この世界では偶像と書いてデュエリストと読み、決闘者と書いてアイドルと読むことがあります。   作:地雷一等兵

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今回の加蓮が使用しているデッキは筆者が身内ノリで開かれるプチ大会でネタとして使ったデッキです。

では本編をどうぞ↓



第4話 “秒読み”の加蓮

 

 

「私の先攻、ドロー。」

 

ユッコと加蓮のデュエル、ドローした先攻の加蓮はニヤリと笑うとドローしたカードを発動した。

 

「魔法カード《終焉のカウントダウン》を発動!ライフを2000払うね。」

 

「早い!」

 

魔法カード《終焉のカウントダウン》の効果によって、残り20ターン、もっと言えばユッコはあと10回のバトルフェイズで加蓮のライフ残り6000を削りきらなくてはならない。

その後、加蓮はモンスターを一体伏せ、カードを1枚伏せてターンを終えた。

残り19ターン。

 

「ドロー!私のターン。場に《星杯に選ばれし者》を召喚して伏せモンスターに攻撃!」

 

「通すよ。モンスターは《素早いモモンガ》、戦闘で破壊されたことで効果を発動するね。私はライフを1000回復。そしてデッキから……2体、《素早いモモンガ》を守備表示で召喚するよ。」

 

加蓮のフィールドに2体のモンスターが追加され、ユッコは場に1枚伏せてターンを終える。

残り18ターン。

 

「ドロー。……場に1枚伏せてターンエンドだよ。」

 

残り17ターンとなり、ユッコの手番。彼女がドローした時、加蓮がトラップを発動する。

 

(トラップ)カード、《威嚇する咆哮》。このカードの効果で裕子ちゃんはこのターン攻撃宣言ができないよ。」

 

「ぐぬぬ……。なら、《サイコ・エース》を召喚してターンエンド……。」

 

残り16ターン。加蓮はドローするとそのまま何もせずにターンを終わらせ、残り15ターンとなる。

そしてユッコのターン。

 

「ドロー!自分のフィールドにレベル3モンスターがいるから手札から《サイコトラッカー》を守備表示で特殊召喚。」

 

手札からチューナーモンスターが登場し周りの観客たちがざわつく。

そしてそれを聞いているユッコは自慢気に笑う。

 

「レベル3《聖杯に選ばれし者》にレベル3《サイコトラッカー》をチューニング!」

 

きゅぴーん!という音と共にフィールドのモンスター2体が光を放ち、観客たちの視線を集める。

それに負けじとユッコも高々と1枚のカードを持つ右手を掲げた。

 

「サイキックに燃え上がれ!このフィールドを駆け抜けろ!唸れサイキック!!シンクロ召喚!《ハイパーサイコライザー》!!」

 

白銀に輝く肉体に、2輪の下肢を唸らせる戦士がユッコのフィールドに姿を現した。

シンクロ召喚によって場は更に盛り上がり、足を止めて観戦する者も出始める。

 

 

「ほう?共鳴を持ちし軍団か……。(なるほど、シンクロ主体のデッキですね。)」

 

「《終焉のカウントダウン》の発動を止められなかった時点でゴリ押ししかないんだ。」

 

神崎蘭子や早坂美玲が席に座り観戦し、

 

「そう……ゴリ押し。デュエルモンスターズが誕生してからずっとあった戦法、パワーカードによる蹂躙。」

 

「そう……。それがもっとも手っ取り早い。でも、うちの加蓮はそれを許すほど温くない。」

 

北条加蓮と同じ事務所、トライアド・プリムスの渋谷凛に神谷奈緒は観客の端で静かに見守る。

 

 

「いけ!ハイパーサイコライザー!サイキックに攻撃だ!」

 

(トラップ)発動!《攻撃の無力化》。ハイパーサイコライザーの攻撃を無効化し、裕子ちゃんのバトルフェイズを強制終了させるよ。」

 

「むむむ……ターンエンドだよ。」

 

攻めの1手を無効化されたユッコはターンエンドを宣言する。これで残り14ターン。

加蓮はドローすると、場に2枚伏せてターンを終える。

残り13ターンとなった。

 

「こっちのターン!今度こそ!」

 

