クラスカードを使用したことによって、俺の服装は英霊エミヤのそれと全く同じものになっていた。それだけではない、彼の魔術回路、戦闘経験の記憶等も俺に引き継がれてきた。
まさか、元々知っていたはずのエミヤの記憶を実際に体感することになるとは思わなかった。想像していたよりも壮絶で、希望等どこにも無く理想に辿り着いたはずなのに何一つ得られなかった男の末路。
「これが自己犠牲の果て、俺のあったかもしれないもう1つの可能性…1度彼とは話をしてみたい」
俺とエミヤはどこか似ている。士郎と兄弟になれたのはもしかしたら、そういうことが関係しているのかもな。
「よぅ」
「ランサー?どうしたまだ何か…あぁ」
「察しが早くて助かる、あの坊主を始末しに行かねぇと言峰がうるさいんだよ」
恨めしそうにこちらを見てくるランサー。手を出す気は無いんだがな…。
「あー、言っておくが俺はお前らの戦闘には介入しない。介入できなくもないが、別に現時点で手を出しても何もいい事はないからな」
ホッと息をつくランサー。そんなに今の俺はヤバいのだろうか?ランサーとは家の門の前で別れて俺は外から戦闘を観察しておくことにした。と言っても、さすがに中の様子が分からないと不味いので、ちょうど少し家から離れた場所にあった電柱の上から見ることにする。
「お手並み拝見という所かな…、っとあっちから魔力反応…アーチャーと遠坂凛か」
まぁこの位置からだとバレる事は無いだろう。そう思い、目線を外し再びランサーを見る。どうやら正面突破して突っ込んで行ったようだ。士郎も俺と毎日組み手や投影魔術、強化魔術の行使速度勝負をしていたため腐っても魔術回路は前世で見た士朗よりもマシになっているとは思うが所詮は、半人前の魔術士。魔力量以前に魔力回路自体上手く使えていない。
「ほぅ、チラシを丸めて強化魔術を使うか考えたな。だが、その程度では」
普通の用紙に強化魔術をかけた所で所詮はただの紙切れ。直ぐに破ける。予想通りランサの一撃をなんとか凌いだみたいだが倉に吹き飛ばされた。
「この後はセイバーと契約か、おっ出てきた」
凄まじい勢いでランサーを圧倒していくセイバー。
「流石だな、セイバーは…」
だがランサーが宝具を放った事で手負いになってしまう。
「ココで退散ねぇ、しかしセイバー良くあれを凌いだものだ。そうだな…ランサーに戦ってみた感想でも聞きに行くか」
ランサーを追っていくと向こうも気づいたみたいでこちらを向いて立ち止まった。
「どうだった?小僧は?」
「参ったねまさか、セイバーを召喚されるとは思わなかった。さすがに肝が冷えたぜ」
「だろうね、彼女はある意味特別な存在だ。精々気をつけることだな、ではな」
ランサーとの会話を早々に切り上げて遠坂たちの方を見るとどうやらセイバーに、遭遇したみたいだ。おいおい令呪を使ったぞ、実際に見ると愚かな行為だな。アレは。
「今の内に自宅に戻る準備をするか、一先ず服装を変えないと」
投影魔術により、元の制服を複製し着直す。エミヤの記憶を受け継いだお陰で多少イメージに融通が聞くようになった。
「家に上げるのか…頃合いだな」
このタイミングで家に戻る。何ら不思議に思われることもないだろう、元々アルバイトも短期で請け負ったりしていたから帰宅時刻はバラバラなのだ。
「…っと」
自宅の前に戻ってきた途端、アーチャーが現れた。
「貴様か、先程見ていたものは」
「はて、なんの事やら?俺は衛宮士郎の兄だが?」
「フン、知らぬと言うのならば別に何も言うまい。だが、そもそも衛宮士郎に兄はいないはずだ。貴様は何者だ?」
「確認してくればいい、衛宮士郎に兄がいるかどうか本人にな」
「話にならんな…お前が衛宮士郎の兄だと言うのならそれを証明してみろ」
証明と来たか。ならばアレしかあるまい。
「
俺は木の棒を投影した。剣を投影することなど無論可能だ。俺が本当の意味で投影魔術を行使した場合、勘のいいアーチャーの事だ。何かあると思われるに違いない。
