアヒルならあったわ。……これ両方とも校内持ち込み禁止だったりしないかしら?」
ゾンコの悪戯専門店から届けられた粗品の包みをそのままポーチに入れて、中身を確認していなかった物があったから開封して見せた。
学校としては悪戯グッズなんて持ち込みも使用も禁止してそうだけど、どうしたものか。
持ち込むとなると、入学早々に先生方から目をつけられることになってしまう。
ハリーたち一般生徒ならともかく『バーク家の娘』がそれではあらぬ疑いを招きかねない。
今回のものはそもそも私の商品ではない上に安全なジョークグッズだが。
ちなみにこちらの魔法具の内容としてはこうなっている。
・煙玉
ピンク色の煙が発生し、そのままクッションのように一定時間、実体をもって留まり続ける。
これを家の廊下で使ったら三時間ほどその廊下は通行不可能となった。効果が切れると勝手に消えてくれるが。
ピンク色の煙だった何かがポヨポヨと廊下を塞ぐ様子は実にシュールだった。
・追っかけアヒル
言葉通り対象に投げてぶつけると、アヒルがその人を親として認識するかのように、後ろをガーガーと騒音をたてながらついてくるようになる。
これも二時間は軽くおさまらない騒音が発生した。
走っても、飛んでも着いてくる仕様だったはず。
家の壁に投げたら、壁を親として認識したのかひたすら壁に向かって鳴くという結果になった。
なお、前に試作の段階で渡されていたそれらは失敗品も多くあった。
煙が発生し過ぎてしまい、危うく家がピンクのわたあめになるところだった物があったり、逆に投げても全く煙が出ないものがあったり、アヒルの口から猫の鳴き声がでたり、途中で雄鶏に変わって鳴き出すものもあった。
やっとのことこれらの作り手が安定生産が出来るようになり、商品化の運びとなったのだ。
それで実験を行ったり技術協力をした私のもとに商品化決定の報告と共に粗品か届いたわけだ。
それぞれ愛着はあるが、悪戯と嫌がらせ以外に使用できる場面が今のところ思い浮かばない。
二人に効果を説明し手渡せば投げてみたくて堪らないという顔になった。
「こんなのママは絶対買ってくれないよ!」
「(おばさんとおじさんはストレスとショックで気絶しそう)確かに、持ち込み制限とかありそうだけど。イカしてるね」
「私、入学式を迎える前に先生方からお叱りをうけるのは遠慮したいわ。捨ててもいいのだけど、二人が良ければ差し上げましょうか?」
「マジ?!」
「(体よく押し付けられた気がしなくもないけど…)…ありがと、僕の学校生活ではこういうものが必要な気がする」
「もともと無料でついてきたものだもの。それに作り手としては使われずに廃棄だなんて悲しいことはないわ。二人とも上手に使ってね?」
まだ店頭にも並んでいないはずだし、入学祝に最先端の悪戯を!と手紙に書いてあったから、世に出てもいないし、ホグワーツの中で悪戯に使った人もいないはずだから、もしかすると、まだ持ち込み禁止リストにはこの二つは載っていないかもしれない。
と、思うことで厄介になったものを押し付ける罪悪感を誤魔化した。
入学祝は気持ちだけいただいておく。
それぞれポケットの中へ仕舞いこみ、他にどんな悪戯グッズがあるのかと尋ねたハリーにロンがいろいろと話し出すのを眺める。
私は作る事が楽しいけれど、使うことを楽しんでくれる人達を見るのは新鮮だ。
ホグワーツに行けば更なる閃きと開発欲を刺激する出会いがある予感がする。
やはり禁じられた森には早々に行ってみなくては。
素材として面白そうなものもきっと沢山あることだう。
それから、魔法界について質問するハリーにロンが答え、私が答えと時間を過ごした。
*****
ところで……何か、忘れている気がする。
プティのおやつにも手をつけ、車内販売のお菓子を購入したハリーのものとあわせ3人で食べている(といっても私は百味ビーンズは食べないが)。
蛙チョコレートのカードを集めているというロンの話にハリーが興味を示す様子を見ながら、カードを集めると魔法具として利用できるタロットや御札、ルーン基盤のような何かを構想している時に何か、忘れているような気がして集中力が切れた。
ふと、膝の上の本に目線を下げれば表紙に描かれた蛇と剣のモチーフが見えた。
蛇がくるくると剣の周りをまわっているのを指でつつきながら考える。
思い出した、ドラコに挨拶にいかなくてはいけない。
体調を崩したことを手紙で話してしまってから、彼にも心配をかけていたし私から行くべきだろう。
ハリー達の様子を窺えば、どうやらそれぞれの世界で人気なスポーツについて話している様子。
私はクディッチには興味がないし、サッカーとやらも知識としては気になるが、私の知識欲を満たすための質問はこのタイミングですべきではなさそうだ。
退室しても問題ないか。
「二人とも、暫くここを空けても構わないかしら?…少しお友達を探しに行ってきたいの」
「「いってらっしゃい」」
「どうもありがとう、いってきます」
快く送り出してくれて良かった。
誰?とかどこへ?と聞かれて答えたらきっとウィーズリーのロンは嫌がるだろうから。
……というか、ロンって私が貴族だって気付いていない気がする。
お兄さん達は気付いていたようだったけど。