転生したらFateの世界でした   作:前神様

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第8話 在り方

 

俺は、ビルの1件についての報告をエセ神父に知らせた後、食材が切れていたことを思い出して買い出しに出かけた。

 

「今日はお好み焼きかな…」

 

そう思いながらスーパーに入り、具材をあれこれとカゴの中へと投げ込む。

 

「具材よし、調味料の補充分よし」

 

順番に確認作業を行い、レジへと向かう。今日は特売日だったので、どうしてもこの予定は、外せなかったのだ。どちらかと言うとあのエセ神父の依頼の方がついでなのだ。

 

「まぁ、どうせ士郎達は今日遅いだろうし具材を冷蔵庫に入れて下準備が済んだら魔術の訓練でもするか」

 

一応、今日はお泊まりイベントが発生すると予め知っていたので人数分作れるように色々と手を回したのだ。お好み焼きならあんまり難しくないし、前世でも鉄板焼きに通うくらいには好きだったのだ。

 

「こんなものか、案外下準備だけならそんなに時間はかからないか」

 

焼く工程だけは、後の方がいいだろうと思った。どうせ人数は多いのだし囲んで焼いた方が絵にもなるだろうと踏んだからだ。

 

「んじゃまぁ、やりますか」

 

まずは、基本である解析の魔術から。次に、強化、投影の順で行なっていく。無論あのカードの影響によりイメージに綻びは無く、程なくして全ての工程を終える。ただ一つ例外を除いて。

 

「俺には、衛宮士郎の様な理想は持ち合わせていない。だから決定的に剣を振るうための精神力の弱さは仇になっている」

 

そう、それは所謂魔術の最奥である"固有結界"が使えないことを指す。俺の心象風景その全てをさらけ出すなど、おぞましくて表現出来たものでは無い。

 

「…。答えは既にある、だが」

 

口にすることは簡単だ。前世の歪んでしまった己の形と転生して変わってしまった己の形。両方とも捨てきれはしない。結局俺は、ただの人間なんだろう。

 

「恐らく、この言葉は神様とやらが人間の俺にふさわしい呪文を選んだ結果なんだろうな。俺の用いるこの詠唱は、俺の今までの在り方…そしてこれからも俺の進もうとしている道を実によく描いている」

 

そうだな、もしコレが本当に意味しているのであれば出来るはずだ。唱えよう、我が詠唱の一部を。

 

「体は…悪意で出来ている」

 

予想通りというか、なんと言うか。少し呆れてすらいる、俺の投影した干将莫耶は形こそエミヤのそれと同じだろう。だが中身は別物だ。

 

エミヤのソレを遥かに超える、憎悪の塊によって形成されたソレは、比べるまでもないほどに研ぎ澄まされている。根本的な技術は同じハズなのに在り方が違うとこうも違うものなのか。

 

「なるほど…つまりはこの在り方を貼り続ける限り、根本はエミヤの投影のハズのものが歪に変化し、俺のオリジナルのものになるということか」

 

粗末なものだ。己のような醜悪な人間が作ったものが、コレとは。まさに俺にふさわしいものだ。魔力に干将莫耶を霧散させると新たに今度は弓を投影してみせる。

 

「いい加減、揺るぎようのない事実を自覚するべきだ」

 

この詠唱を神様とやらが与えたということは、つまりその在り方を俺が途中で放棄することは無いのだと理解しているのだろう。

 

それはそうだ、俺はエミヤの様に、他人を憎むことなく自己を憎むという在り方は出来なかった。

 

半端に人間の家族というものを知っていた俺は、他者に対して憎悪を向ける場面などいくらでもあった。それも数回じゃない、それくらいで終わるものなら俺の悪夢はとっくに醒めていたんだろうさ。

 

「人間、いつ死ぬかなんて分からないもんな」

 

そのタイミングで玄関の方から音が聞こえた。おそらく士郎たちだろう。空を見ると既に日は落ちていた。

 

「ただいまー」

 

「ただいま隼人君!今日お泊まりするからねぇ!」

 

「暫くぶりですね、隼人さん。私も今日は、泊まらせていただきますね」

 

「…」

 

上から順に士郎、藤ねぇ、桜、セイバーの順で次々と喋っていく。セイバーだけは何故か日本語わかりませんよ?って顔されて若干ショックだった。さっきまで思いっきり話してたよね?

 

「おかえり、4人とも。今日はお好み焼きにしてみたんだけど下準備は済んでるから、あとは焼くだけだよ」

 

「ありがとな、じゃあ俺が焼くから隼人はお皿の準備でもして待っててくれ」

 

士郎からの支持によって一先ず並べていく。セイバーは何故かこちらを睨んでいた。

 

「隼人と言いましたか?少し話があります、こちらへ」

 

リビングから縁側に呼び出されたので、仕方なく立ち上がりついていく。

 

「魔力の残滓を感じます、何か魔術でも使ったのですか?」

 

「あぁ、悪いな。投影魔術を使わせてもらった、何ていうか日課みたいなものだ」

 

「日課ですか?先日のバーサーカー戦で、あなたの戦い方はまるでアーチャーの様でした」

 

セイバーも気づいていたのか?隠すような事でもないが、敢えて表沙汰にする必要性もない。

 

「つまり何が言いたいんだ?」

 

「士郎の様に未熟な魔術師ならば、分からなくもありません。ですが、あなたは違う。投影魔術というものが、どの程度で達人の域に出るのかは分かりかねますが、士郎とあなたを比べるのであれば天と地ほどの差が開いています。それで、何故訓練する必要があると?」

 

「身の安全の為と言うのもあるが、実の所は将来俺が成すべき事のためにそれは必要なんだ、俺がこれから歩む道は、ただ一度の失敗も許されないのだから。だからこそセイバー、日課の事については目を瞑っていただきたいのだが」

 

「仕方ありませんね、あなたの向上は士郎にとってもいい見本になると思いますし」

 

その瞬間俺は、皮肉だが少し苦笑いしてしまった。確かに投影の剣としての機能だけなら見本になるかも知れないが、組み込まれる憎悪は違う。昨日までの俺の剣ならまだ、良い。だが、俺はもはやエミヤのそれとは別物だ。そんな男の剣を真似るなどあってはならない。

 

「納得してくれるなら結構、それよりも早く戻らないとお好み焼き無くなるぞ?」

 

すると、セイバーは余程お腹が空いていたのか走って向かっていった。どんだけ食い意地張ってんだよ…。




次回戦闘シーン入れる予定です。(誰がとは言わないけどね)それと、この一週間もしかしたら更新ができない日が多いかもしれないです。申し訳ない<(_ _)>

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