ユッコはドローして1度場を確認する。

加蓮のフィールドには伏せカードが2枚に《終焉のカウントダウン》、モンスターは守備表示の《素早いモモンガ》が2体、彼女の手札は3枚だ。

一方ユッコはドローして手札が5枚。場にはサイコ・エースにハイパーサイコライザー。伏せカードが1枚という状況。

 

「《機界騎士(ジャックナイツ)アブラム》を召喚! サイコライザー!アブラム!いけ!」

 

「通すよ。」

 

2体の攻撃で《素早いモモンガ》は2体とも破壊され効果でライフが回復する。

これで加蓮のライフは9000だ。そして《サイコ・エース》による追撃でライフは8000になる。しかしそれでもまだライフは8000でスタートラインと変わらない。

ユッコはターンエンドして加蓮に手番を渡した。これで残り12ターン。

 

「ドローして、《天使の施し》を発動。3枚ドローして……《魂を削る死霊》と《魂の氷結》を捨てるよ。で、ターンエンドね。」

 

手札入れ替えからのターンエンド。残り11ターン。

ユッコに手番が移り、ドローする。

 

「裕子ちゃんのスタンバイフェイズに割り込んで発動、《覇者の一括》、この効果で裕子ちゃんのバトルフェイズをスキップするよ。」

 

「なっ……!?」

 

徹底した攻撃封じにユッコは驚愕する。手札と場、そして加蓮の顔に目線を移しながら思考を巡らせる。

そしてカードを1枚伏せてターンを終える。これで残り10ターンとなった。

 

「こっちのターン、ドローして……。カードを1枚伏せてターンエンド。」

 

残り9ターン、あと5回とないバトルフェイズでユッコは加蓮の牙城を崩さなくてはならない。

 

「……《サイコ・エース》をリリースして《サイコ・エンペラー》を召喚。3体のサイキック族がいることで1500ポイント、ライフを回復するよ。」

 

「通すよ。」

 

上級モンスター、シンクロモンスターが並んでも加蓮の余裕は崩れない。

それほどこの場面を乗り切る自信があるのだろう。その余裕かましているキレイな顔を吹っ飛ばしてやると言わんばかりにがら空きの加蓮に攻撃を仕掛ける。しかし……

 

「手札から《速攻のかかし》を捨てて効果を発動。その攻撃を無効化し、バトルフェイズを強制終了させるね。」

 

「っ!?……ターンエンド。」

 

速攻のかかしの効果でまたも攻撃をあしらわれたユッコは歯噛みして悔しがりターンを渡す。

そして加蓮はドローしたカードを見るとニヤリと笑う。

 

「魔法カード《一時休戦》を使用するね。お互い1枚ドローして、次の裕子ちゃんのターン終了までダメージはゼロになるよ。」

 

「ぐ、ぐぬぬ……!!」

 

さらに攻撃の手番を減らされた裕子は顔を歪めて悔しがる。

残り7ターンだ。

 

 

「本当にえげつないデッキだなあれ。」

 

「戒めを以て(しもべ)の魂を縛るというならば、翼で飛び越えればよい。」

 

「そりゃ蘭子のデッキなら出来るだろうけどよ。」

 

(((……なんで理解できるんだ?!)))

 

冷静に考察する早坂とそれに返答する蘭子、端から見れば蘭子側の解答が解答になっていないように聞こえるが、デュエリストならぱ理解できるのだ。……恐らく。

しかしながら周りの観客たちは二人の会話、もっと言えば蘭子の言葉を理解できず、解説が現れることを今か今かと待っていた。

 

 

「あと7ターン……。勝てたか……?」

 

「そう、だね……。施しで死霊を落としたってことは無効化系のカードは揃ってるってことだろうし。」

 

「だな……。確か以前の大会の時の堀裕子のデッキにはカウンター(トラップ)はなかったはず。」

 

「とすれば、何もなければ加蓮の勝ちか……。」

 

 

 

「ちぃ……! セットしてた魔法カードオープン!《緊急テレポート》! サイコトラッカーを特殊召喚!」

 

「おっ?」

 

「またチューナーモンスターを?」

 

魔法カードまで使用してのチューナー召喚に周りも目を見開く。

 

「レベル4《機界騎士アブラム》にレベル3《サイコトラッカー》をチューニング!!」

 

2体目のシンクロ召喚に場は再度沸き立つ。

 

