千冬「各々思うところがあるだろうが良くやってくれた。」
帰りのバスの中で、千冬に言われた言葉を思い出していた一夏。その顔に陰がさす。
一夏(あんなに、辛そうに言われても、な…)
他の専用機持ちは、昨日の疲れがとれなかったのかぐっすり眠っている。別のバスにいる鈴と簪も同じ状態であった。束はというと目が覚めるなり、クロエとシャルを連れて何処かへ行ってしまった。千冬が彼女から聞いた話によると、「おー君の持ち物が何一つ壊れていなかった。つまりまだ生きてるかもしれないよね!」ということだそうだが、オカルトを信じるほどに異常を来している束の様子は明らかにそれにすがりついている風に見えたらしい。
一夏(黄牙、俺、頑張ってお前に追い付いて、みせ、る…)
睡魔に勝てなかったのか、眠りにつく一夏。車内も『黄牙が死んだ』という事実を突き付けられたことで静かなのもあり、すぐに寝付けたようだった。
―――――――――――――――――――――――――――――
IS学園に到着し、臨海学校から戻った生徒達はそれぞれの自室に戻っていった。翌日、『非常事態に運悪く巻き込まれて死亡した』黄牙へ弔砲と黙祷が捧げられた。このような場でも不謹慎な輩はいた。女尊男卑の思想に染まった生徒である。「あんな男など死んで当然だ」、「前から気に入らなかった」、「逆にせいせいした」等と口々に話していた。その様子が千冬に筒抜けであった為、問答無用で懲罰房に叩き込まれ反省文1万枚を書かされる事となった。
一夏「あいつが何をしたってんだ!!」
屋上に行って誰もいない空気に怒りをぶつける。
箒「一夏…。」
一夏「あいつは、皆を守って死んじまった…それすら知らない奴に、あいつの何がわかるっていうんだ!!」
そんな様子が見ていられなくなったのか箒がそっと抱きしめる。
箒「言わせておけばいいんだ。あんな戯れ言しか垂れない連中。」
一夏「…箒は悔しくないのかよ?」
少し落ち着いたのか冷静さを取り戻した一夏が質問する。
箒「…悔しくないわけがない。だが、星守を死なせたのはあいつの頼みを聞いた私にも責任がある。」
一夏「なら!」
箒「だがな、それで言い返したところで奴らに何か響く訳じゃない。どうせ媚を売ったんだ等という馬鹿げたことを言われるだけだ。」
一夏「……」
箒「それが許される世界が嫌なら、私達で変えるんだ。黄牙が目指した世界を私達で作り出すんだ。」
一夏「…黄牙が世界を変えるなんて簡単だって言ったのが今になって分かった気がする。」
鈴「なら、それに乗らない手は無いんじゃない?」
いつから聞いていたのか、鈴達がいた。
一夏「いつの間にいたんだよ。」
セシリア「最初からですわ。」
ラウラ「鈴の発案でな。鈴g「余計なこといったらすりおろすわよ?」…」
箒「簪はどうした、一緒にきてそうなものだが?」
鈴「今は姉のところよ。…一番キテそうだったから。」
箒「…それもそうか。」
ラウラ「それに、世界の情勢が良くない方向に傾きつつあるからな。」
ラウラの発言に一斉にその方向へ顔を向ける一夏達。
一夏「どういうことだよ、それ?」
ラウラ「…どうやら、お父様が亡くなったことで、女性権利団体の活動が過激化しているらしい。」
4人「「「「!?」」」」
ラウラから投下された爆弾発言に驚愕する5人。
鈴「ねえ、それの最終標的さ…」
セシリア「…あまり当たってほしくない予想が現実になりそうですわね。」
一夏「…俺、か。」
ラウラ「ああ。女尊男卑の思想に染まった生徒達に声をかけてお前を殺させる様なこともしてくるだろうからな。今後はお前の護衛につく。すでに学園長からの許可もとってある。…気を付けておけよ。」
一夏「分かった。」
ラウラから忠告を受けた一夏。
鈴「さ!お昼食べちゃいましょ!」
セシリア「ふふ、そうですわね。」
鈴(それと箒?一気に距離近くなったわね?)
箒(な、何を言い出すんだ急に!?)
鈴(今日は大人しく退いてあげるけど、今度からは容赦しないからね?)
箒(!…臨むところだと言わせてもらおう!)
小声で話す箒と鈴。
ラウラ(むー…)
セシリア(むくれないでくださいな…)
子供と母親のように見えるセシリアとラウラ。
一夏(ああ、この感じ、好きだな。黄牙も居て欲しかったなあ…)
もういない友に思いを馳せる一夏。安寧の日常さえこれからの戦乱に巻き込まれていくのをこの時はまだ実感できずにいた。
次回、面上げる月の白龍。
次の章は誰の視点から?
-
一夏
-
束
-
シャル・クロエ
-
黄牙