この世界では偶像と書いてデュエリストと読み、決闘者と書いてアイドルと読むことがあります。   作:地雷一等兵

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今回の話で筆者&友人の行ったデュエルはたったの一回です。
見事に決まりました。

では本編をどうぞ。


第5話 登ってこい

 

 

 

 

さてまだ時間は継続し、アイドル交流会。

ユッコが加蓮とデュエルが終わってから暫く経った時のこと。会場の隅にいる森久保が騒ぎを聞きつけたことから始まる。

 

 

「あぁん?!やんのか!」

 

「上等だゴラァ!!」

 

声だけで分かる男同士の言い争い。それもどちらも語気は荒くかなり苛立っていることも容易に想像ができる。

森久保もその声を聞き付けて物陰から覗き込むと、二人の男性が睨みあっていた。二人とも顔がやや紅潮しており、側には空になった酒類の缶が置いてあることからも酔っていると分かる。

 

 

 

「うっせんだよ、この節穴がよぉ! 」

 

「んだゴラァ! 茄子さんの魅力もわかんねぇダボが何を言ってんだテメェ!」

 

「……ひ、ひぃ……も、森久保は、退散しますぅ……。」

 

掴み合いの喧嘩を始めそうなほど険悪な空気になり、周りの人達も目線を合わせないようにして顔を背けている。酒に飲まれているのか次々と様々なアイドルの名前を出して二転三転していく男たちの言い争いの話題。しかし場の空気は一向に良くならない。

そんな状況になり、森久保も巻き込まれないようにその場を後にしようとした。だが、その森久保の足が次の男の言葉で止まる。

 

「堀裕子とかいう訳わかんねーのよりも、茜ちゃんのが可愛いに決まってんだろ!」

 

「3199プロのアイドルなんざ比較に出すなよ! マトモな奴がいねぇじゃねぇか!」

 

酒に酔っているからか、周りへの迷惑を考えずに他のアイドルのことも口に出す二人。

その言葉が徐々にヒートアップしていくかと思われたときに森久保が言葉を投げ掛ける。

 

「あ、あの……取り消して、ほしい、ですけどぉ……。」

 

男たちのすぐ近くまで近寄り、震える声を絞り出して告げる森久保。

視線は泳いでおり、おどおどとしている。自分を奮い立たせる為か拳を力強く握りしめており、爪が食い込んでいる。

 

「あ?誰だよ?」

 

「こいつ、3199プロのアイドルか?」

 

「も、森久保の、ことは、バカにしてもいいです……けどぉ、でも、ユッコさんや、亜季さん、里奈さんの、ことを、バカにしたのは、取り消して、ほしいんです、けどぉ……。」

 

ぷるぷると小刻みに震える小さな体、それでも目をしっかりと男たちに向けていた。

しかし……

 

「だまってろチビ!」

 

「あぅ……!?」

 

森久保の言葉は届かず、男の一人によって突き飛ばされら尻餅をついてしまった。

さすがにやり過ぎた、と周りの人達も思ったのかざわざわと騒ぎになる。

 

(やっぱり、森久保は、森久保はぁ……。)

 

騒ぎの間も森久保は尻餅をついたまま俯いていた。

目元には涙が滲み、ぐすぐすと泣いている。そんな森久保を見た二人の男はざわざわと騒ぎが大きくなり始めているその場から逃げ出そうとしたのだが、そうは問屋が卸さなかった。

背後から彼らにそれぞれ肩を組むように腕が回されたのだ。

 

「おい……、アタシんダチになにしてんだ?」

 

「それもアタシの事務所の後輩ぽよ~♪」

 

現れたのは向井拓海と藤本里奈だった。元特攻隊長、悪鬼のような形相で森久保を突き飛ばした男を睨み付けている。

そしてふじりなも、口調こそ笑っているもののその瞳は全く笑っていない。

 

「お、お、俺らはわるくねぇし!」

 

「そうだよ! 俺らが話してたら、そこのチビが勝手に……!!」

 

「嘘っぱち言うなー!」

 

「俺らは見てたんだかんな!」

 

拓海とふじりなの腕を払いのけて言い逃れしようとした二人に対して周りの人たちから野次が飛ぶ。

それによって拓海の睨みつける瞳はますます鋭くなり、ふじりなの眼付も猛禽類のような冷徹さを見せている。その様に恐怖を抱いたのか、男二人はデュエルディスクを腕に嵌めた。

そんな二人を見て拓海もふじりなもデュエルディスクを起動させる。

 

「初めっからそうしろよ。そっちのが手っ取りばえぇんだからよ。」

 

「やるならマジだかんね? ハンパなデュエルじゃケガするだけじゃん?」

 

「じょ、上等だよ。」

 

「ふん、か、かか、かかって来いよ……。」

 

睨みつけてくる拓海とふじりなの眼光に男二人の声は震えている。そんな男二人に拓海がこう言い放った。“ハンデをくれてやる”と。

 

「は?」

 

