伊吹葵は勇者である   作:水歩

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変化

葵たち勇者が花見の約束を交わした日の夕方、葵たち七人の勇者のスマホが樹海化を知らせる警報音を響かせた。

数度の出撃で樹海化の瞬間を何度も感じているが、葵はどうにも違和感がぬぐえず身震いする。

戦装束をまとった勇者が集まり、迎撃に備える。

葵たち勇者が立っている比較的内地寄りの場所からでも壁の外にいるバーテックスの大群が見えていた。

すると、球子がつぶやく。

「なんだよ、今までにない事態とか言ってた割には大したことないじゃん」

この数日前、ひなたが新しく神託を賜っていた。

―次の襲来で今までにない事態が起こる―と、、、

球子はおそらく、今までにない事態は今までにないほどの量の敵が攻めてくると解釈していたのだろう。

実際、壁の外に見えているバーテックスの量は、これまでよりも多いが、しかし十分の一ほど増えた程度のように見えていた。

球子がそう言って肩の力を抜くと、そこに若葉が注意を投げかける。

「油断するなよ、球子。確かにあまり多いという感じは受けないが、それでもこれまでより多いんだ」

「分かってるよ、でもこっちも二人増えたんだし大丈夫でしょ」

若葉へ葵と棗のほうを見て返答する。

その言葉を合図に、勇者はそれぞれの武器を構える。

若葉は鞘付きの太刀を。

友奈は手甲を。

千景は身の丈ほどもある大鎌を。

球子は腕にワイヤーでつながれた旋刃盤を。

杏は片手で扱える大きさのボウガンを。

棗はヌンチャクを。

葵は頭から膝ほどの長さの野太刀を。

それぞれが臨戦態勢に入るが、杏が全体に声をかける。

「あの!皆さん!」

杏の声に六人の勇者が振り向くと、杏が一つの提案をする。

「今回は切り札はなしにしましょう」

それに千景が真っ先に反応する。

「それは、どうして?」

「元々大社からもあまり使わないように言われていましたし、本当に危険かもしれませんから」

勇者の面々はそれにうなづき、各個人の持ち場に広がる。

七人は、防衛のための陣を敷いた。

後方に杏、棗、千景の三人が待機し、他の四人が前方に展開し、杏が全体を見ながら指示を出し、前衛で疲れが見えだした人から順に交代させていく。

戦闘が始まり、星屑と呼ばれる一番弱いバーテックスを半分ほど消したところで、バーテックスに異変が現れだした。

それは、未だに後方にいた星屑が集合し、合体を始めたのだ。

これまでは、融合を始めようとするものがいたら、杏が狙撃していたのだが、杏の有効射程外で融合を始められ、一体の進化体が完成する。

そして、杏は狙撃をその進化体に集中せざるを得ず、一際おおきな進化体が三体生まれてしまう。

それを見た球子が切り札を使おうとするが、杏が制止する。

杏が宿すのは雪女郎。

雪と氷の具現化であり死の象徴である。

「行きます!」

杏が合図し、ボウガンを上に向けると、周囲が凍り始める。

勇者たちは寒い程度で済んでいたが、バーテックスはそうはいかない。

星屑はほとんどが凍り付き、地面に落ちた衝撃で粉々になっていく。

しかし、大型の三体はところどころに霜がつくだけで、ほとんどダメージが入っていない。

それに気づいた葵たちは星屑を早々に倒し大型の三体に集中攻撃を加えようと動き出す。




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