この世界では偶像と書いてデュエリストと読み、決闘者と書いてアイドルと読むことがあります。   作:地雷一等兵

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早速続きが出来ました~!

では本編をどうぞ↓


第9話 運を味方につけるだけ

 

 

111(ピンゾロ)プロ、名前の響きは些か賭博じみているがいたって健全な芸能プロダクションだ。

“当たらぬ八卦”の藤居朋、“ジョーカー”兵藤レナ、“天運”鷹富士茄子などの凄腕デュエリストが在籍していることでも有名である。

 

 

「や~……茄子さんとの勝負は久々……勝てるかな?一応占いの結果は悪くなかったけど。」

 

「ふふ、楽しみですね。」

 

事務所の目の前の道路で二人は向かい合っていた。

道行く人々もそんな二人の姿を見て足を止め、これから始まるであろうデュエルに心を弾ませる。

 

「あれって……!」

 

「ここは111プロの事務所前だし、間違いないって!!」

 

「うは~! あの二人のデュエルが生で見られるのか! ラッキー!!」

 

周囲の観客たちはざわざわと騒ぎながらカメラを構える。

そうこうしているうちにデュエルが始まった。先攻は茄子だ。

 

「ドロー! 《地雷蜘蛛》を召喚! 《セカンド・チャンス》を手札から発動!」

 

攻撃力2200の下級モンスターを召喚した茄子はそのままターンを終える。

そして藤居朋のターン。

 

「《コーリング・ノヴァ》を召喚! そのまま攻撃!」

 

「来た……!」

 

攻撃力1400の《コーリング・ノヴァ》による攻撃、それは単なる自爆である。

もちろん攻撃力2200の《地雷蜘蛛》に勝てる訳はなく、そのまま戦闘破壊されるのだが、藤居朋の狙いはそれだった。

 

「破壊された《コーリング・ノヴァ》の効果発動! 攻撃力1500以下の天使族モンスターを特殊召喚する、この効果で私は《アルカナフォースIV-THE EMPEROR》を特殊召喚!さらに特殊召喚が成立したことで速攻魔法《地獄の暴走召喚》を使用する!」

 

特殊召喚からのコンボによって藤居朋のフィールドには三体のTHE_EMPERORが並び、効果の影響で茄子のフィールドには三体の《地雷蜘蛛》が並んでいる。

それだけなら攻撃力1400のモンスターが並んだだけで済むのだが、アルカナフォースの本領はここからだ。

 

「タロットよ回れよ回れ!!運命を占え!」

 

フィールドに存在する《アルカナフォースIV-THE EMPEROR》のカードのソリッドビジョンが回転を始めた。

その様子を茄子は神妙に見つめている。

 

「ストップッ!!」

 

「んん~っ! 正位置ぃ!!」

 

回転する三枚のカードは茄子の声で止まり、全て通常の向きで止まる。

この事により、《アルカナフォースIV-THE EMPEROR》の効果が発動する。

 

「正位置の効果を発動! 効果によりアルカナフォースモンスターは攻撃力が500アップ、これが3枚!」

 

あっという間に藤居朋のフィールドに攻撃力2900のモンスターが3体も並ぶ。そしてまだこれがバトルフェイズの出来事なのだ。

 

「3連打ぁ!!」

 

「くぅ……!」

 

THE_EMPERORの総攻撃、それは《コーリング・ノヴァ》の自爆特攻を帳消しにする計2100のダメージを茄子に与える。

これでお互いのライフは茄子が5900、藤居朋が7200と差が開いた。しかし茄子は慌てない。

 

「ドロー……ふふ、《時の魔術師》を召喚。効果を発動!」

 

「げげげ!?」

 

茄子が召喚した時計のようなモンスターが持つルーレットが回転を始める。

その針の止まる先を藤居は不安な顔をして見つめていた。

そして徐々に針が遅くなり、ルーレットが止まる。針の先の文字は“当”だ。

 

「ぎゃ~っ!」

 

「ふふ、これで朋ちゃんのフィールドにいるエンペラーは全滅ね。がら空きの朋ちゃんに直接攻撃(ダイレクトアタック)!」

 

「く~っ!」

 

攻撃力500の《時の魔術師》の攻撃によって6700と、少しだけライフの差が縮まった2人。そして返しの藤居のターンになる。

 

(た~っ!ついてないや、ここでこのカードは嬉しくないよ~……。)

 

藤居朋はドローしてきた《光の結界》を発動させ、モンスターを一体セットしてターンを終える。

 

「ドロー、《Ms.JUDGE》を召喚してセットモンスターに攻撃!」

 

「残念、《アルカナフォース0-THE FOOL》は戦闘じゃ破壊されないよ!」

 

「なら、このままターンエンド。」

 

戦闘破壊されないTHE_FOOLを壁にして時間を稼ごうとする藤居朋。その作戦は功を奏したのか、盤面が整い始めようとしていた。

スタンバイフェイズに発動される《光の結界》の効果は無事に発動され、カードの状態は正位置のままだ。

ドローして4枚となった朋の手札には《アルカナフォースVI-THE LOVERS》、《光神化》、2枚目の《地獄の暴走召喚》、そして切り札とも言える《アルカナフォースXXI-THE WORLD》が存在している。

 

(逆転する……いや、勝つ!勝った!!)

