黄牙「心配をかけてすみませんでした!」
ブリーフィングルームに入るなり謝罪する黄牙。
スコール「気にしてないわよ~」
オータム「スコールお前…」
エム「首謀者とは思えない物言いだな…」
スコール「いいじゃない。誰かが言わないとなんだから、ね?」
ウインクで二人に返すスコール。ナターシャとチェルシーはというと三人のやり取りをいつもの事であるかのようにスルーして黄牙を案内する。
チェルシー「無事復帰なさって何よりでございます。」
ナターシャ「とりあえずお帰り。ファングは私の隣の席ね。」
黄牙「あ、どうも…」
ナターシャ「スコール?始めて欲しいんだけど?」
スコール「あらそう?じゃあ前回までに決まったことをファングに話してから本題に移るわよ~」
会議だというのにどこかのんびりしているスコール。その様子に黄牙は小声でナターシャに、
黄牙(あの、いつもこんな感じ何ですか?)
ナターシャ(まあ、ね。これは慣れてもらうしかないわ。)
黄牙(あっ…はい。)
スコール「とりあえず前回までの話ね。移動手段はファングの十二宮ISの1つを使うわ。それでエクスカリバーの軌道まで到達、その後内部に突入してチェルシーの妹であるエクシアを救出、同時に内部からエクスカリバーを破壊。破壊が完了し次第地球に帰還して任務完了よ。何か質問は?」
黄牙「無いです…というかもう内容決まってるじゃないですか!!」
スコール「それでも不安はひとつあるのよ?」
黄牙「それはいったい…」
エム「ISが宇宙空間で活動出来るのかどうか、この点だ。」
黄牙「ん?…ああなるほど。」
一瞬疑問符が浮かぶものの、即座に理解する黄牙。
エム「どうやら理解したようだな。頼んだぞ。」
オータム「お前らだけで話進めんなよ!全然わかんねえぞ!?」
黄牙「IS搭乗者の生命保護機能である絶対防御をバリアフィールドとして実体化、全体を保護して空気の確保、及び宇宙環境で活動できるようにたb…ラビットに頼む。そういうことでしょ?」
エム「そういうことだ。」
オータム「……なんか、怖いわお前ら。」
黄牙とエムの以心伝心さに一種の恐怖すら覚えるオータム。
スコール「ファング」
黄牙「…ええ、分かってます。」
ナターシャ「ちゃんとオトして来なさいよ?」
黄牙「はい…ん?」
オータム「どうした?口説き落としてくるんじゃねーのか?」
黄牙「ナターシャさん!?別の意味入ってませんかそれ!?」
チェルシーは顔を真っ赤にして、手で覆い隠してしまっている。
エム「やるのかやらんのか、どっちだ、ファング?」
黄牙「寄らんでいい!やる!やるから!やらせていただきますからその人を殺しそうな目で睨むのを止めてください!」
エム「…これでもわくわくしていたんだが…」
スコール「はいはい、落ち込まないの。肝心要の兎の捕獲、よろしく頼むわね、ファング。」
黄牙「…はい。」
どこか信用ならない目でスコールを見る黄牙。
スコール「ちゃんと二人っきりにするし、カメラでも見ないわよ?」
黄牙「その言葉、信じますよ。」
スコール「ええ。」
そう言って部屋を出る黄牙。その後ろ姿を見届けた各々は顔を見合わせ、ニヤリと笑った。チェルシー以外。
――――――――――――――――――――――――
束「………」
独房でじっと目を瞑る束。そんな時、扉が開いたような光が差し込む。ゆっくり目を開けて光の方を見ると、そこには
束「っ!」
黄牙「…1週間ぶりだな、篠ノ之博士。」
変わらず無事の、冷酷な目をした
束「…何の用?」
黄牙「質問と勧誘だ。」
束「そう…早く済ませようよ。」
触れたい気持ちをおさえ、抱きつきたい気持ちを潰し、速やかに事を終わらせようと試みる束。そんな彼の表情は
黄牙「…ああ、そうだな。」
曇っていた。
―――やめて、そんな顔を見せないで。―――
黄牙「まず質問だ。ISに搭載されている絶対防御、あれは宇宙空間でどう使う?」
束「…地上と同じように使えるよ。注意するなら頭部は保護しておくことと、プライベートチャンネルを常時開いておくこと。」
黄牙「空気の確保は」
束「いるわけないじゃん。元々の設計思想は大気圏外での活動が前提なんだし、コアが宇宙空間と判断すれば自動で付く。」
黄牙「判断から装備されるまでの時間は?」
束「コンマ0001秒」
黄牙「…よくもまあそこまで仕込んだものだ。」
黄牙が感心したように反応する。胸に来る暖かいものを感じながら束が質問する。
束「ま、天災だからね…こっちからも質問。なんで今それを聞くの?」
黄牙「それが必要になったから、だ。」
束「ふーん…」
黄牙「聞いておいてその反応か。」
束「束さんにとって君たちがISを何にどう使おうが勝手だからね。…けど、私の子供たちを人殺しの道具に使おうだなんて思っちゃいないね?」
黄牙「その真逆の人助けだ。」
束「あっそ。」
―――良かった。―――
歓喜で踊りたくなるのをこらえる束。
