機動戦士ガンダムSEED unlimted blade works   作:時代錯誤

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偽りの平和に訪れる男

コズミック・イラ(以下C.E.)70

《血のバレンタイン》によって、地球、プラント間の緊張は一気に武力衝突まで発展した。

誰もが疑わなかった、数で勝る地中軍の勝利。

が、当初の予測は大きく裏切られ戦局は疲弊したまま、すでに11ヶ月が過ぎようとしていた。

 

L3宙域に存在する衛星コロニー、ヘリオポリス。

ナチュラルとコーディネーター、地球とプラント間の緊張が高まる中、数少ない中立の意思を示すオーブ首長国連邦の有する資源コロニーである。

そのためか、今もなお戦闘が各地で起こっているにもかかわらず、道行く人々の顔は平穏を享受し穏やかなものであった。

そんな中、一人の男がいた。

白い髪に浅黒の肌をしており、黒いズボンに真っ赤なライダースジャケットを着たその男は、他の人々とは異なり、少し険しい表情をしながら町を歩く。

 

「やれやれ、まさに平穏そのものだな、ここは。」

 

と、立ち止まり、誰に言うでもなく皮肉めいた口調でそうつぶやく。

男は肩に担いだ自分の身長よりもある細長い鞄のようなものを、かけ直しつつ、再び町を眺めつつ歩みを進めた。

すると、どこからかニュースの報道が自然と耳に入る。目を向けると、どうやら、すぐ近くにある工業カレッジの入り口近くにて何か作業をしている少年の端末から流れたもののようだった。

内容としては、南アフリカの慢性的な食糧不足問題、そして東アジア共和国のマスドライバー施設を有するカオシュン宇宙港にての戦闘中継であった。

実況者の伝える内容と、その声色から戦局は思わしくないことが分かる。

 

男は報道が聞こえる方へと目線を向ける。

すると、先ほどまではいなかった二人、別の少年と少女が、座っていた少年の端末の映像を眺めていた。

 

「ひえー、先週でこれじゃ、今頃はもう墜ちちゃってるんじゃないのカオシュン。」

 

「カオシュンなんて、結構近いじゃない。大丈夫かな、本土?」

 

「ああ、それは心配ないでしょ。近いって言ったてうちは中立だぜ。オーブが戦場になることはまずないって。」

 

それを聴いた男は苦笑した。

 

(やれやれ、危機感のないことだ。そうやって能天気に話している自分達の足元で何が造られているのかとも知らずに。)

 

そう心の中で彼らを皮肉って、男は歩きはじめた。

 

(さて、情報が正しければ、向かうべき場所はあそこだな。)

 

男の目線の先には、モルゲンレーテ社の工場があった。

オーブ本国のオノゴロ島に本社を置き、兵器の開発製造を行っている国営企業。

このヘリオポリスもオーブに所属するコロニーであるため、その工場が存在するが、普段は開発と同時に工業カレッジの学生のゼミの場として解放されているという。

男は歩いていくのは骨が折れると思い、普段人々が移動に使っている、ビークルの乗り場へと向かった。

 

すると、何の縁なのか先ほどの少年達も同じ乗り場にいた。

見てみると、また別のグループの学生とはしゃいでおり、後ろにいたサングラスをした凛とした女性に先に乗せるようたしなめられていた。

男はその女性と二人の男性が民間人でないことをすぐに見抜いた。

 

(あの感じ、軍人か。どうやら情報は正しかったようだ。ならば、あちらもそろそろ仕掛けてくるに違いないか。)

 

そう思案していると、学生達もビークルに乗り込み走り出していた。自分の番が回ってきたのを確認すると、男もまた乗り込み、目的地へと向かう。

 

ビークルが走り出すと、すぐに工場が見えてきた。

手前にはセキュリティーのために無人だがその隔壁は下がっている。

 

「さて、入手したIDが使えればいいのだがな。」

 

そういって、入手した偽造カードをスキミングする。

すると問題なく、隔壁があがったことに安心し、男はそのまま走り出した。

 

 

(第一関門は突破。さて、ここからだな。あまりうかうかはしていられないが。)

 

 

そうして、男は前を走る、学生達とは別の場所へと向かった。

到着したそこは、他の場所とは違う雰囲気を放っていた。男がビークルから降り、近づくと、銃を構えた男が近づいてきていった。

 

「ここは関係者以外の立ち入りは許可されていない。所属とID を提示しろ。」

 

「モルゲンレーテ本社所属のシロウ・エミヤだ。例のモノの最終調整のために来た。」

 

そういって、IDを渡す、シロウ・エミヤと名乗る男。

IDを渡された男がそれを確認する。

 

「確認した。ここから入って地下にいけ。そこに例のアレはある。」

 

「了解した。地下にあるのは全機体か?」

 

