「士郎…この感じから察するに、久しく剣を握っていないんだろう?」
俺は、士郎の朝稽古に付き合う為に竹刀を振るっていた。
「っ!なんで分かったんだ?」
「打ち込みを通じて分かるさ、お前は弓、俺は剣の部活動に精進していたでは無いか」
お互いにお互いを高め合うために、俺たちと言うよりは、俺は弓よりも剣を取った。俺の中心は剣で、士郎の中心は弓だ。どちらを取ったと言っても、結局どちらも俺はやり続けていたから変わりはないんだが…。
「何より、士郎。その構えは合っていないんじゃないか?」
「…」
「違和感はあるようだな、それを自覚しているだけまだマシだ。その違和感の答えが出せたらまた呼んでくれ。それまで俺との稽古はなしだ」
少し突き放すように士郎にアドバイスを送り、家を出る。あのまま家にいると、士郎の前にセイバーに何かされそうだからな。
「それにしても…」
俺は通学路を歩きながら、あの事を考えていた。そうつまり、英霊召喚の事だ。アーチャーから貰った、1冊の書物の1部には触媒が必要だと書かれていたが生憎俺には触媒なんてものは持ち合わせていない。
俺の技術はクラスカードの影響により、会得したものであり、当然その置換魔術という物にも理解している。
擬似的にクラスカードを作ることは可能だ。かと言ってそれを使用したところで恐らく触媒にはなりえないのだろう。何より聖杯が受けつけない。
「っと…」
そんなことを考えながら、歩いているとあっという間に学園についた。
「遠坂は…まだ来ていないみたいだし、葛木先生も来ていないようだ。今こそこれは、実験をするチャンスだろう」
そう思い、屋上へと向かう。途中で間桐慎二とか言うワカメに挨拶された後煽られて、ブチ切れかけたが大丈夫だ。
「さて、あまり時間もないし、さっさと始めるか」
俺は書物通りに魔法陣を書き宝石を魔力で溶かしながら唱える。
「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。
降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ
繰り返すつどに五度。
ただ、満たされる刻を破却する
――――告げる。
汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ
誓いを此処に。
我は常世総ての善と成る者、
我は常世総ての悪を敷く者。
汝三大の言霊を纏う七天、
抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」
一言一句間違えのないように完璧に言い終えた。だが、俺の前には誰も現われなかった。当然と言えば当然だ。本来サーヴァントは、触媒によって選別されるのだから。召喚儀式に何も持ちえなかった俺ではやはり、最初から無理があったのだろう。
「失敗したか、期待はしていなかった訳では無いけど出来なかったものは仕方ない」
頭を切り替えて、魔法陣を消していく。 屋上から降りていき自分の教室まで戻る途中で遠坂に出会う。
「その顔から察するに士郎から話しかけられでもしたか?」
「そうよ、本当神経逆撫でされてる気分だわ!」
憤慨中の遠坂は、ブツブツ言いながらクラスへと入っていった。
「さて、俺も教室に戻るか」
~放課後~
最後の授業を終え、生徒達が帰宅していく中で俺は再び学校がよく見えるビルへと移動した。
「魔力反応…あれは遠坂と士郎か?せめて、一般人は巻き込まないでくれよ。ん?」
渡り廊下にあのワカメ…間桐慎二がいた。何やら女生徒と談笑中みたいだが、あの娘の魔力が吸われている。
「あのワカメも面倒な事をしてくれる」
そこへ来た遠坂と士郎。宝石魔術で女生徒の命を助けたか。
「
俺は弓を複製すると、そのまま士郎の付近にいた魔力反応に向けて放つ。
「ふっ!」
しかしライダーの持っていた武器に弾かれる。さらにライダーは、遠坂に向けて武器を放つが士郎が身を呈して守った。ライダーは、1時撤退したようだがどうやら士郎は傷を負ったまま追うらしい。
「さすがに見過ごせないか…」
森に入っていく士郎を見終えた後、追うように俺もついていく。
