転生したらFateの世界でした   作:前神様

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第9.5話 買い物

「あのさ…一応着いたんだけど希望とかあったらお願いします」

 

『じゃあ私、あの黒いパーカーがいいんだけど』

 

とアヴェンジャー。

 

『何を言っているんですか貴方は!あっちの清楚な服の方がよっぽど、いいです!』

 

『はいはい、聖女様は清楚キャラで行きたいのね』

 

『なっ!貴方はちょっとそこに座りなさい、お姉ちゃんとして貴方を説教します!』

 

『座るわけないじゃない、そもそも霊体なんだから見えないんじゃないの?』

 

『見えてますよ、バッチリ。そのご満悦な表情がね!』

 

着いてからずっと、この調子でかれこれ何時間同じやり取りを繰り返し続けている。閉店時間も狭まってきているので、俺は取り敢えず女の子物の服を籠に詰め込みレジへと向かう。途中で2人が

 

『あっ!ちょっ!』

 

とか

 

『待ってくださいマスター!』

 

とか言われたが構わず購入。俺は高校に入ってからアルバイトもしていたので、資金力はあるのだ。その為、適当に選んでも数はあるので後で選んでもらえば済む話だと思い店を出る。

 

「ふぅ…何とかなったな」

 

『なってないですよ!』

『なってないわよ!!』

 

「そんなに、言うことか?確かに勝手に選んだのは悪いと思ってるけど…でもあのままだったら閉店時間になる所だったんだよ?それに、2人が言ってた服も全部買ったし」

 

『いい所あるじゃない』

 

『マスター感謝します』

 

美人2人に言われるとこう、グッとくるものはあるが別に感謝されるような事でもないと思う。これは言わば、俺の我儘に2人を付き合わせているだけなのだから。そもそも俺には、そんな風に感謝される資格はないのだ。

 

「マスター、今なにか自虐的なことを思いましたか?」

 

突然、霊体を解くルーラー。

 

「いや、思っていないが…」

 

「嘘ですね、啓示で直ぐに分かりましたよ」

 

「だと思ったわ、忘れたの?私たちの媒介の事。私達二人ともあなたのことよく知っているのよ?良い意味でも悪い意味でも」

 

そう言えばルーラーは俺の善性を、アヴェンジャーは俺の悪性を媒介にしているんだったな。って事は神様はこの2人に余計な記憶を見せたんじゃないだろうか?

 

「もし良かったら何だけど、具体的に2人が見た記憶教えてくれたり?」

 

「嫌よ!」

「嫌です!」

 

そんな、いたずらっ子みたいな笑みで言われても困るんだがな。

 

「言わないにしても、取り敢えず霊体のままでもいいからこの中から適当に選んで着てほしいんだけど」

 

当然卑猥な発言をした俺にはもれなくビンタが来る。2人に猛反対されたので、仕方なくビルの屋上から中に入った場所で着替えてもらうことにした。

 

「着替え終わったけど…」

 

「…///」

 

何故にルーラーは、そんなに照れてるの?おかしくない?俺何もしてないよね!!

 

「ねぇ、アヴェンジャー。俺別に何もしてないよね?」

 

すると、邪悪な笑みを浮かべてこう言い放った。

 

「何かしたんでしょ?私のお姉ちゃんに…。」

 

「お前こういう時だけそういうこと言うのな…。ルーラー、おめでとう。お姉ちゃん認定されたぞ?」

 

「やっと、分かり合えたのですね妹よ!」

 

「ちょっ!抱きつかないでくれます!?何しれっと嘘ついているんですか!!」

 

新しい服装は、2人とも統一していてペアルック。黒と白を基調とした服だ。

 

「なぁ、本当にそれでよかったのか?」

 

「良いのよ、これ以外には私達二人に当てはまるものなんてないもの」

 

「そうです、それに白黒はっきり別れていた方が分かりやすくていいでしょう?マスター」

 

見分けが着くという意味では、確かに分かりやすくはある。しかも、これはこれでよく似合っているから何も言う気は無いけど…。

 