「こっちはライフ4000、そっちは倍の8000でいいぜ。」

 

「な、舐めてんのか?!」

 

「あん? どうせそうしねぇと速攻でおわんだから気にすんなよ。」

 

男たちの言葉にも拓海は強気だった。必ず勝てるという確信を持った瞳をしている。それはふじりなも同じようで一点を見つめたまま黙っている。

 

「い、いいぜ。あとでほえ面かくなよ。」

 

「行くぞ……。」

 

「「「「デュエル!!」」」」

 

四人一斉の掛け声で始まったデュエルは拓海が口火を切る。

 

「ドロー! 行ってこい、《ジェムナイト・ガネット》!! そんでフィールド魔法《バーニングブラッド》発動!!」

 

いきなりの速攻。フィールド魔法の効果により炎属性モンスターの攻撃力は500ポイント上昇し、ジェムナイト・ガネットの攻撃力は2400と、上級モンスター並みになっている。

その後、拓海はターンエンドを宣言し手番は男Aに渡る。男Aはドローすると場にモンスターをセットし、カードを一枚セットしてターンエンドを宣言した。

 

「アタシのターンだぽよ~! ドロー!モンスターを一体セット、カードを二枚セットしてターンエンドぽよ。」

 

「なら俺のターンだな。《サファイアドラゴン》を召喚してそっちの伏せモンスターに攻撃!」

 

男Bの召喚したサファイアドラゴンによってふじりなのセットしていたモンスター《UFOタートル》は破壊され、効果を発動する。

その効果でふじりなは《プロミネンス・ドラゴン》を特殊召喚し、さらに魔法カード《地獄の暴走召喚》を発動した。そうしてふじりなのフィールドにはバーニングブラッドの効果によって攻撃力2000のモンスターが三体並び、その影響を受けて男Bのフィールドにもサファイアドラゴンが三体並ぶ。だが……

 

「アタシんターン!! 《爆炎集合体ガイア・ソウル》を召喚!! そのままテメェの伏せモンスターを攻撃!」

 

攻撃力2500になったガイア・ソウルの攻撃により、男Aの伏せていた《巨大ネズミ》を破壊する。しかし効果が発動し場に二体目の《巨大ネズミ》を特殊召喚した。

だが……

 

「おらもう一丁!!」

 

特殊召喚された巨大ネズミをジェムナイト・ガネットで破壊し、今度も巨大ネズミを特殊召喚する。そして拓海はエンドフェイズを迎える時に魔法カード《火霊術‐「紅」》を使用し強化されたガイア・ソウルの攻撃力2500分のダメージを男Aに与える。

これで男Aのライフは4550というダメージを受けて残り3450となった。

 

「ぐぬぬ……俺のターン。モンスターを一体セット。《巨大ネズミ》を守備表示に変更してターンエンドだ。」

 

「アタシのターン! セットカードオープン!《ブレイズ・キャノン・マガジン》!そしてそれを墓地にリリースして……コイツを召喚ぽよ~!」

 

キュピーンと音がしそうなほど光を反射するカードを掲げてふじりなは宣言する。

 

「激アツマジヤバな悪魔っ!今ここに出てこい!アゲアゲで行くよー!《ヴォルカニック・デビル》!!」

 

特殊召喚されたヴォルカニック・デビルの攻撃力は強化分も含めて3500、今男たちの場に出ているモンスターは1900のサファイアドラゴン。

男Bはこの時敗北を覚悟した。

 

「ヴォルカニック・デビルでサファイアドラゴンに攻撃!」

 

「がっ!?」

 

まずは一体目のサファイアドラゴンが破壊され戦闘ダメージの1600が与えられる。さらにヴォルカニック・デビルの効果が発動して、男Bのフィールドのモンスターが全て破壊された。

そうしてがら空きになった男Bに対してふじりなはプロミネンス・ドラゴン三体の総攻撃を仕掛けて6000のダメージを与える。これでこのターンの合計は7600ダメージ。男は耐えきったと、驚愕を圧し殺して安堵したがそれはまだ遅い。

 

「エンドフェイズ、《プロミネンス・ドラゴン》の効果発動ぽよ☆相手ライフに500のダメージを与えるよ~!」

 

「なぁ!?」

 

ふじりなは男Bに500ポイント、男Aに1000ポイントのダメージを与えてターンを終える。

これで男Aとライフは残り2450となった。ふじりなのターンが終わるも、男Bは既にライフがゼロになっているため、手番は拓海へと渡る。

 

「ドロー!おっしゃぁ!魔法カード《一族の結束》を発動! これでアタシんフィールドのモンスターは攻撃力800アップ、バーニングブラッドと合わせて1300のアップ!!」

 

「なに?!」

 

「行くぜオイ! アタシは《ジェムナイト・ガネット》をリリース! 切り札登場!エンジン全開だ、フルスロットルで回せよ!! 《炎神機(フレイムギア)‐紫龍》!!」

 

