迷宮町のニイさん(仮)   作:ダークエルフスキー

2 / 7
そんな生活でも一ヵ月もすれば慣れるもの

 朝食を作っていたモコはキッチンに入って来た人影に気がついた。

 ややタレ目気味な眠たそうな美女。

 黒髪の魔女というネーミングが合いそうな兄のニイヤである。

 

「おはよう、ニィさん!」

「おはよモコ、今日も朝から元気だね」

 

 魔女は迷宮新聞を片手に椅子に座ると、妖艶な美貌をコミカルに歪ませて大あくび。

 豊かな胸の球体がエロイ感じでたゆんと揺れた。

 モコは何だかもったいないなぁ、という気持ちになる。

 たぶんこれが世に言う、残念な美人ってやつなんだろう。

 

「ねぇ、ニィさん」

「ん、なんだ?」

「色々言いたいことあるけど、取り敢えずブラジャーは着けたほうがいいよ?」

 

 新聞を広げていたニイヤは盛りあがった自分の胸を見下ろした。

 シャツにトランクス。

 以前と同じ朝の姿だがトランクスは女物になっていた。

 

「ブラジャーか……胸が苦しくてなぁ」

 

 そう呟きつつ、ニイヤは乳房を指で鷲掴みにした。

 重量級のおっぱいがモコの目の前でもにゅもにゅと形を変える。

 こんなの駄肉の塊と言わんばかりの無造作な扱いである。

 どうやらおっぱい星人のおっぱい愛も、自身のものには適用されないらしい。

 慎ましいモコは、切なさと愛しさと妬ましさを感じてしまう。

 

「くっ!? ……で、でも、巨乳の人がブラジャー着けないでいると、クーパー靭帯が切れて垂れ乳になっちゃうらしいよ。びよよ~んって伸びるらしいよ?」

「それ、まことか……?」

「うん、そういうのが好きなら止めないけど、私は垂れるのは嫌だなぁ……」

「モコ、乳に貴賤はなしだぞ! ……とはいえ自分が垂れ乳になるのは私も嫌だ……不本意だがブラジャーはなるべく着けることにするよ」

「うんうん、それがいいよ。はい、お味噌汁」

「お、あんがとさん」

 

 朝食の準備を終え、モコも食卓に着く。

 ニイヤが厳かに手を合わせ目をつぶる。

 モコも同じように手を合わせた。

 

「では、いただきます」

「はい、いただきます」

 

 十数年続く神崎家のいつもの朝の光景、二人は食事を開始した。

 

「美味い! モコの料理は相変わらず美味いな! これならいつでもお嫁さんに行けるぞ」

「はいはい、ニィさんご飯のお代わりいる?」

「大盛で!」

 

 モコは丼にご飯をよそい、ニイヤに手渡す。

 漬物と焼き鮭の切り身をつつく兄の姿。

 豪快な食べ方だが下品ではない。

 美人補正というわけではなく、口を開いて咀嚼しないし、余計な音を立てないからだろう。

 多分、豪快に見えるのは食べるペースが早いからだ。

 

「でもよかった、ニィさんの食欲が戻ってきて」

「ああ、ようやく前と同じくらいに体を動かせるようになったから、そのぶんエネルギー消費も増しているみたいだ」

 

 この一ヵ月、通院しながらリハビリしていたニイヤは味噌汁を美味そうにすする。

 こくこくという喉の動きに追従して胸の球体がまた揺れた。

 それを何となく目で追ってしまうモコ。

 

「……あの、できればもう危険なことはして欲しくないかな」

「ん、ああ……」

 

 しんみりとしたモコの雰囲気に気がついたのか、ニイヤは箸を食卓に置いた。

 

「まあ、探索者は当分休みだ……体は動くけど持久力が格段に落ちてるから」

「そうなの?」

「うん、マッスル(人工筋肉)スーツがあるとはいえ、地の体力までは補えない」

「女になったから?」

「そうかも? 専業の探索者に女が少ないのは、そういうことなんだろうなぁ」

 

 サンケー仕事だし、にひひ、とニイヤは笑った。

 

「じゃあ、無理しない?」

「しないしない、まずソロで迷宮探索なんてもうできないさ」

 

 その返答に安堵するモコ。

 ニイヤは湯呑のお茶を絵になる風情ですする。

 豊満な二つの球体が緩やかに揺れていた。

 モコは唐突に、つきたてのお餅を食べたくなった。

 

「前より稼げないけど、前よりは安全な迷宮の仕事があるらしいから、今日はその職場見学にいってくるよ」

「あ、そうなんだ……というかその話、私は聞いてないよね?」

「あーほら、モコも今回のことで少しナーバス気味だったろ? それで迷宮関連の仕事というと、またストレス与えちゃうかなと、何だか言いにくかったんだよ」

「もう、そんなに私、弱くないよ!」

 

 スマンスマンと大らかに笑う黒髪の美女。

 容姿や性別は大きく変わったが、その仕草はモコの知っているニイヤのものだ。

 紛れもなく、目の前の美女はモコが大好きな兄であった。

 その認識に、今まで心で引っかかっていた何かが、遠慮というものが溶けていく感じがした。

 

「……あの、ニィさん」

「なんだ?」

 

 モコはにっこりと微笑んだ。

 

「おかえりなさいお兄ちゃん!」

「ん? ああ、ただいまモコ」

 

 ニイヤも笑顔を浮かべた。

 たゆんたゆんと揺れた。

 

「それとニィさん」

「あい?」

「その自己主張の激しいアグレッシブなおっぱいさまを、これからの私の人生のために揉ませて頂いてもよろしいでしょうか?」

「お、おう? 人生? …………どうぞ?」

 

 

 とてもとても柔らかかった。

 モコはヘビィ級おっぱいの感触を人生の経験値にした。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。