「…そんな事ではなんの証明にもならんが、まぁいい…好きにするといい」
そう言うとアーチャーは再び屋根の上に戻って行った。玄関の扉を開ける前に深呼吸。なるべく自然に見える様にいつも通りに接するつもりだ。
「ただいま」
リビングの方からドタドタと遠坂と士郎がやってきた。
「お帰り隼人、遅かったな」
「そうか?いつも通りだろ。ってか士郎その格好コスプレか何か?」
そう言うと士郎は服装を見直すと途端に慌てだした。
「あ…あぁ!これはそうなんだよ!最近ハマっててな!」
「にしては血生臭いが…」
「ま、まぁ凝ってるんだよ」
「ふーん、まぁいいけどな。それであっちの子は?」
すると、奥に控えていた遠坂凛が近づいてきた。実物はより一層美人だった。
「初めまして、私は遠坂凛と申します。学年は衛宮君と同じです。衛宮君、こちらの方は?」
「俺の義理の兄弟の衛宮隼人、遠坂…勘違いしてるかもしれないから先に言っておくけど、同学年だからな?」
「嘘っ!?全然歳上に見えたわ、いえ悪い意味は無いんですけど」
「ははっ、よく言われるよ。俺の事は隼人って呼んでくれたらいい」
そうして、取り敢えずリビングの方へと移動することになったのだが、もう少し隠す努力はしなかったのか。窓ガラス散らばりすぎだろ。だが、敢えてこの事について触れておかなければ後々面倒な事にも繋がりかねない。
「士郎…この窓ガラスどうしたんだ?」
「あ…えっ、えっと遠坂と部屋で枕投げしてたら本気になり過ぎて俺が何回かぶつかって割れたんだ」
その言い訳は、さすがに無理があるだろうと思いつつ遠坂の方を見るとカバーしに来た。
「そうなんですよ、士郎が私にセクハラ紛いな事をしたもので…」
それはフォローになって無いぞ…。寧ろ士郎の社会的地位殺しに来てんだろ。二人とも言い訳下手くそすぎだろ。てか、遠坂は眉間にシワよってて士郎の言い訳にイライラしてたんだな…。助け舟を出してやるか。
「まぁ良いんだけどさ、それより2人はこれから何処かへ行くんじゃないのか?」
「え?いや別に…」
「そうでした!私たちコレからちょっと外食の約束をしてたんでした、失礼します」
「え!それ俺聞いてないんですけど…ちょっ遠坂引っ張るのやめて!うぁぁぁぁ!!」
引きづられていく士郎を横目で見送りつつ、再び赤原礼装を展開する。すると視界の端に金髪の女の子が見えた。
「貴殿は何者だ?マスターの兄弟だと言っていたが…」
しまった。そう言えばこの時点でセイバーがいたんだったな。
「君こそ誰なんだい?士郎の彼女さんかな?」
敢えて何も知らない風を装う事にした。
「それは、質問の答えになっていない。魔力を抑えていても無駄だ!マスターは騙せても私の目は騙せない、あなたの魔力量は明らかに異常だ」
「やっぱり、無駄か。別に騙そうとしていた訳じゃない、ただ無駄に知る必要も無いと思っていてなセイバー」
セイバーの問いに対して、あっさりと返す。この時点での、セイバーの服装は普通に戦闘服だったのでやる気満々なのがヒシヒシ伝わってきた。
「どんな意味があってその魔力量を抑えているのかは分かりません。ですが、士郎に危害を加える気は今の所無いのですね?」
「別に今後も邪魔はしないさ、俺はただ君たちの戦いを見届けるだけだ。そんな事より士郎を追わなくていいのか?アイツも何かと勘が鋭い。それ故、セイバーお前が居ないとなれば疑問に思われるかもしれないぞ?」
そう言うとセイバーは俺の目の前から去っていった。騎士王…それもアーサー王から、あれ程威圧的に話されるとは。俺もまた随分と嫌われたみたいだな。
投稿を初めてさして、日も経っていないのに閲覧が増えててストックをついつい投稿しちゃってやばくなってきました。ストック切らさないように頑張って投稿します。宜しくお願いします。(尚今週は多忙につき気絶して投稿してない日が出るかもしれません!ご了承ください)