「いいや、今あるのは2機のみだ。残りの3機はすでに艦の方へと移送されている。」

 

「何?いや、了解した。まずはこちらを優先する。」

 

そういって、エミヤは建物の中に入った。

 

(ちっ!やはり遅かったか!だが、全部で5機あることは確認できた。それに、まだ2機あるのならばデータの回収には問題はないか。)

 

と、いらだちながらも気持ちを切り変えようとエレベーターに乗ろうとしていた、その時。

突如、建物の外から爆音が響いた。

 

「何!まさか、このタイミングで!やはり、出遅れたか!」

 

そうはき捨てると、エミヤはエレベーターでの移動は危険と思い、非常用階段から地下に向かった。

 

(この感じであれば、外の3機は諦めるしかないか。ならばせめて、下に残った2機だけでも。)

 

 

エミヤは階段を駆け下る。

そして、目的の工場区最下層に到着すると、そこでは既に戦闘がはじまっていた。

しかし、エミヤはそんな状況には目もくれず、取り残されていた目的のものを確認していた。

灰色の巨躯、それは地球連合軍が未だ持ち得ない兵器だった。

 

「やはりまだ残っていたか。しかし、この状況はいささか面倒くさいな。データを取るにしても、邪魔が多すぎる。排除するのはたやすいが、それでは上が何と言うか。」

 

と、冷たい目で今も尚、戦闘を繰り広げる者たちを見ながらエミヤは思案していた。

肩に担いだ細長い鞄を下ろし、中からあるものを取り出す。

それは弓であった。

今や時代錯誤といっても言いその武器をエミヤは手に取り、弦を張る。

すると、

 

「お父様の裏切り者ォ!!」

 

戦闘の怒声とは異なる悲痛な叫びが聞こえた。

エミヤは思わず、その声の方を向く。

そこにいたのは、先ほど見かけた暗い茶髪の少年ともう一人。

エミヤはその金髪の少女を見て目を疑う。

 

「何故こんなところに彼女が!ちっ、たわけが!好奇心は猫をも殺すということもわからないのか!」

 

エミヤは苛立ちをあらわにした。

断ち崩れた金髪の少女を少年が手を引いて走り出す。

その方向は工場区のシェルターがある場所だった。

そして、オレンジ色の作業着を着た女性が彼らの姿に気づくのをシロウは見た。

 

「ええい!あいつらのせいで、目線がこちらにも移ったか!」

 

エミヤは弓と矢を持って、遮蔽物となる瓦礫に身を潜めた。

このままでは、あの機体を死守しようが、奪取されようが彼の目的が失敗に終わる。

 

(どうする。やはり全員排除するしかないか。)

 

そう思い、飛び出そうと瓦礫から身を乗り出したその時、茶髪の少年が戻ってきたのが見えた。

そして、彼は一人のザフト兵が上から先ほどの女性を狙っていることに気づくと叫んだ。

 

「危ない!後ろ!」

 

その声に気づき女性が後ろを向き、銃を放とうとするが、もはやそこに弾はなかった。

しかし、銃弾は彼女を襲うことはなかった。

 

(ちっ、素人が!)

 

エミヤが弓に番えた矢を放つ。音もなく、放たれたそれは、数十メートルの距離等気にすることなく、目標を穿った。

 

(おそらく彼女は指揮官クラスだろう。ここで死なれては、ザフトにみすみす目の前のアレを奪われる。それだけは阻止せねば。)

 

そう考え、エミヤは再び身を隠す。

 

何が起こったのかと、女性と少年は疑問を抱く。

しかし、もはやそんなことを気にする余裕もなかった。

女性が少年に向かって叫ぶ。

 

「来い!」

 

「左ブロックのシェルターに行きます!お構いなく!」

 

「あそこはもうドアしかない!」

 

その会話をエミヤも聞く。

そして、再び爆発が起こる。

意を決した少年が、女性の方へと向かうのを見てシロウは考える。

 

(どうやっても、このままでは消耗戦か。ならばやはり、排除するしか、ん?)

 

エミヤが矢を番え下にいる者たちを狙おうとしたその時、一機の上で先ほどの少年がザフト兵と膠着してるのが見えた。

 

「やれやれ、何だか知らないが、戦場でそれでは殺してくれといっているようなものだぞ。」

 

そうつぶやき、矢を放とうとしたその瞬間。

負傷した女性が拳銃でザフト兵を撃ち、少年を無理やり機体の中へと押し込んだ。

ザフト兵もまた、残されたもう一機へと登場する。

 

「しまった!」

 

タイミングを見逃したエミヤをよそに、機体は動き出す。

失った好機は取り戻せない。

エミヤは爆炎広がる工場区の中、動き出すその機体を見上げた。

 

 


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