老練虎狼   作:デンデン丸

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後日修正します。


2話

 

 茶箱から茶菓子、茶葉を取り出し、茶を淹れる。

 

 『レオーネねえちゃんだ~!!あそぼー!!』

 

 『あ、ずるいぞ!!おれがあそんでもらうんだ!!』

 

 『じゃあさ!!じゃあさ!!しゅぎょーをいっしょにしよーよー!!』

 

 「あははは~!!こらこら、ちゃんと鍛錬しないと師匠の拳骨が飛んでくるぞ~!!」

 

 『キャッキャッ!!』

 

 レオーネが子達に顔を見せた瞬間、皆、鍛錬の事は何処へやら、彼女の周りに群れ、遊んでくれ、と、せがむ。

茶葉と湯を入れた急須を傾け、その様子を見守る。若い衆も先程の怒りを忘れたように、笑顔になっておる。

レオーネは面倒見が良い、子にも老人にも、何人も差別、区別せずに。あれは天性の一種のカリスマに近いと言っても過言ではなかろう。

 

 儂は手を叩くと、皆を注目させる。

 

 「それ、皆、休憩だ。茶を飲め。」

 

 『おかしだ~!!わーい!!』

 

 すると、どうであろう。子は大喜び、レオーネを引っ張りながらこちらに寄ってくる。

 

 「外の者にも声をかけろ、せっかくだ、皆で頂こう」

 

 「御意!!」

 

 若い衆にも、そう声をかけ、外で鍛錬をしている者も呼ぶ。

 

 ふと、レオーネを見る。

 

 「あははは!!よ~し!!皆でお菓子だ~!!」

 

 『キャッキャッ!!』

 

 あれは、確かに陰に傾いておるが、陽もまだ、残しておるな。

おそらく人を本格的に殺したばかり。……故に此処を訪ねてきたか。

ならば、育てた者の責務、というものが儂にもあろうて。

 

 煙管を取り出し、そっと、火種を落とす。

 

 「……レオーネ」

 

 そして紫煙を吐き出し、彼女を呼ぶ。

 

 「こらこら、皆ちょっと待ってなって……はい?なんです、師匠?」

 

 子らの相手をしながら此方を向いた彼女の、双眸をじっと見据える。

 

 「……あはは~。参ったな~、こりゃ……」

 

 「うむ、少し付き合え。……皆、菓子は兄が来るのを待つのだぞ。」

 

 『は~い!!』

 

 ――……影を落とした笑顔になったレオーネを連れ、庭先へと向かった。

 

 

 

 「……」

 

 「……」

 

 この季節にしては珍しい、冷たい風が庭先を吹き抜ける。

 

 「殺したか」

 

 「っ!!……はい」

 

 「何人殺った?一人二人ではない、な。いつものゴロツキ相手でもなかろう。」

 

 「あはは~。やっぱり、全部、わかっちゃいます……よね……」

 

 「かかか!!生娘が儂に隠し事なぞできるわけなかろうて。儂は无二打ぞ?かか!!」

 

 そう言って笑うと、彼女も、どこか、悲しげに笑った。今にも泣き出しそうな顔、こやつにしては珍しい。

 

 「……師匠、ごめ――……」

 

 「謝るのだけはよせよ、レオーネ。」

 

 「っ!!でも、でも私は……!!師匠から教わった技を……!!」

 

 「……だから、なんだ?」

 

 「え……?」

 

 「儂はぬしに、生きるための術を教えたに過ぎん。それをどう使うかは、ぬし次第であろう?なんだ?儂に叱って欲しかったか?拳骨の一つでももらうために此処に来たのか?」

 

 「ちが……」

 

 「ぬしは、“覚悟”を決める、きっかけが欲しいと。これからはこうして生きる、と。違うか?」

 

 「……」

 

 「なぁに。ぬしのような奴はこれが初めてではない。既に……5、6人は同じように訪ねてきたわ!!かかか!!今そやつらは生きてるのかも分からんがなぁ。」

 

 「……」

 

 「だから、なぁ、ぬし、レオーネ。――そんなみっともない顔をするな。」

 

 儂が一人で次々に弾丸のように言葉を放っていると、レオーネはポロポロと、涙を流し始めた。……若い、若いなぁ。そして、ようやく原石の光が視えた、か。

 

 「は、破門され、る、かと……思ってた!!」

 

 「はて?儂がこれまで誰かに破門なぞした事があったかのぅ?」

 

 「叱って、欲しかった……!!馬鹿、野郎って!!」

 

 「ふぅむ。確かに儂はお前を育てた、が。親ではないからのぅ」

 

 ――刹那、儂の胸に、レオーネが飛び込んで来た。

 

 「……“覚悟”を決めろよ、レオーネ?おそらく、ぬしの往こうとしている道は修羅道ぞ?こんな時世、ぬしのような若者が出てくるのは、そう珍しい話ではなかろうて。しかし、“覚悟”だけは決めろ。揺らぎない、確固たるものを。さもなければ、いつしか心は死に、修羅道、天狗道を往く鬼と化し……閻魔様からも見放される。」

 

 

 「……は、い!!はいっ!!絶対に……絶対に!!師匠の弟子なのを誇る事の!!できる……!!」

 

 「かかか!!そんなもんは誇らんでよいわ!!……ならば、景気祝いだ。……儂にできる事、お前が望んだものでもくれてやろうて。」

 

 そう言うと、彼女の胸を、軽く突き、後方へと下がり、拳を構える。

 

 「し、師匠……?」

 

 「……一戦、我が“无二打”を馳走してやろう。なぁに本気は出さん。これを見て、いつしか儂に追いついてみせろ。……かかか!!こういうやり方の方が、ぬしには似合うだろうて!!」

 

 「!!は、はははは!!はい……!!では……一戦、お願いします!!」

 

 ふっと、屈託ない笑顔に戻った彼女を見て――。

 

 「……いきます!!」

 

 「かかか!!……我が拳に“无二打”!!餞別だ!!これを見事モノにしてみせよ!!」

 

 互いに拳を構えて――。

 

 「「はぁぁぁぁ!!」」

 

 ――……希望を持ってしまうのだ。――いつしか、儂を殺してみせよ、と。

 

                            

                             序章:~終~

 




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