老練虎狼   作:デンデン丸

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なんだか凄い数のお気に入り登録を頂き、恐縮です。そしてそれと同時に更新する内容を何回も書き直さないと不安になる現象も出てきました…
どうか暖かい目で見守って頂けると幸いです。


6話

 

 

 「なんだ?随分騒がしいが、何か問題でもあったか?」

 

 

 

 「……敵……?」

 

 

 

 路から外れた木々の陰から現れた二人組。

一人は上物の軍服を纏ってはいるが、まだ年若い女。

もう一人はまだ幼さをやや残した、刀を携え、菓子を食べる少女。

 

 

 「あ!!た、隊長!!」

 

 「そちらも終わったんですね!!」

 

 すると、ボルス以外の二人はそう話しかけ、スっと身を正す。

 

 

 「あぁ。それよりも……誰だ貴様。」

 

 「そう言うぬしも、誰だ。」

 

 

 ――刹那、儂と軍服の女は互いの双眸を見据える。

ボルス、他二人は慌て始め、菓子を食べておる少女は、無表情でこちらを覗う。

 

 

 

 (ほぅ……どこから仕掛けても一撃を当てる隙が見えん。おまけにこの女……陰陽の境目が見えん。陰の気が強すぎるのぅ)

 

 

 「ふっ……」

 

 「かか……」

 

 しばらく、凍りつくような静寂が辺りを包んだ、が。

 

 

 「ふふ……成程。貴様、話には聞いてはいたが、もしや无二打とやらか?」

 

 「かかか。そう言うぬしは、ブドーの小僧と双璧を成すと言われておる、件の将軍か?ここまで隙が窺えぬ奴なぞ限られるわ。」

 

 

 お互い笑みを浮かべる、しかし目は笑っておらぬままに。

 

 

 「え!?に、无二打!?」

 

 すると、この場ただ一人の青年が声を上げ、こちらを指差した。

 

 「あ……そ、そうだ!!ごめんなさい、先生。皆に紹介できないまま……」

 

 「なに、そう気にするなボルス。ここでぬしらに会えたのも、何かの縁であろうて。」

 

 そう言うと、儂は軍服の女に近付き、小声で耳打つ。

 

 

 『……よぅ耐えたのぅ。儂はこのまま殺し合いになるかと思うたぞ。』

 

 『それでも私は構わん、が。部下の前だ、どちらかが死ぬしかない結末の手合わせなんぞ、するわけにはいかん、と、思って、な。……日を改めての殺し合い(てあわせ)ならば、受けるが?』

 

 

 『かかか、そう盛るな。まだ年若い現最強(・・・)に挑むにはこの老骨、少々堪えるわい。』

 

 『元最強(・・・)殿が言う言葉とは思えんな。それよりも……頼まれた任務からの帰路か?』

 

 『ほぅ、儂が何をしてきたのか、知っておるような口ぶりよのぅ。もしやあの坊……オネストを知っておるか。』

 

 『当たり前だ。お前が任務を、宮殿への召還を断れば、私がお前の家を襲う手筈だったからな。』

 

 『かか、それは怖いのぅ……』

 

 他の者には聞こえぬよう、僅かな時間の間、そう言葉を交わす。しかしやはり、互いの目は笑っておらず、殺気立ち。

 

 

 

 

 「あ、あの!!」

 

 

 そんな時であった。あの青年が興奮気味に、儂に話しかけてきた。

 

 

 「うむ、なんじゃ、儂に何か用か?」

 

 「お、俺!!帝国海軍から来ました!!ウェイブって言います!!その、无二打殿の武勇伝!!俺がガキの頃から聞かされて育ちました!!」

 

 

 「……そうか。さぞがっかりしたであろう。その武勇伝に伝わる者がこのような老骨で。」

 

 

 「そんな事……!!そうだ!!……隊長!!无二打殿を本部にお招きしてもいいですか!?」

 

 

 秒でコロコロと表情が変わる青年、確かウェイブと名乗ったが。彼は、現帝国最強の軍服の女、確かエスデス、であったか。

彼女にそう言った。

 

 「そうか……无二打は我々と似たような任務を帯びていた(・・・・・)からな。少しは互いに情報交換も兼ねて、迎えようとするか……」

 

 「じゃあ……!!」

 

 

 「あぁ、構わん。」

 

 「よっし!!」

 

 すると、ウェイブとやらは、さぞ嬉しそうな笑みを浮かべた。

 

 

 「う~ん。无二打だとはわかってる、わかってるけど、警備隊の頃の……」

 

 「先生が来るなら美味しいお茶淹れなきゃね!!」

 

 「……お菓子が食べれるなら……」

 

 

 どうやら、満場一致のようだ。

 

 「かか、では少し、お邪魔するとしよう。」

 

 ――こうして、儂は帝都へ向けて、この一行と共に歩むのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 ――帝都、イエーガーズ本部――

