迷宮町のニイさん(仮)   作:ダークエルフスキー

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ぷろろーぐ

 神崎モコの兄、神崎ニイヤは迷宮探索者である。

 そのニイヤが迷宮内で事故に遭い、変わり果てた姿になって病院に運ばれたのは夕方のことであった。

 

 

 モコが物心をつく前から両親はいなかった。

 神崎家に親戚はなく、年の離れた兄が親代わりになってモコを育ててくれた。

 中学を卒業したばかりのニイヤはスコップ片手に迷宮へと入り、モンスターを倒して二人が生きていくための生活費を稼いだ。

 迷宮探索だけでも大変な重労働だというのに、ニイヤは幼い妹の面倒もしっかりとみたのだ。

 モコがそんな兄を尊敬するのは当然のことであった。

 両親不在のモコが人並み以上に贅沢な暮らしができるのは、ニイヤが迷宮探索者として十年以上も頑張ってくれたおかげである。

 彼女が兄を嫌いになる理由などまったくなかった。

 

 

 料理中に連絡を受けたモコは病院に駆け込んだ。

 モコに詰め寄られた看護師が悲鳴をあげた。

 

 

 迷宮探索者とは危険を省みずに迷宮奥底へと潜り、強靭なモンスターと戦う仕事だ。

 モコは、探索者として一流と言われる兄でも重症を負う可能性はあると常に覚悟していた。

 そのようなときに慌てないよう、モコなりに心備えはしていたつもりだ。

 しかし実際に直面すると恐怖しかなかった……ニィさんどうか無事でと心の奥底から願った。

 モコは看護師に教えてもらった病室の扉を叩きつけるように開いた。 

 

 覚悟はしていた……しかし、こんな事態になるとはまったく想定してなかった。

 

 モコに気がついたニイヤが病室のベッドから身を起こした。

 

「やあ、モコ……迷宮で珍しいトラップに引っかかってね」

 

 セクシィな唇から洩れるのはハスキーボイス。

 腰まである濡れ羽色の黒髪が眩しかった。

 確かにロックな兄だが、短髪だったはずだ。

 

「気がついたら、こんな姿になってさ」

 

 眉を困ったようにハの字にした妖艶な美貌。

 神秘的な双眼は赤と青のオッドアイ。

 確かに中二病の毛もある兄だが、黒目だったはずだ。

 

「ははっ、本当に参ったもんだよ……」

 

 姿勢を変えるたびに強調される魅惑的な体のライン。

 野暮ったい検査衣を着てもわかる、メロンみたいに大きい胸。

 確かにおっぱい星人の兄だが、おっぱいなんてなかったし、こんなにグラマラスでもなかったはずだ。

 

「まあ、これからは神崎姉妹(・・)として二人で頑張っていこう……はい、お土産デス」

 

 ベッドの上から、モコが大好きな迷宮饅頭を申し訳なさそうに差しだす絶世の美女。

 モコは口をぽかんと開き、手に握ったままだった包丁をリノリウムの床に落とした。

 

 兄が姉になって……深夜系ラノベアニメにでてきそうなエロ魔女な容姿に変貌していた。

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