伊吹葵は勇者である   作:水歩

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伊吹楓と交互に更新していきます。


プロローグ

2015年7月30日その日は、星の良く見える静かな夜だった。

福岡の伊吹葵は散歩がてらに護国神社の境内にいた。

「今日は星が良く見えるな。はぁ、棗と一緒に見たかったな」

葵は幼馴染を思う。

葵の幼馴染である古波蔵棗は、現在沖縄にある祖父の家へ帰省している。

「それにしても、今日は何も起こらないな」

ここひと月ほど毎日毎日何かしらの災害が起こっていたのだ。

葵が、本殿まえにたどり着くと、見上げていた空に違和感が生じる。

「ん?なんだ?あれ?」

先ほどまで空できれいに輝いていた星が不気味にうごめき始めたのだ。

そのうごめく星々を見つめていると、それは少しづつ近づいてきていた。

 

―そして、絶望が落ちてくる。―

 

星に見えていたものの一つが葵の目の前に落ちる。

そして、葵が危機を感じ逃げようとする前に体当たりで本殿の中まで吹き飛ばされる。

「…ぐぅぅ…、棗…」

あまりの衝撃に薄れそうになる意識の中で幼馴染を思う。

そして、倒れ伏した状態から手を伸ばすと、本殿に飛ばされた時に出てきたのであろう刀があった。

葵は藁にも縋る感覚でその刀を握ると、身体に力が戻りかつ力が湧き出してきた。

「これ…は…」

立ち上がった葵は、本殿から出ると、さっき目の前にいたものを探す。

すると、境内の真ん中に一体だけいた。

葵は本殿の端で踏み切るとその敵まで肉薄し、身体に染み付いた動きで流れるように刀を振り下ろす。

すると、斬られたものは一刀で消え失せる。

葵はそれを確認すると、境内を駆け外へと出る。

 

―そこは、地獄であった―

 

境内には一体しかいなかった敵が、一歩外に出ると無数に沸いていた。

道路のそこここに血だまりができていた。

「うそ…でしょ…?」

そこで葵の意識は沸騰する。

「あああああああああ!」

そして周囲の敵を切り払う。

葵は生き残った人々をなぜか敵が入れないらしい護国神社に集めていった。

 

 

3年後、襲来してきた敵はバーテックスと名付けられ、護国神社に祀られている英霊によって福岡は結界で覆われバーテックスから守られていた。

勇者として覚醒した葵は福岡を守るただ一人の勇者として福岡城に拠点が造られそこに通っていた。

「もう3年もたつのか…」

襲来された後すぐは福岡市全体が結界の中だったのだが、一人では守り切れず現在は中央区と城南区のみの広さに縮小してしまっている。

人口も50万人から30万人まで減少してしまっていた。

「じゃ、今日も通信するか」

福岡以外にも沖縄と四国がバーテックスから守られている土地で、特に四国が安定していることが分かっている。

葵は、福岡城に建てられた庁舎の通信室へ向かう。

「伊吹君、ちょっといいかな?」

すると、途中の通路で声をかけられる。

「どうしました?岩本さん」

岩本と呼ばれた厳つい大男が答える。

「ああ、バーテックスが四国に攻撃しだした」

「な!?」

3年前から補佐をしてくれている信用できる人間からもたらされた情報に耳を疑う。

「四国は大丈夫なのか?」

その問いに岩本は軽く答える。

「大丈夫大丈夫損害はなさそうだ」

その言葉に葵は少し安心する。

「分かった。これから沖縄と通信するからなにかあったらその後で」

それに頷き岩本はどこかへと向かう。

それを見守ると、葵は通信室の戸を開けて中に入る。

葵は通信室に入ると通信機を起動する。

数秒後沖縄と繋がる。

そのまた数秒後応答が来る。

『こちら沖縄』

「や、久しぶり棗」

通信の相手は幼馴染の棗だった。

3年前の襲来の日沖縄にいた棗は沖縄で神威の宿ったヌンチャクに勇者に選ばれていた。

「そっちはどう?」

『またちょっと範囲が狭くなった』

「そうか、ならそろそろ四国に移動する計画を練らないとね」

ふたりは、沖縄と福岡を放棄し四国に逃げる計画をたてていた。

『分かった。敵が少なくなってきたら決行で』

「ああ、でもそろそろ時間が少なくなってきてるから早めにやろう」

そう言って通信を切る。

 

 

その後は、小規模な襲撃に対処したりと忙しく過ごしていた。

そして、バーテックスは2019年3月まで少なくなることはなかった。

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