 

 

 「皆、お茶が入ったよ!!」

 

 「い……いつもすいません。」

 

 「ありがとう」

 

 「まことすまんの。」

 

 

 ボルスが茶の入った湯呑を持ち、此方に置いた。奴の淹れる茶は美味い。長年茶飲み仲間として交流を持っておるが、こやつを超える程に馬が合う奴に出会うた事はない。

 

 

 「いいのいいの!!好きでやっているんだから!!それに先生も来ているしね!!」

 

 

 儂は茶を飲み、件の刀を携えた少女は菓子を食べ、しかしウェイブとやらの表情だけが暗い。

 

 

 「どうした、小僧」

 

 

 儂はそうとだけ言うと、テーブルの上のチェス盤の駒をいじる。

 

 

 「あっ……いえ、その、さっき、无二打殿……先生が来る前に、助けた商人。ボルスさんを見た目だけで判断して、ボルスさん凄くいい人なのに、皆、見た目だけで判断して……」

 

 

 その言葉に、ボルスが何か反応しようとしたが、儂は奴の目を見て、止めた。

 そして代わりに、儂が言葉をかける。

 

 

 「……それが、悔しいか?」

 

 「……はい」

 

 

 「……ふむ。ここからは、ただの老骨の戯言だと思え。……人とは、陰と陽の中、影と光が背中合わせの状態で生きておる。誰かにとって良い人である、という事は、他の誰かにとっては悪い人、と捉えられる事が、自然の道理よ。誰からも好かれる奴なんぞおらん。……そしてボルスは、儂とぬしにとっては良い人、である。しかしな、こやつは“焼却部隊”に身を置いて、そこでは陰に、影の中に生きておった。上からの命令で、多くの命を奪っておる。」

 

 

 「そ、それは……!!」

 

 

 「まぁそう急くな。……しかしな、ボルスの陰の気はそこに留まっておる。その境界から一片の陰の気を漏らさずに。そして、こやつの陽、光の質とはな――」

 

 

 「――……え?」

 

 

 瞬間、儂は湯呑を置き、姿を消す。ある気配(・・・・)を感じて。

 

 

 「せ、先生?何で今――」

 

 

 それに対し、ボルスも困惑した、が。

 次の瞬間、部屋の扉が開く。

 

 

 「あ~なたっ」

 「パパ~!!」

 

 すると、どうであろう、ボルスの奥方と娘っ子のローグが部屋に入って来る。

 

 

 「ややっ、どうしてここへ?」

 

 ボルスは先程までの事は何処へやら、陽の顔にて奥方達を出迎える。

 

 「貴方ったら一緒に作ったお弁当忘れていっちゃうんだもの」

 

 儂の前では滅多に見せない、所謂、甘甘な空気で話す奥方。

 

 しばらく談笑していたボルス達。

 

 「パパ~!!だっこー!!」

 

 「よしよし!!いい子だ!!」

 

 それを、驚きとも何とも言えぬ表情で見るウェイブの、後ろに立つ。

 

 「――……あれが、奴の、ボルスの陽の、光よ。」

 

 

 再び姿を見せた儂に、ボルスが、奥方が、ローグが気付く。

 

 「えっ!!せ、先生!?」

 

 「わ~!!おじいちゃんだ~!!」

 

 

 奥方は顔を真っ赤に、ローグはボルスの腕の中で笑顔になる。

儂は笑いながらに近付く。

 

 

 「かっはっは!!奥方はやはり、そのように素直な方が良い。のぅ、ボルス?」

 

 

 「先生ってば!!だから姿を消したんですね!!」

 

 そう言うボルスだが、嬉しそうにしておる様子は、マスク越しにも分かる。

 

 

 「ありがとう、ウェイブ君。先生の言う通り、私は多くの人を燃やして……殺してきたの。きっと数え切れない恨みも買っている。でもね――……」

 

 ふと、ボルスは奥方、ローグ、そして儂も見る。

 

 

 「妻と娘、先生も。私のやっている事全部知っても、応援してくれる。先生は一緒にお茶を飲んで色んなお話を私達に聞かせてくれる。――だから私は、どんな辛い事があっても、先生、そして……家族がいれば、全然平気!!」

 

 

 「ボルスさん……!!」

 

 

 「かっはっは!!ぬしのようなまだまだ年若い身には、分からんだろうなぁ……」

 

 そんな儂達を見て、ウェイブも、どこか安心したような表情になった。

 

 

 

 

 

 

 ――……余談ではあるが、この後、儂は奥方に、こっぴどく叱られた。

 




エスデス様と拳を交えるプロットもありましたが、更新内容に書いてあるように、おそらくどちらも、手合わせ、となるとどちらかが死ぬまで戦い続けるだろう、と思いまして、言ってしまえば私にとっての安牌の内容のプロットを採用した次第です…。
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