鎌の勇者(仮)は殺人鬼【凍結】   作:聖奈

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ごめんなさい。家具片付けたり、仕事が忙しくなったりで書く時間が確保出来なくて遅れてしまいました…。


三十七話 忘却

(ミーシャのヤツ、何処にいる…?いくらなんでも小屋に来るのが遅い。普段ならすぐ見つけて来るハズなんだが…)

 

尚文はフィーロに荷車を引かせながら、ミーシャを探した。最初に森を探し回ったが見つからなかった。

 

(何だ…?この黒い霧は…。吸い込むのは不味い気がする)

 

尚文は思わず眉をひそめた。黒い霧が元康達と会った、街道の辺りの方角で立ち上っていた。

 

「フィーロ、あそこまで頼む」

 

「グア!」

 

尚文はフィーロに指示を出して、街道まで向かう。道中にも黒い霧が浮いており、その近くには走らないようにしていた。

 

(なん、だ…これは)

 

街道に近付くに連れて黒い霧の体積は増えていく。尚文は薄気味悪さを感じながら街道に徐々にフィーロと進んで行く。

 

「グ、ア…」

 

ミーシャと元康達が居た場所に近くなると、フィーロが苦しそうに呻き、その場に座り込んでしまった。

 

「ぐ…」

 

尚文も同じく身体から力が抜けていき、倒れそうになるが首を横に振り、意識を保とうとする。

 

(力が…!元康、とあいつも倒れているな…)

 

遂に尚文はミーシャを見つけ出す事に成功した。近くには元康とマインも倒れている。

 

「フィーロ、まだ動けるか…?」

 

「グア…っ」

 

尚文はフィーロに確認を取る。フィーロはふらつきながらも、返事をして動ける事を伝えた。

 

(さて、連れていくか…。持ち上げられるかは分からないが)

 

「グアっ!」

 

「ん?うおっ!?」

 

尚文はミーシャを連れ出そうと座る彼女に手を伸ばすが、地面から生えた黒い腕に掴まれ引きずり込まれていく。

 

「グアっ!グアっ!」

 

引きずり込まれていく尚文のマントをフィーロは必死に咥えて食い止めようとする。しかし、一緒に引きずり込まれてしまう。

 

「う、ぐ…」

 

「グ、ア…」

 

尚文とフィーロは引きずり込まれて、気を失った。

 

 

ーーー

ーー

 

 

「こ、こ…は」

 

「今更何の用かしら?尚文」

 

尚文は目を覚ました。まるで水中に居るような感覚に違和感を覚えるが、無視して今の状況を探ろうとする。その時、後ろから聞き覚えのある声が聞こえて振り返る。

 

「決まってるだろ?お前を迎えに来た」

 

「置いてったくせに。もうどうでもいいけど」

 

「何を言ってるんだ。置いていってないぞ」

 

尚文はミーシャを迎えに来たと伝えたが、ミーシャは気だるげにそれを拒否して文句を言った。

 

「とぼけなくて良いから。もう戦力も整ったし、手を組むのも潮時じゃない?」

 

ミーシャは置いていかれたと分かった時に、本来は一時的に手を組んでただけだと思い出した。否、思い出してしまったのだ。

 

「だとしても、俺はお前と手を切る気はない」

 

「どうでもいいけど、一応聞いとくわ。なんで?」

 

「正直、お前と手を切りたいと思った事は何度かある」

 

「やっぱり」

 

尚文は騎士団長を死なせた時等の所業を思い出しながら、ミーシャに言う。子供を殺した疑惑があった時も手を切ろうと思った事があった。

 

「聞け。だが、ラフタリアやフィーロはお前と居たがってる。俺も助かってるからお前が必要だ」

 

「本当に?ただ利用しようって腹積もりじゃないの」

 

尚文の言葉にミーシャは疑ってかかり、薄ら笑いを浮かべて吐き捨てる。

 

(今更だが、こいつ結構面倒臭いな…)

 

「疑うのは結構だが、お互い様だと思うぞ。お前も最初はそのつもりだったんじゃないのか?」

 

「……」

 

「何か言えよ」

 

「はぁ…私もそうだったわよ」

 