「それでさ、2人の呼び名についてなんだがその…」

 

「別になんでもいいわよ、あーでも、アンタ絶望的にネーミングセンスがないのよね…そうね、私は真名を隠せればいいんだしオルタでいいわよ」

 

そう俺のネーミングセンスの無さは、前世からなのだ。犬の名前にベムとか付けてたからな。何処の妖怪人間だよ…。

 

「では私はどうしましょう?」

 

「アンタは普通にジャンヌでいいんじゃない?真名明かす事になるけど、裁定者って言う設定なんだし」

 

「えぇ!?それ言ったら、同じ顔のあなたも真名バレる事になりますよ!?それに、裁定者ってバレたらマスターの隠そうとする行為自体が無駄になってしまいますよ?」

 

「着いたらお互いに自己紹介できる様にお願いします…」

 

小声で、しかも何故か敬語を使ってしまった。それくらい2人の表情は怖かった。てか、この修羅場いつまで続くんですかね?

 

~衛宮家~

 

「あー…士郎?こちら今日から一緒に住むことになった…」

 

「「ジャンヌです」」

 

「…」

 

沈黙。そりゃそうだろ、訳分からん女の子2人がいきなり住むってなったら普通この反応だよ。

てか、真名言ってるようなもんだろソレ。

 

「ま、まぁ俺もセイバーを住まわせているから反対はしないけど…それにしても瓜二つだな姉妹?」

 

「あー…、まぁ一応な?彼女たちは、教会から派遣されて来た俺と同じ裁定者なんだ」

 

隠すつもりもないけれど、セイバーさんの眼差しが鋭いので一応サーヴァントだと言うことは伏せておく。

 

「士郎、少し隼人と話をしたいので先に準備をしておいて貰えますか?」

 

「準備って…あぁ、さっき言ってた稽古つけてくれる話だな!分かった、さっきに行って待ってる」

 

案の定、セイバーさんに呼び出しをくらったので待機する。

 

「こうして居ても、時間が過ぎるだけです。仕方ありませんね、単刀直入に聞きます。その方々はサーヴァントでしょう?」

 

「そうだ、俺が呼び出した。だが嘘はついていないぞ?誰も一言も人間だともサーヴァントだとも言っていないし、裁定者ってのも本当だ」

 

「隼人、貴方は何がしたいのですか?それだけの力を持ちながら何故士郎を助けようとしないのですか」

 

そんなのは簡単な話だ、今回の俺の役目はそういう者になってしまったからだ。世界の干渉力というのも働いているのかもしれないが、基本的に裁定者という役割になってしまった以上はどうしようも無く平等性を保たなくてはならない。

 

(言っても仕方あるまい、理解が追いついても気持ちが追いつかないって顔してるしな。)

 

「そうだな、確かに兄弟として士郎を救いたいという気持ちもある。だが、それ以前に今回の出来事は士郎にとって大きな成長に繋がるハズだ。幾度の死闘の果てに得るものが恐らくある、それを分かって欲しいと思う反面、こちら側に来て欲しくないと思ってしまう。来てしまえば必ず後悔する、そういう未来の姿が見えるんだよ俺には」

 

「つまり、魔術の真髄を理解して欲しいがために手を出さないと?」

 

「その通りだ。セイバー少しアドバイスを送っておこう。士郎の投影魔術は今はまだ眠った状態で完全には起動していない、それを起こすには士郎自身の魔術回路を本来あるべき形へと戻した上で見本となる…この場合は、アーチャーにでも手合わせをお願いすれば今よりは随分マシになる」

 

不機嫌そうなセイバーは、道場へと向かっていった。




主人公が何故バラしたかについてですが、ジャンヌ達が真名を、名乗った時点で諦めたためです。下手な言い訳するより良かったじゃない?セイバーが毎回主人公に対して敵対的なのは、人間味を失っているような発言を時折する主人公に対して嫌悪感を持っていたり、そもそも主人公に対してのセイバーの心境としては
「莫大な力を持った人じゃない何か」
と思っている事から自己のマスターである、士郎を守るため防衛本能が働いているという設定です。

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