ダイの大冒険の世界を念能力で生きていく   作:どか0623

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100 VSダイ

「うへぇ、砂だらけだ」

 

 頭にかぶった砂埃を払ってダイは無邪気に笑った。

 対照的にポップは険しい表情を浮かべてダイの正面に立つ。

 

「ダイ、お前は俺のことは覚えてるんだよな。それでも俺たちと戦うのか」

「何を言ってるんだよ。当たり前だろ? 俺は勇者だ、勇者は世界のために戦うんだから。だから俺は人間を滅ぼさなきゃいけないんだよ。父さんもそうだったじゃないか」

 

 ダイはけろっとして答えた。

 その返答にポップはますます渋面を浮かべる。

 

 ダイは忘れている。記憶を失くしているわけじゃないが、もっと大切なもの――心を。

 アバンから教わったことを忘れてしまっているんだ。だから、思い出させなきゃいけない。ダイだって、本当は気づいているはずだ。

 

「気づいてるよな? アバン先生、生きてたんだぜ。ハドラーのやつに殺されたと思ってたけど、先生は生きてたんだ。泣いて喜んで良いんだぜ」

「ああ、驚いたよ。でも、すごく嬉しいんだ。これで偽物の勇者を倒せる。見てみなよ」

 

【ギガデイン】

 

 一条の雷がダイの掲げた剣へと落ちた。

 ポップは背筋に冷たい汗が流れ、思わず身が震えそうになるのを必死に堪えた。今のダイには殺意さえ感じない。ただ、無邪気で、まるで別人のような感覚がポップの胸に広がった。しかしーー。

 

「これは俺の勇者の証さ。アバン先生にできるか? できないだろ。俺は勇者で父さんも勇者だ。だけど先生は偽物なんだよ。本当は真っ先に殺してやりたいところなんだけど、父さんに言われてるんだ。俺は誰よりも先にポップを殺さなきゃいけないんだって」

 

 話が通じるようにも思えなかった。

 ダイはゆっくりと剣を構える。と、そこでダイはふと疑問を口にした。

 

「だから今の状況は都合が良いんだけどさ、どうしてポップはひとりで俺と戦おうとしてるの?」

 

 ーーさあな。

 小さく呟き笑うと、ポップは呪文を唱える。

 

 意外にも先に仕掛けるはポップ。つま先から頭の毛の先まで、全身のあらゆる場所から魔力を集めるイメージ。

 搔き集めた魔力を掌に充実させて一気に解き放つ。

 

【五指爆炎弾】

 

 五指から解放された魔力は強烈な火球となり、一瞬にしてその場の空気を灼熱へと変えながら突き進む。

 赤い風は眩く輝き、ダイを呑み込まんとして迫る。しかしこれは挨拶変わり。幾ばくのダメージすら期待するものではなかった。

 

「ーーッハァァアア!!」

 

 静寂は一瞬。

 気合と共に電光を発する剣を振るう。ポップの放った呪文は四方に散り、あっという間に霧となって消え失せた。

 全力に近い攻撃を防がれるが、ポップには僅かの焦りも恐怖もなかった。

 

「さすがだな、ダイ。この程度の呪文は防ぐのは訳ないってか」

「そうでもないよ。今の呪文の威力――さすがだよポップ。それでこそ殺し甲斐がある」

 

 驚き、そして嬉しそうに笑う。

 心を支配されていても記憶は元のままだ。故にダイは心の底からポップの力を認めている。対峙する以上は必ず勝算があるはず。ダイの中のポップとはそういう男だ。

 

 力こそが正義。自らの力で、その正義を圧倒する。それこそが今のダイにとっての信念であり望み。

 剥き出しになった衝動が心の底から湧いてくる。すなわち、ダイは心の底からポップを殺したいと思っていた。

 

 放たれたのは強大な闘志。

 

 そうだ。力こそ正義。正義こそ力。

 先のバーンパレスでの戦いの折、ダイは父を失いそうになった。その時に抱いたのは自らの無力さと大切な者を失う虚無感。

 そして一命を取り留めた後に抱いたのは安堵感ーーだけではなかった。

 

 一度は繋がった命だが、いつ失うか分からない恐怖と焦燥、そして絶望感に襲われた。

 それはダイにとって、耐え難いほどの苦痛と絶望だった。結果、ダイの心の許容量を突破することとなった。

 

「さあ、見せてくれよ。お前を殺せば、俺はもっと強くなれる気がする」

 

 オリハルコンの剣が唸りを上げ、力強く揺れ動いた。

 鈍い光が剣先まで流れるように満たしていく。人間と魔族と竜が創った別次元の怪物は、ついに今その力を解き放った。

 

 

 +

 

 

 アジトにて、レオナたちはアポロとクロコダインから報せを受けた。

 ここからが彼女たちの戦いの始まりである。

 

 部下たちに指示を出し、自らもすぐに行動に移る。その道中、レオナは想定外の事項の多さに頭を悩ませていた。

 

 アポロとクロコダインの役目はレオナたちへの伝令役だった。

 戦闘手段を失ったトーヤ本人を魔王軍の前に立たせるわけにはいかない。よってルーラを使えて、少なからず身を守れるアポロがモシャスによって紛れ込む。そしてタイミングを見て抜け出した後、レオナとマァムを連れて戻る予定だった。

 

 がしかし、バーンパレスが接近していないのならばレオナが赴く意味はない。

 故に今は手順をひとつ飛ばして次に取り掛かること。すなわちーー

 

「黒のコアを柱から移動させるわ。予定通り、六つのグループに分かれたら、役割の再確認を徹底させなさい。ルーラの術者は必ず伝令役と移動役の二名を連れていくこと。そしてその二名は出立の前にそれぞれ他のグループの移動先も覚えておくこと。不測の事態があったら直ぐにカバーできるようにしておく。この3点だけは怠らないで」

 

 今日に至るまで、何度も繰り返してきた指令。それでも、何が起きるか分からないのが戦いというもの。事ここに至ってもレオナは変わらぬ声音で繰り返す。再確認および再徹底は何度やっても足りることはない。

  

「まさか、ザボエラが裏切るとはな……」

 

 クロコダインは誰に語るでもなく独り言ちる。

 勝てる見込みでもあったのか、あるいはそうせざるを得ない程に追い込まれたのか。いずれにしてもザボエラの奸計によって目途が立たなくなってしまった。それだけが事実である。

 

「考えるのは後よ。今は柱に急ぐわ。私たちには時間がないのよ」

 

 部下たちに手早く指示を出す。

 黒のコアは脅威ではあるが、六芒星の配置さえさせなければ効力は半減する。地上の破壊を防ぐ。優先すべきは地上の滅亡の回避。

 

 ――この選択に間違いは、ない。

 

「そうよね、ダイくん…………あなたのためにも、私たちは負けるわけにはいかないの」

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