尚文とミーシャはお互いを利用していた。しかし、最近は共に旅をするのが当たり前になっていた。どちらもそれを口にして伝える事はしない。

 

当然、相手もそうだとは限らし、どちらが一方的に当たり前になっていたと分かってしまえば付け込まれるからだ。

 

「やっぱりな。さて、俺はこれから先もお前を利用し、使い続ける。お前が俺の立場ならお前を切り捨てるか?」

 

「捨てないわ。戦闘員が三人なんて一人でも捨てるのはもったいない」

 

尚文の問いにミーシャはそう答える。尚文の様に自分が攻撃を出来ない立場で、代わりに攻撃が出来る者が三人も居れば、多少金銭が掛かっても捨てる選択肢は無い。

 

「お前はどうする?今、宣言した通りに俺はお前を利用し続ける。大人しく使われるだけか?」

 

「…だったら、私も貴方を利用してやるわよ。それでいつか使い潰す。ほんと、私が言って欲しい事をあんたは言ってくれるわね。どうでもよさも全部吹き飛んじゃった」

 

「それほどでもない。聞き捨てならない言葉が聞こえたが、そのくらい強気でいてもらわないと困る。ほら、行くぞ」

 

「ええ♪面白い度にしてもらうわよ」

 

「当たり前だ」

 

ミーシャは倦怠感から解放され尚文から差し出された手を掴むと、そのまま一緒に上へと昇っていった。

 

 

その頃ーーー

 

「グアッ、グアァッ!!」

 

「分かったわよぉっ!行くから引きずらないで」

 

フィーロ側のミーシャは言葉が通じないので、尚文との時とは違い、話し合いにならず、フィーロにつつかれたり引きずられたりしていて、強引に連れ出される形になっていた。

 

ーーー

ーー

 

街道ではすっかり、黒い霧は消え去りそこに倒れていた人達は全員ただ寝てるだけだった。

 

「ん、ここは戻ってきたのか…」

 

「グア…」

 

「ふあぁ、よく寝た…」

 

尚文は目を覚ますと、辺りを見渡す。黒い霧は綺麗さっぱり無くなっており、近くには元康とマインが倒れている。

 

「起きたか。迎えに来たぞ」

 

「何を言ってるの?確か村に材木を運ぶ途中だったし、迎えに来るも何も…」

 

「覚えてないのか?お前は…」

 

(って、こいつを探しに来たのは覚えてるんだが…。確か俺達も寝てしまったような…)

 

二人は先程、話をしていた事を覚えてはいない。ミーシャ自身は副作用により強制的に覚えていない状態になっている。

 

 

「ま、良いじゃない。何か気分がすっきりしたし♪早く村に届けましょ?」

 

「…ああ」

 

(まぁ、気にしても仕方ない事か…)

 

「う、重…身体に力が…」

 

ミーシャのその言葉に尚文は気にするのをやめて、目を覚ましたのフィーロの元へ行き、荷車に乗った。その途中でミーシャは鎌を持つ手に力が入らず、落としそうになるが何とか持ちこたえた。

 

「そーれっ♪」

 

「ぐっ!?おふっっ…!!!おおぉ…」

 

最期に元康の股間を蹴るのを忘れずに。

 

「さ、村までひとっ走りお願いね!」

 

「ま、俺達ならあの速度でも大丈夫か。速く走って良いぞ、フィーロ」

 

「グアっ♪」

 

尚文とミーシャの言葉に機嫌を良くした、フィーロは猛スピードで村へと出発した。

 

「ぐえっ!?ごふっ…痛たた…」

 

マインを轢き逃げするのを忘れずに。

 

「ってて、あれ?俺達、何してたっけ?ここで歩いてたハズなんだけど…。うぐっ、股間とケツが…」

 

「さぁ?う、身体の節々が…っ…!」

 

元康とマインも記憶を失っていた。

 

「キャアアアァッ!!?元康様、顔がッ…!」

 

「え?」

 

なお、記憶を失っていた為、元康の殴られ続けて腫れ上がった顔を見てマインは悲鳴を上げた模様。

 

 

 

 

 

 

 

 


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