 

確信を得た朋はそのまま手札のカードに手を伸ばす。

 

「《光神化》を発動! 手札から《アルカナフォースVI-THE LOVERS》を特殊召喚!その特殊召喚に対して《地獄の暴走召喚》を使用!!」

 

これによって朋のフィールドにTHE_FOOLが一体、THE_LOVERSが三体の計4体のモンスターが並ぶ。しかしそれだけでは終わらない。

THE_LOVERSの特殊召喚に対して“表”の効果を発動させる。そして残る通常召喚の枠に、THE_LOVERSをリリースして最後の1枚を召喚したのだ。

 

「時を操る最強のモンスター! 来い私の切り札ぁ! 《アルカナフォースXXI-THE WORLD》!!」

 

召喚されたのは朋のデッキで最強の攻撃力を誇るモンスター。もちろんアルカナフォース特有の召喚時のルーレットは《光の結界》によって正位置となっている。

 

「あらら……。」

 

攻撃力3100の登場に茄子は小さく言葉を漏らす。しかしまだ慌てていない。

THE_WORLDの攻撃によって《時の魔術師》を破壊され、2600のダメージを受け3300までライフを削られ、更には《光の結界》の効果によって破壊したモンスターの攻撃力分ライフが回復し、朋のライフが7200になる。だがまだ茄子の顔には余裕があった。

 

「まだ余裕そうだね、茄子さん。けれどもTHE_WORLDの効果はここからよ!エンドフェイズ、LOVERS2体をリリースしてTHE_WORLDの効果を発動!時よ止まれぇ!」

 

ここで発動される《アルカナフォースXXI-THE WORLD》の効果、自身のモンスターを2体リリースすることにより、相手のターンを飛ばしてしまうという凶悪なものだ。

 

「WOOORRRYYYY!!! ドロー! 手札から《セカンド・チャンス》を発動!」

 

ほぼ勝敗が決したと確信した朋はハイテンションにドローしたカードをセットする。

そしてそのままTHE_WORLDで茄子のMs.JUDGEを撃破し1300の戦闘ダメージを与える。これにより茄子のライフは2000、朋のライフは9000となる。

もはや観客たちも朋の勝利は揺るがないと見たのか朋がどうやって決めるのかに注目していた。しかし……

 

「ドロー、ふふ。《BM-4ボムスパイダー》を召喚します。」

 

「あ……っ!」

 

「ボムスパイダーの効果、このカード自身とTHE_WORLDを対象にして発動します。その2枚を破壊!」

 

「こ、この~っ!(お、落ち着け私……大丈夫、まだTHE_WORLDが破壊されただけ! THE_FOOLは戦闘破壊されないし、これで茄子さんのフィールドはがら空き! そう、このまま押しきればいいのよ!)」

 

切り札を破壊されても朋は落ち着いていた。粘る為のTHE_FOOLの存在であり、まだ余裕がある。しかしそんな朋の予想の上を行くかのように茄子が口角を吊り上げる。

 

「何を勘違いしてるんですか? 私のターンはまだ終わりませんよ?」

 

ボムスパイダーのカードを墓地に入れた茄子はそのまま手札に手を伸ばした。

そして1枚のカードを手に取るとゆっくりとした動作でモンスターゾーンに置く。

 

「闇属性、機械族モンスターが墓地に送られたことで私はこのカードを特殊召喚するね。」

 

モンスターが置かれたことでデュエルディスクが作動し、ソリッドビジョンが映し出される。

それは銃の形をした頭と腕を持つドラゴンだった。

 

「《デスペラード・リボルバー・ドラゴン》を召喚……!!」

 

姿を現したのは茄子の切り札、攻撃力2800を誇る機械族モンスターだ。

しかしそれだけではない。その銃のような頭と腕は飾りではないと言わんばかりに音を立てて弾倉部分が回転を始める。そしてガチンという音がして回転が止まると1ヶ所、右腕の銃口から弾丸が発射され、朋のフィールドにいるTHE_FOOLを破壊した。

 

「げぇ……!?」

 

「ふふ、戦闘破壊なんてしませんよ。」

 