「闇を光に変換する乙女よ!サイキックに現れろ!!シンクロ召喚! レベル7、《サイコ・ヘルストランサー》!!」

 

「2体目だ!」

 

「いいぞー!サイキック~っ!!」

 

3体目の上級モンスターがフィールドに出現し、場が沸き立つ。

しかもヘルストランサーの攻撃力はサイコトラッカーの効果により3000という、あの海馬瀬人の嫁“青眼の白竜(ブルーアイズ・ホワイトドラゴン)”に匹敵するほどになっている。

だがしかし、《一時休戦》の効果で攻撃しても意味がないため、ユッコはそのままターンを終える。

残り6ターン。

 

「さて……ドローしてっと。場に二枚セットしてターンエンド。」

 

残り5ターンとなって手番がユッコに渡るものの彼女の顔色は優れない。

 

(かなり厳しい状況……。これはサイキックまずい……。あの場の4枚の伏せカードはまず間違いなく妨害系、あと3ターンか4ターンであの壁を突破か……、行けるかな。あのカードさえ来れば……!!)

 

恐れることなくユッコは瞳に闘志を燃やして山札に手をのせてカードを引く。よくも悪くもデュエルに対してまっすぐなのがユッコの良さだ。

ドローしたカードを見てユッコは笑う。

 

「サイコ・エンペラーをリリース!来い!《人造人間‐サイコ・ショッカー》!!」

 

「え……!?」

 

「おお! あのカードは私が渡したラッキーカード!」

 

サイキック族モンスターではない、しかも事前情報のないカードの登場に加蓮は目を見開いて驚く。そしてさらにサイコショッカーの効果で苦虫をかみつぶしたような顔になりそれまでの余裕が嘘のように消え去る。

サイコ・ショッカーの効果により、お互いはもう罠カードを発動できないのだ。勝利のための手段が罠カードに大きく依存している加蓮のデッキはこの手のカードに滅法弱いのだ。

しかも場にいるサイコライザー、ヘルストランサー、サイコ・ショッカーの攻撃力の合計はサイコトラッカーの効果も合わさり8000、1ターンで加蓮のライフを空にできる。

 

「やっちゃえ!サイキック!!」

 

「そ、速攻のかかしを捨てて無効化!!」

 

手札から速攻のかかしを捨てて難を逃れた加蓮であったが、しかし彼女の手札には覇者の一括などしかなく、壁にできるモンスターは一枚もない。

そうして形成逆転のカードも引けず次のターンの総攻撃で加蓮は敗北したのだった。

 

 

「やられた……。まさかサイコ・ショッカーだなんてね。」

 

「あはは、ふじともちゃんの占いでね。ラッキーカードらしかったからさ。」

 

「へぇ、藤居ちゃんの占いが当たったんだ。」

 

ユッコの言葉に加蓮が驚いたように目を見開く。それもそのはず、藤居朋は占い好きのアイドルとして知られているが彼女の占いが当たったことは数えるほどしかない。

そんなわけで付いたあだ名は「“当たらぬ八卦”の藤居朋」だ。そんな藤居朋の占いで判明したラッキーカードが勝ちにつながったことは加蓮にとって驚きのようである。

そのまま二人は談笑しながら加蓮を迎えに来た凛や奈緒とも親交を深めるのだった。

 

 

 




 
カウントダウンデッキ(北条加蓮)

・モンスターカード
魂を削る死霊×3、速攻のかかし×3、素早いモモンガ×3
・魔法、罠カード
終焉のカウントダウン×3、魔鍾洞×2、強欲で金満な壺×2、強欲で謙虚な壺×2、成金ゴブリン、テラ・フォーミング、一時休戦、天使の施し
メタバース×3、威嚇する咆哮×3、和睦の使者×3、覇者の一括×2、攻撃の無力化×3、ドレインシールド×2、光の護封剣、激流葬
・エクストラ
適当に15枚

・北条加蓮
906(クール)プロ所属の病弱系アイドル。病弱キャラは強キャラという法則に則り、作中でもかなりの強さを誇る。今回はサイコ・ショッカーによって惜敗するも本来のユッコのデッキなら半分詰んでいた。
あと、まだ出てきてはいないが、とあるアイドルの古代の機械(アンティーク・ギア)デッキにも弱い。


ではまた次回でお会いしましょうノシ



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