拓海が召喚したのは炎族の最上級モンスター、その攻撃力は強化も合わせて4200を記録している。

そんな大型切り札の登場に男Aは目を向いて驚愕している。

 

(だ、大丈夫だ、まだ、耐えられるはず、壁は2体いるんだし、片方は《素早いモモンガ》、これでライフを回復しつつ耐えて逆転まで……。)

 

「耐えきれると思ったろ。残念だったな。」

 

「は……?」

 

「この《炎神機‐紫龍》には貫通効果がついてんだよ! テメェの《巨大ネズミ》の守備力は1450、こっちの攻撃力は4200!」

 

「な、なっ……?!」

 

想定の外にあった貫通効果の存在に男Aはたじろぐ。

そうして炎神機‐紫龍の攻撃によって男Aのライフもゼロになり、決着した。

一瞬での決着に周りもざわつきを抑えられないでいる。

 

「うっし……。アタシらの勝ちだな。」

 

「とりあえず、ののっちに謝ってもらおっかな☆」

 

「ぐ、ぬぬぬ……。」

 

デュエルで敗北した男AとBは視線を泳がせている。

ふじりなと拓海は森久保を間に挟みながら男二人を睨み付け、無言の圧をかけていた。

 

「す、すまん……。」

 

「突き飛ばして、悪かった……。」

 

男AとBは一言そう謝ると一目散にその場から走り去った。

その間も森久保はべそかいており、それを見かねた拓海が森久保の頭に手を乗せる。

 

「なんで、泣いてんだ?」

 

「……うぅ……。」

 

拓海の問い掛けに森久保は俯いたままで何も言わない。

 

「……尻餅ついたのが、まだ痛ぇのか?」

 

「……ぐす……。」

 

その問い掛けを森久保は首を振って否定する。

 

「……突き飛ばされた自分が情けなくて泣いてんのか?」

 

「……うぅ……えっく……。」

 

二つ目の問い掛けも森久保は否定する。

それを見て納得がいったように拓海は頷き、森久保と視線の高さを合わせるようにしゃがんだ。

 

「悔しかったんだろ? 仲間を、ダチをバカにされたのに、何も出来なかったことが。」

 

「……は、い……。」

 

今度の問い掛けを森久保は肯定する。手で次々と流れてくる涙を拭いながら、何度も、何度も首を縦に振って。

そんな森久保の姿を、優しい目で見守っていた拓海はパンっと手を叩いて立ち上がると、一際乱暴に森久保の頭を撫でた。

 

「ふわっ?!…………?」

 

「その気持ちがあんなら、強くなれるさ。アタシんプロデューサーの受け売りだけどな。ダチさえいれば、それだけで戦う理由になる。そんでもって、ダチの為に戦える奴は、どこまでも強くなれるってな。」

 

それだけ言うと拓海はわしわしと撫でていた手を退けて背を向けた。

ひらりと特攻服の裾が風をはらんで舞い、森久保の鼻先を撫でる。そして拓海は右手の人差し指を立てて、振り向かずに言葉を紡ぐ。

 

「お前なら登ってこれる。さっさと上がってこい、森久保ォ!」

 

それだけ告げて後は何も言わずに拓海はその場を去っていった。

そんな彼女の後ろ姿を見つめていた森久保はそれまできつく握りしめていた拳をほどき、胸に当てるのだった。

 

 

 

 







・炎族デッキ(向井拓海)
 
・モンスターカード
炎神機‐紫龍、爆炎帝テスタロス、炎帝テスタロス×2、火口に潜む者×3、炎帝近衛兵×3、ジェムナイト・ガネット×3、爆炎集合体ガイア・ソウル×3、ラヴァル・ランスロッド×3、火炎木人18×3、炎の精霊イフリート×3、名匠ガミル、ヴォルカニック・エッジ×3
・魔法、罠カード
一族の結束×3、真炎の爆発×3、火霊術‐「紅」×3、バーニングブラッド×2

向井拓海
…081プロに所属する元特攻隊長のアイドル。バーニングブラッドによる強化を活かしたハイビートデッキを使う。
 
 
 
炎属性デッキ(藤本里奈)
 
・モンスターカード
ヴォルカニック・デビル×2、プロミネンス・ドラゴン×3、バルキリー・ナイト×3、ヴォルカニック・ロケット×3、ヴォルカニック・バックショット×3、ヴォルカニック・バレット×3、ヴォルカニック・エッジ×3、炎帝近衛兵×3、UFOタートル×3、ヴェルズ・オ・ウィスプ×3
・魔法、罠カード
ブレイズ・キャノン‐トライデント×3、ブレイズ・キャノン×3、地獄の暴走召喚×2、ブレイズ・キャノン・マガジン×3

藤本里奈
…ユッコらと同じ3199プロ所属のアイドル。ヴォルカニックを中心としたバーンビートデッキを愛用する。
趣味はツーリングであり、時おり向井拓海をはじめとしたバイク仲間と走っている。



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