フィールドのモンスターは全て破壊され、手札もない朋の顔色は目に見えて悪い。

しかしそれでもデュエリストの端くれ、旗色が悪かろうが降参はしない。

それでもドロー力が弱まっているのか、逆転に繋がるカードを引けず、モンスターをセットしてターンを終える。

 

「私のターン、《サイコロプス》を召喚します。サイコロプスでセットモンスターを攻撃!」

 

「《コーリング・ノヴァ》の効果で《コーリング・ノヴァ》を特殊召喚!」

 

「ならそのコーリング・ノヴァをデスペラードで攻撃!」

 

「このぉ……!」

 

サイコロプスの一撃で破壊されたコーリング・ノヴァの効果でフィールドに2体目のコーリング・ノヴァを出したものの、《デスペラード・リボルバー・ドラゴン》の無慈悲な銃撃によって破壊される。

これにより朋のライフは7600だ。そしてコーリング・ノヴァの効果で朋は《アルカナフォースⅢ-THE EMPRESS》を特殊召喚する。

そして朋のターンに移る。ドローしたのはTHE_FOOL、それを裏側守備で召喚してターンを終えた。

 

「《スナイプストーカー》を召喚。そして……。」

 

茄子がちらりとデスペラードの方を向けばそれに応えるように弾倉を回転させる。

そして今度は2発、銃口から弾倉が発射された。

裏側守備のTHE_FOOLは破壊出来なかったもののEMPRESSを破壊して茄子はターンを終える。

 

その後は茄子のデスペラードを筆頭にした除去によって朋の場を荒らし、じわじわとライフを削っていくことで茄子が勝利を手にしたのだった。

 

 

「勝ったと思ったのになぁ……。」

 

「そこで油断するから負けるのよ。」

 

デュエルを終えた二人は握手を交わしながら反省会をする。

お互いが切り札を出し合った試合だけに、どうして決着がこうなったのかは今後に繋がることだ。

 

茄子曰く、「運を味方につけるだけ」らしいが。

 

 

 

 







・111ピンゾロプロ
…名前の響きはあれだが賭博などとは一切関係ありません。ただし所属アイドルのお仕事は競馬、競輪などでの営業がメインの模様。筆頭アイドルは鷹富士茄子であり、他の面々もギャンブル要素の強いデッキを用いている。
1所属デュエリスト
…鷹富士茄子、藤居朋、兵藤レナ、白菊ほたる

アルカナフォースデッキ(藤居朋)
 
・モンスターカード
アルカナフォースXXI-THE_WORLD×2、アルカナフォース0-THE_FOOL×3、アルカナフォースⅢ-THE_EMPRES×2、アルカナフォースⅣ-THE_EMPEROR×3、アルカナフォースⅥ-THE_LOVERS×3、アルカナフォースXIV-TEMPERANCE×2、コーリング・ノヴァ×3、ジェルエンデュオ×2
・魔法、罠カード
強制転移×3、セカンド・チャンス×2、地獄の暴走召喚×2、光神化×2、光の結界×2、ライトニング・ボルテックス、サイクロン、月の書×2
群雄割拠×2、エンペラー・オーダー×2、逆転する運命


ギャンブルデッキ(鷹富士茄子)
 
・モンスターカード
地雷蜘蛛×3、一撃必殺侍×3、サイコロプス×3、スナイプストーカー×3、BM-4ボムスパイダー×3、きまぐれの女神×2、時の魔術師×2、Ms.JUDGE×2、ルーレットボマー×2、ブローバック・ドラゴン×2、デスペラード・リボルバー・ドラゴン×2、リボルバー・ドラゴン、ゴッドオーガス
・魔法、罠カード
デンジャラスマシンTYPE-6×2、出たら目×2、セカンド・チャンス×2、リバースダイス×3、ダーク・サンクチュアリ、ラッキー・チャンス


・藤居朋 111ピンゾロプロ
…趣味占い、しかし当たることは少ない。アイドルになったのも占いがきっかけらしい。
使用するデッキはアルカナフォースデッキであり、アルカナフォースのモンスター、THE_WORLDによる「ずっと俺のターン!」戦法を使う。
キャラ崩壊被害者の会一号
 
「おっかしいなぁ……占いだとこのタイミングで引けるはずなのに……。」
 
 
・鷹富士茄子 111ピンゾロプロ
…幸運系アイドルで、その名前から年末年始の特番には引っ張りだこの売れっ子アイドル。
ギャンブルデッキを使用し、大きなリターンで勝利を手にしている。同僚の藤居とは仲がよく、一緒に食事を取る姿が目撃されている。
 
「456賽なんて、使わなくても勝てますよ。」




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