ダイの大冒険の世界を念能力で生きていく   作:どか0623

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10 呪文習得

「でっけえ町だなー」

 

 パプニカの城を見上げながら、独りごちる。

 さすが、この世界でも有数の大都市だけある。……知らんけど。

 

 パプニカは、俺が住んでいるベルナの森から東の方にある。

 ベルナの森の近くの町(名前は知らないけど、多分ベルナの町)から、だいたい6時間くらい走れば着く距離だ。

 

 マリンやアポロたちと別れて、もう4ヶ月が経った。

 そろそろ会いに行っても不自然じゃない頃合いだと思い、満を持してパプニカへやってきたわけだ。

 

 「これなら日帰りもいけるか?」とか考えつつ、やっぱり疲れたので宿を探すことにした。

 

 子供の見た目をしているせいで怪しまれるのを避けるため、少しもったいないが三人分の宿泊料金を支払い、両親は後から来ると伝えておいた。

 部屋の鍵を閉めてしまえば、それ以上詮索されることもないだろう。

 

 さて、マリンたちに会うには、どこに行けばいいのだろう。やっぱり城か?

 でも、いきなり押しかけても門前払いを食らいそうだ。……しかし他に手段もない。とりあえず行ってみるか。

 

「坊や、どうしたんだ? 迷子かな?」

 

 20代半ばくらいの若い兵士が、俺の頭を撫でながら話しかけてくる。

 このクソガキ、俺より年下のくせに……馴れ馴れしく手なんか置いてんじゃねえ。

 

 ――いや、落ち着け俺。彼は仕事をしてるだけだ。

 

「あの、友達に会いに来たんですけど……多分、城の中にいる……」

 

 尻すぼみになりながら、子供っぽく答える。

 

「お友達? お城の中でこの坊やぐらいの年っていうと、アポロ様かな」

「あ、そうそう。アポロです。他にもマリンと、エイミって子もいますか?」

「おお、未来の賢者様と知り合いだったのか。なら、ちょっと待っててくれよ。今から呼んでくるから」

 

 30代後半くらいの別の兵士がそう言って、城の中へと入っていった。

 

「トーヤ! 久しぶりー!」

 

 遠くからマリンが手を振りながら駆け寄ってくる。

 

「おう、久しぶり。約束どおり会いに来たぜ」

 

 その後ろから、少し遅れてアポロも姿を現した。

 

「トーヤ、久しぶりだな。会えて嬉しいよ」

「あ、ああ。俺も……嬉しいよ」

 

 何だコイツ……俺を攻略しようとでもしてるのか?

 なんでこんなナチュラルに恥ずかしいセリフ言うんだ。

 

 ひと通り挨拶を交わしたあと、俺は城の中へ案内された。ちなみにエイミはお昼寝中らしい。まあ、まだ3歳児だしな。

 

「部屋、でかっ! ここ、お前たちの部屋か?」

「ここは私たちが勉強する場所だよ。いつもここで、マリンとエイミと一緒に賢者としての知識を学んでるんだ」

「へえ〜。勉強部屋にしては豪華すぎないか」

 

「ねえねえ、それで、これからどうする? 城下町でも案内しようか?」

 

 マリンは外に出かけたそうにしているが、俺には目的がある。遊ぶのは後だ。

 

「呪文を教えて欲しいんだけど、前に約束したろ?」

「なんだ、トーヤは魔法使いになりたいのか?」

 

 呪文という言葉でアポロが勘違いをする。

 

「違う違う。ただ、呪文の契約ってやったことないから、ちょっと興味があってさ」

 

 アポロに説明していると、マリンが背伸びをして本棚から分厚い本を一冊取り出した。

 

「はい、これが初級呪文の魔法陣が載ってる呪文書だよ」

 

 おお……これがそうなのか。

 初級のくせに、やたら荘厳な表紙してんな。いかにもって感じだ。

 

 魔法陣を描くために、城の外へ出る。

 アポロが手際よく魔法陣を地面に描き、俺をそこへ立たせた。

 

「そこに立って、祈りを捧げるんだ」

 

 祈り? 何を祈るんだろうな。

 とりあえず目でも瞑って、ポーズだけでも祈ってみるか。

 

 すると――魔法陣が突然輝き出した。

 

「おお! 契約成功だ!」

 

 あ、そうなんだ。

 ……特に何もしてないし、実感もないけどな。

 

「これは何の呪文なんだ?」

「メラだ」

 

 メラか。まあ、基本中の基本だよな。

 

「もう使えるの?」

「ああ。あそこの練習用の丸太に向かって唱えてみて」

 

 アポロが庭の方にある、地面に突き立てられた丸太を指さす。

 

「オーケー。それじゃあ――メラッ!」

 

 ……無反応。

 

「メラァ!」

 

 ……沈黙。

 

「……契約、失敗してね?」

「そんなはずはない。魔法陣はちゃんと反応していたし、あとは練習次第だよ」

 

 本当かよ。

 

「ねえ、他の呪文も契約してみたら?」

 

 横で見ていたマリンが、呪文書の別のページを開きながら提案してきた。

 

「お、そうだな。とりあえず契約だけしておこう」

 

 練習なんて後でいい。今は契約が最優先だ。

 

 ――結果から言うと、俺が契約できたのはメラだけだった。

 攻撃呪文も回復呪文も、全部ダメ。……俺って、才能ないのかもしれん。

 

「元気出して。戦士だったら、メラですら契約できないんだよ?」

 

 マリンが慰めの言葉をかけてくれる。

 ええ子や……でも結果は変わらんのやで。

 

「ほら、トーヤは闘気を使って戦うんだから、魔法なんて使えなくても大丈夫だよ」

「それはすごいな……! トーヤは闘気を使えるのか? パプニカの兵士にだって、使える者はいないのに」

 

 闘気って、もしかして霊丸のことか?

 そういえば、この世界の戦士は闘気を使うんだったな。

 

「マリンは、いつ見たんだ?」

「前に迷子になったとき、グリ……モンスターが出たときに見たの。すごい威力だったよ」

 

 マリンは一瞬「グリズリー」と言いかけたが、口止めされていたのを思い出したのか、すぐに言い直した。

 

「よければ見せてくれないか? 本でしか知らないんだ」

「まあ、いいけど」

 

 俺は人差し指に意識を集中し、丸太に向ける。

 

「霊丸ッーー!」

 

 人差し指から放たれた霊丸は、直径70センチほどの巨大な弾となり、すさまじいスピードで一直線に突き進んだ。

 丸太を貫いた霊丸は、勢いをまったく落とさず、そのまま轟音と共に――城壁を粉砕した。

 

「……あ」

 

 呆然と立ち尽くす俺。マリンもアポロも、声も出ないまま固まっている。

 

 次の瞬間、その爆音に驚いた兵士たちが騒然とし、中庭へと駆けつけてきた。

 城の中からも続々と人が集まり、人だかりができた。

 

 ――正直、泣きそうです。

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