週末、勇者とひなたは街に繰り出していた。
「で、葵さん連れてって欲しいところとかあります?」
「いや、地理に慣れてなくてどこに何があるか分からないから、街を案内して?あ、でも大きい書店なんかを教えてくれると嬉しいかな」
先日のバトルロイヤルの優勝特典で葵は街の案内を頼んでいた。
「なら昼を摂った後だな。書店は杏に任せよう」
「分かりました。任せてください!」
葵の提案に若葉が答え、杏に任せる。
任された杏は少し胸を張って意気込む。
恐らく読書好きが増えて嬉しいのだろう。
「そうか、なら後でおすすめを教えてもらおうかな」
葵が杏に笑いかけて頼む。
そして、四国に最近来た二人が良く食べるので、がっつり食べられる骨付き鳥の店に来ていた。
そこで、やはり若葉と球子が自身の陣営を増やそうと口論になる。
しかし、葵も棗もどちらも好きだと答える。
そしておおむね満足して店から出た。
八人はその後近くのショッピングモールへと向かった。
そこでは、棗の服を葵以外の皆で選んでいた。
葵が店の外の通路で待っていると、若葉が一人で店から出てくる。
「ん?どうした?」
「いや、皆が葵さんも服を選んできて、あとで披露しようと言い出してな。私はその伝令と言うわけだ」
「そうか、正直ファッションセンスに関しては自信皆無なんだが…」
「そうか、なら誰か一緒に行こうか?」
それを受けて若葉が提案するが、葵は断る。
「そうか、なら後で合流しよう」
「了解」
話が終わると、葵は男性向けの洋服店に向かった。
数分後、葵は下は濃紺のジーパンに赤いシューズ、そして上は黒と白のTシャツに薄手でカーキ色のパーカーという動きやすい格好になっていた。
服装が決まり、他の服を物色していると、若葉から呼び出しの電話がかかって来た。
『葵さん、決まりました?』
「ああ、決まったよ、どこに行けばいい?」
『じゃあ、さっきの店の前に来てくれるか?』
「分かった。すぐにいくよ」
葵はそう言って電話を切ると指定された店に向かう。
店の近くに着くと、棗以外の六人が通路に出ており、球子が手を大きく振って葵を呼んでいた。
「おーい、葵ー!」
葵はそれに答えるように胸の前で小さく手を振って皆に近づく。
すると、葵の格好に思い思いの感想を述べる。
その感想をまとめると、ほとんどが動きやすそうと言っていた。
「まあ、似合っているしいいんじゃないですか?」
そう、ひなたがフォローする。
「それより棗さんを見てびっくりしないでくださいよ?」
そう釘をさされる。
「じゃあ、棗さん出てきていいですよー」
「ちょっと恥ずかしいのだが…」
ひなたが呼ぶと、そう言いながら棗が出てくる。
その瞬間、葵は硬直する。
(え?なにこれ?印象全然違うんだけど!?可愛い可愛い可愛い可愛い!)
葵は思考の中で発狂していた。
棗は、青っぽい白の膝上丈のワンピースを着ており、いつもの動きやすい服の時と違っていた。
「葵、どう…?」
葵は、その棗の声に我に返る。
「あ、ああ、すごくいいと思うよ。すごい可愛い」
「ありがとう…」
葵のその言葉に棗は顔を赤くし、うつむく。
そんな二人の様子に周りにいた六人はニヤニヤと見守っている。
「じゃ、次は本屋にいこう?」
いたたまれなくなったのか葵がそう提案する。
「そうですね、そろそろ行きましょうか」
その提案に杏が同調する。
その後、杏のおすすめの書店に寄り、丸亀城にある寮に戻った。
寮に戻り、解散しようとすると、杏が全員を呼び止める。
「あの、ちょっといいですか?」
すると、千景、棗、葵以外の五人が、三人に一人づつ一枚の紙を差し出す。
「卒業証書です。お三方は年齢的には中学校卒業なので形式だけでもと思って」
「まあ、教室は変らないんだけどな」
三人は、そんな行事があることすら忘れていたが、受け取り礼を言う。
「皆、まだ会ってそんなに経ってないのにありがとう」
「ありがとう…」
「あり、がとう…」
そして、手作りの卒業証書の授与を終えると、皆寮の部屋に帰っていった。
ファッションの描写が少ないのはご容赦ください。