ノアの客室で暇をもて余している黄牙。ジェミナイズ、キャンサード、ピスケガレオンの覚醒からすでに10日が経過していた。
黄牙「あの後チェルシーさんに俺の存在はここにいる人以外に話したらダメって言うことを約束してもらったし、定期ブリーフィングは明日…ならやることは…」
客室から外に出ようとした瞬間
warning! warning!
大きな揺れと共に、警戒のアラートが鳴った。すぐ後に艦内放送で
ナターシャ『ノアに侵入者が1人入り込んだわ!皆、警戒して!この揺れ方普通じゃない!!』
ナターシャが伝える。
黄牙「女権団にバレた…?いや、それだったらもっと大人数で制圧にくるはず。…たばちゃんのところにもシャルとクロエがいる、けどやっぱそういうことか…?」
廊下で独り言をブツブツ喋っていると
オータム「ファング!」
オータムに呼び掛けられた。
黄牙「何で今ここに?」
オータム「ジェミナイズを借りに来た!」
黄牙「アラクネは?」
オータム「普通にあるが、もしもの保険として、な?」
黄牙「…分かった。気をつけて。」
そう言ってオータムに双子座のマークの指輪を渡す。
オータム「あんがとよ!」
そう言って走っていく背中を見送る黄牙。そのあと自分の三日月のネックレスを見て
黄牙「…初陣になるかもな。」
スコール「流石にそれはダメよ?」
黄牙「!?」
いつの間にか背後にいたスコールに驚きを隠せない黄牙。
黄牙「ダメってどういう…」
スコール「そう易々と貴方の生存を明かすわけには行かないけど…もし侵入者が彼女ならちょっといい案があるんだけど。」
黄牙「?」
何かを耳打ちされる黄牙。
黄牙「スコールさん…本気で言ってます?」
スコール「本気よ。辛いのはわかるけど、すこーし我慢してね?」
黄牙「…とりあえずちゃちゃっと終わらせましょう。」
スコール「ちゃちゃっと終わるかは向こうの反応次第、何だけどね。」
黄牙「…終わったら一回殴らせてください。」
スコール「…ええ。」
からかうようにするスコールに少しムカついた黄牙。ある準備のために二人はある場所へ向かった。
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オータム「エム!」
エム「来たか。ちゃんとあれは有るんだろうな?」
オータム「借りてきたぜ?」
エム「ならいい。…そろそろ来るぞ。」
ゆっくりと侵入者の姿が表れる。
オータム「なんだ…あれ…!!」
エム「あいつの機体に似ているがアレの方が性能が絶対的に上のようだ…!」
相手を威圧するかのような大きな黒い羽とほぼ同じ場所から生え出た白い羽。肩や膝など体の至るところにある黄色のトゲ。
エム「さしずめストライクヴルム・ダーク、と言ったところか…!」
???「…やっぱりいるんだね、ここに。」
エム「!?(勘づかれた…まさか、奴は!)」
その一言に一瞬硬直するエム。
オータム「テメエ…いったい何のようがあって入り込んでやがんだ!!」
???「用事?…そんなの1つだけだよ。」
顔の部分のバイザーを解除し、誰が操作しているか明らかになる。
束「返してもらいに来たよ。私のおー君を!」
そう高らかに宣言するはISを作った天災、篠ノ之 束だった。
エム「貴様には悪いが、それは果たせない約束だ!」
キャンサードを纏って束に突っ込んで行くエム。オータムもそれに続くようにしてアラクネを装着する。
束「ま、そうだよね。だからさあ…!」
カニキリを振り下ろそうとしたエムの腹に思い切り拳を喰らわせる束。
束「力ずくで取り戻す!」
オータム「エム!…野郎ッ!!」
距離を縮めアラクネの足を使って刻もうとするオータム。束はそれを受け止めてエムへと放り投げる。
エ、オ「「ぐあっ!!」」
束「蟹座も覚醒してたなんて…でも2対1で私のダークヴルム・ノヴァをどうにか出来ると思ってるの?しかも片方は
エム「随分と言ってくれる…!」
オータム「…なら用意してやろうじゃねえか!」
オータムがアラクネを解除し、指輪をはめて天に掲げた。すると白と黄色のピエロのような機体が表れる。
オータム「いい感じに馴染むなァ、あいつから託された機体はよォ!!」
エム「…それは同感だがテンションが上がりすぎだ。」
束「双子座まで…へえ…」
肩を震わせ怒りを滲ませる束。すかさずオータムが煽る。
オータム「やっぱ伝説の事をまったく知らせなかったような薄情者にゃあ、あいつは渡せねえなあ!!?」
束「……だ。」
オータム「聞こえねえぞ!もっと腹から声だしてみやがれ、クソ兎!!」
束「誰が薄情者だあああああああああ!!!」
束がオータムの煽りにぶちギレ、オータムの方に突っ込んでいく。それを見てニヤリと笑うオータム。そのまま外まで誘導するかのように逃げていく。