束「質問は終わり?」
黄牙「…ああ、ここからは勧誘だ。単刀直入に言う、俺たちのもとに来い。」
いきなり切り替わり頭が混乱しそうになるも
束「…束さんがそっちの仲間にメリットは何?」
黄牙「……俺と共にいる、それだけだ。」
―――メリット?それが?…利害関係だったの?―――
束「…そんなの嘘じゃん。」
肩を震わせ涙声になる束。
黄牙「何?」
束「ずっと一緒なんて、そんなの嘘じゃん!!」
目に涙を溜め立ち上がり、声を荒らげる束。
束「臨海学校でおー君が死んだって計器で出された時どんな気持ちだったのかおー君に解る!?ようやく、私が普通の人として幸せになれると思った矢先に奪われて、目の前全部真っ暗になって、それでも諦めたくなくて!どんな思いで…っ!どんな思いでおー君の痕跡を必死にかき集めてここまで来たか、おー君に解る!!?」
黄牙「………」
反論もせずただじっと聞き続ける黄牙。落ち着いたのか独房のベッドに腰かける束。
束「…最初に見つけた時は驚いたよ。まさかテロリストに拾われてたなんてさ。」
黄牙「博士それは…」
束「分かってる。彼女たちは違う、そう言いたいんでしょ?」
黄牙「…ああ。」
束「…随分入れ込むんだね。」
黄牙「世話になったからな。…あの時、拾われなかったら俺は本当に命を落としていた。暗く、寒い、海の底で1人で、な。」
束「…え?」
呆然とする束。それもそのはずで確かにあの時機械は彼を死んだと断定した。何故ならあの光線のなかで人間が生き残っている確率を算出して導きだした間違いようのない事象だった。
黄牙「それでも死ななかったのは、相棒が、ルナテックヴルムが俺の命を必死に繋ぎ止めてくれたおかげだ。」
束「…」
今度は束が静かになる。
黄牙「ライ…ああ、ルナテックヴルムと話せたのは…多分拾ってもらった後なんだろうな。愛する人と離れ離れになるって、後悔はしないのかって、何度も言われた。」
束「おー君…?」
黄牙「だから相棒に言ってやった。博士が、…たばちゃんならきっと伝承通り俺が銀河の中心に行っても、きっと会いに来てくれる。そう信じているってな。だからこそ、隠してたって知ったときは悲しかった。まだ信じてもらえてなかったんだ、って。」
束「……」
俯く束。透明な液体が頬を伝う。
―――どうして、信じてあげられなかったんだろう…―――
束「ごめん、なさい…絶対に知られたくなかった。その事実を受け止められなかった。何より、おー君と離れたくなかったんだよぉ…う、うぅ…」
決壊してしまった心のダム。止めどなく溢れ出す心の激流。そっと黄牙の方に抱き寄せられる。彼が鍵を持っていたのだろうか。
黄牙「…それが聞けただけでも、俺は嬉しい。」
最初の厳しい声音はどこへやら。彼は彼女を抱き締めて優しく伝える。
黄牙「もう一度だけでいい。俺の事を、信じて欲しい。」
束「…うん、私も、愛して欲しい。もう2度と離さないって誓ってくれる?」
黄牙「ああ。もちろんだ。」
そう言って久しぶりの二人の時間を心行くまで噛み締めた。
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次の日。
スコール「さて、じゃあ自己紹介お願いできる?」
束「ハロハロー!篠ノ之 束だよー!コードネーム?はラビット!よろしくぅ!」
束は晴れてアニング・プロテクターズのメンバーとなった。上層部も快く受け入れ、一切の手出しはしないという約束を取り付けた。
束「やー良かったー!これでひと安心だよー!」
オータム「厄ネタが転がり込んできたの間違いだろ…」
束「何かいった、年増蜘蛛?」
オータム「うるせーよ、厄介メンヘラ兎。」
束「は?」オータム「あ?」
ナターシャ「はいはい、喧嘩しない。」
チェルシー「随分と賑やかになりましたね。」
マドカ「騒がしいの間違いだ。全く…」
スコール「あら、騒がしいのは嫌い?」
マドカ「…別に。」
黄牙「ブリーフィングは終わったし整備はまた明日か…」
束「聞いてよおーくーん!またおばさんが苛めてくるー!」
オータム「テメエ!根も葉もねえこといってんじゃねえぞ!」
黄牙「…ふんっ!」
騒がしすぎたのか束とオータムにげんこつをくらわせる黄牙。
束「なーんでよー!」
オータム「お前が喧嘩吹っ掛けてくるのがわりいんだろが!」
黄牙「喧嘩両成敗だ!…もう一発受けとくか?」
束、オ「「すみませんでした…」」
しゅんと静まる二人。
黄牙「それよりラビット、計画に穴はないか?」
束「あると思うかね、ファング君?」
黄牙「…なかったな。」
束「元々の計画が完成してたんだし、それにちょちょいと手を加えただけだからね。問題なく行けるよ。」
スコール「太鼓判ももらえたことだし、残りの期間は整備期間としましょうか。各員決行当日までに間に合わせておくようにね。」
6人「「「「「「おー!!」」」」」」
次回、作戦開始!