「大した事ないな、他のサーヴァントに比べたら迫力不足だ」
「いいえ、そこまでです。あなたは初めから私に捕われているのですから」
士郎の右腕に刺さった武器により縛り上げられるとそのままライダーは士郎の体を拘束する。
「ライダーのサーヴァント警告に来た、無関係の人間を巻き込むな」
「あなたは?」
「俺は衛宮隼人。教会から派遣された裁定者だ、もしこれに同意されない場合実力行使で行かせてもらうがいいか?」
「実力行使とは私も舐められたものですね、ただの人間如きに」
瞬間、ライダーの鎖が飛んでくるが干将だけを投影して全て弾く。
「この程度では俺を殺すことなど不可能だ」
「…」
分が悪いと思ったのか、ライダーは何も言わずに去っていった。
「士郎、遠坂も直にくるそこで待っているといい」
何か言いたそうな士郎だったが、直ぐに状況を把握したのか
俺の後を追って来なかった。
役目も終わり帰路に着こうと移動をしていた時に気づいた。
「ん?今左手に違和感が」
ちくりとした痛みがしたため左手の甲を見るとそこには、マスターの証である令呪が刻まれていた。
「ってことは、サーヴァントが顕現したってことか」
立ち止まりふと目の前を見ると、とてつもない魔力を感知した。
「このまま、無言で居ても話は進まないだろうし一先ずお茶でもどうかな?」
「顕現に時間が掛かってしまい、申し訳ございません。サーヴァントアヴェンジャー。召喚に応じ参上致しました」
正直空いた口が塞がらない状態だ、本来顕現しないはずのモノが現れるとは思えない。
「もしかしなくても、神様らしからぬ人が貴方を送り出したのでは?それにその口調じゃなくてもいいよ」
「よく分かってるじゃない、話は簡単よ。私がこの世界に顕現出来たのは、主が私の存在を認めてくれたからよ。本来、存在しないはずの、正規とは違う私はそのまま消えるだけだったんだけど、あなたの生い立ちを見て主が私を送り出したのよ」
「いや、でも俺は触媒とか持っていないわけで」
「持っているわよ、触媒。アンタの存在そのものよ。確定してしまった在り方を曲げる事はほぼ不可能…。善の反転である悪の性質を兼ね備えている、アンタにだけ私を召喚することが出来たのよ」
つまり、触媒無しで召喚出来たけどこのサーヴァントは俺のお目付け役みたいな感じか?
「もう一つ言っておくと、伝言を預かってるわ」
『色々考慮した結果、やっぱり君には幸せになって欲しいと思ってね。もし、サーヴァントを召喚させるようなことがあるならと思って準備はしていたんだ、お節介かもしれないけど1つよろしく頼むよ。追記1人だけとは言ってないよ』
「ん?ちょっと待ちなさいよ、聞いてないわよ!!」
えっ、つまり顕現するサーヴァントは1人ではなくて2人だということか。そう思っていると今度は右手にも令呪が浮かび上がった。
「サーヴァント、ルーラー。召喚に応じ参上致しました。宜しくお願いします、マイマスター」
「げっ!!」
同一人物が2人も…。さすがにセイバーとかに殺される気がしてならない。てか異例過ぎないですか、神様…。
「げっ!とは、なんですか?げっ!とは。持っとこう貴方はお淑やかに出来ないものですか」
「はいはい、お人好し聖女様は言うことが違うわねぇ。で?アンタの触媒はなんだったのよ?」
「あなたと同じですよ、真逆の方ですが。それに彼は今回裁定者の立場にあります」
「あの〜お二人さん?喧嘩は結構なんですけど、せめてその…なんて言いますかサーヴァントってバレないように服装とか変えません?セイバーさんにバレた時には俺の身が持ちそうにないんで」
すると、2人は人目もあるだろうという事で霊体になってくれたもののすぐ近くでずっと言い合いをしてる。
「これはまた、厄介なことに首を突っ込んだな…」
お気に入り数も気づけば3桁に入り、何ともまぁこんな駄作にと思う気持ちもありますがそれだけ期待されるってことなんですね(ポジティブ)。最近、勘違いしていたんですが、UBWのアニメを見返すとライダー戦って1回じゃないんかよ!と。今回出したサーヴァントは、皆さんお気づきかと思われますが、あのサーヴァントです。今後の展開にも必要になるので、序盤のこの辺りで呼んでおくのが良いかと思いまして、召喚しちゃった。テヘッ!