エム(まったく、効果覿面だが生きて帰ってこれるのか……ん?)「なんだ、スコール。」
スコール『エムー?ちょっとやることができたんだけど。』
エム「…篠ノ之束に関することか?」
スコール『あら、やっぱり侵入者は彼女なの。それなら話は早いわ。ブリッジまで連れてきてくれないかしら?』
エム「………」
スコール『エム?何かあったの?』
エムの沈黙にスコールが聞いてくる。そして
エム「お前の彼女がバカやらかして今頃外だ。」
スコール『……あの娘ったらもう…ジェミナイズの反応は追えてるから私が指定するポイントに誘導させて。』
エム「分かっている。」
スコール『…頼むわね。』
エム「尻拭いなどもう慣れた。切るぞ。」
スコールからの通信を切った後、目的ポイントのデータが送られてくる。
エム「やれやれ…これをオータムに送る…いや、少し灸を据えてやるか。」
エムが音声を添付してデータをオータムに送る。
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束が殴る。オータムが避ける。束が蹴る。また避ける。オータムが外に誘導している間ずっとこれが続いていた。
束「このっ、ちょこまか、すんなああああ!!」
オータム「動きが単調だなァオイ!そんなんじゃあいつに捨てられちまうぜぇ!!」
束「うるさい!私のおー君がそんなことするわけない!勝手なことを言うな!」
オータム「どおだかなあ!!嘘つきは嫌われるぜェ!!」
束「うるさ、ガッ!?」
オータムがジェミナイズ・カストルに装備されたビーム砲でダメージを与え距離が開く。
オータム(効いてる効いてる。さて、次は…あ?エムから?)
開いた隙に送られてきたデータと音声ファイルの主を見る。音声ファイルを聞くと
エム「あとでこってり搾られろ。」
そう言っていた。
オータム(や、やべえええええええええええ!!これ絶対スコールにバレてるゥゥゥゥ!!)
心のなかで叫んだ。
オータム(エムのやつ、チクりやがったなチクショウ!あとでシバく!!ととと、とりあえず指定されたポイントまで誘導すればばば、ききききき、きっと許される…)
心のなかで動揺したり、同僚へ怒りをぶつけようとする。
束「考え事してんなよ、年増ァ!!」
その言葉が聞こえたかと思うとオータムのすぐ横に拳を振りかぶる束がいた。
オータム(やべっ!)
寸でのところで何とかかわすオータム。
オータム「って、誰が年増だコラァ!アタシはまだ26だ!」
束「束さんより2歳上ー!ほら年増じゃん!」
オータム「うっせえメンヘラ兎!」
そう言って飛び去るオータム。
束「誰がメンヘラだこのヤロー!!」
それを追いかける束。だが、逃げたはずのオータムがヘリポートにいた。ヘリポートに着陸する束。
束「何?束さんにぶん殴られる気になった?」
???「あら、そうは行かないわよ?」
声の方に目を向けると金髪の女性と見覚えのあるシルエットのISがそこにいた。
束「…お前がおー君をさらったのか…!」
???「さらった?むしろ助けてあげたことに感謝してほしい位なんだけど、ねえ…黄牙?」
束「!!」
ISを解除してその姿を表した黄牙。
束「おー君…!」
黄牙「………」
束が心の底から安堵しているのに反して、束を睨み付ける黄牙。
黄牙「なあ、束。俺言ったよな?何か分かったことがあったら伝えてほしいって。」
束「っ……!」
黄牙「束が隠してたことは全部スコールさんと、ストライクヴルムに聞いた。どうして言ってくれなかったんだ?」
語気を強めて束に質問する黄牙。
束「だって、だってそれじゃおー君がいなくなっちゃうんだよ!?私はっ…私はそんなの嫌だよ!!」
黄牙「ならどうして俺に十二宮ISを解放させた?」
束「それは「何も知らなかった、って言う理由を除けば…大方自分の知らない機体を知りたかった、とかそんなところか?」…!!」
黄牙「…そりゃそうか。自分の知らないISは調べたくなる。開発者の知的好奇心は侮れないな。」
束「そ、れは…」
黄牙の言葉に束は俯いてしまう。
黄牙「束を信じた俺が馬鹿だったんだな。」
束「ま、待っておー君…!」
黄牙「スコールさん、もういいです。」
スコール「…そう。処遇はどうする?」
黄牙「…任せます。俺は部屋に戻りますね。」
スコールに束を任せその場を去る黄牙。
束「おー君…」
失意の束にスコールが近づいてくる。
スコール「…一緒に来てもらうわよ?」
束「………」
オータム「おい「オータム。」…」
スコール、オータムに連れられて船内に入っていく束。その目は絶望にうちひしがれ、侵入してきたときよりも黒々と深い闇に包まれていた。
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スコール「オータム、後でね?」
オータム「ピィッ」
次回、晴れない心。