ダイの大冒険の世界を念能力で生きていく   作:どか0623

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121 決着

 ――動け。

 

 そう心の中で叫んでも、返ってくるのは鈍い痛みと、鉛のように重い四肢の感覚だった。だけど、それでも動くしか無い。立ち止まったら終わる。そして立ち止まれば――死ぬ。

 

 俺は、つんのめるように地を蹴った。

 ふらつく身体を引きずりながら、瓦礫の合間を逃げ回る。

 

「フフ……いいぞ、実にいい! もはや虫の息であろうに、それでも抗うか!」

 

 バーンの声が響く。高揚し、勝利を確信している口ぶりだった。舐めやがって、まだ終わってねえぞ!

 

 足取りこそ重いが、まだ動ける。それにキツいのは向こうも同じはず。

 

 呼吸が追いつかない。視界が揺れる。意識が、暗転しそうになる。

 

 だけどまだ……まだ、一発……残ってる……。

 

 俺は走りながら、体中のオーラの残滓を搾り出す。

 限界を越えた身体が悲鳴を上げるが、それでも指先に力を込める。

 

 視界の端に、バーンの姿が見えた。

 奴もまた、ふらつきながら俺を追う。互いに、全盛の動きなんて程遠い。だが――それでも走っていた。

 

 俺とバーン、二つの影が並ぶように走る。いや、逃げる俺を、追うバーンが迫っているだけだ。

 

「どうした? 先ほどの黒炎は出さないのか? もう尽きたか?」

 

 バーンが並びかけ、嘲るように言い放つ。

 その言葉が耳を刺す。だが軽口を返す余裕なんて、もうどこにもなかった。

 

 ――畜生……追いつかれる……!

 

 足がもつれかける。それでも、必死に踏みとどまった。

 

 横目でちらりと見ると、バーンの足取りも決して軽くはない。

 呼吸は荒く、焦りの色が滲んでいる。口では威勢のいいことを言っているが、消耗は明らかだ。

 

 俺は、わずかな隙を見て、一歩、横に跳んだ。

 

「ちょこまかと……!」

 

 バーンが苛立ちを隠さず声を上げる。

 

 ――今だ。

 

 《霊丸》

 

 閃光が迸る。

 バーンの眼が見開かれる。放った直後、俺の身体は力尽き、転がるように地面に崩れ落ちた。

 

 威力は普段の半分以下――いや、それにも遥かに届かない。

 最後の望みを託した光の矢は、一直線にバーンへと飛びーーその軌道を、バーンはぎりぎりで避けた。

 

 一瞬、彼の顔に焦りが浮かぶ。

 だがすぐに、それは確信に満ちた笑みに変わる。

 

「……ふ、ふふふ……! 貴様には本当に驚かされる」

 

 そう言いながら、トドメを刺すべく、俺に向かって駆け寄ってくる。

 

「名は、確かトーヤとか言ったな。――死ぬがよい」

 

 ――その瞬間だった。

 

「……ッ!」

 

 閃光が、背後からバーンに直撃し、炸裂する。

 

 霊丸。

 それは真っ直ぐに飛び、瓦礫の影に転がっていた――“シャハルの鏡”に当たり、跳ね返った。

 

 バーンの体が、ぐらりと揺れる。

 

「シャハルの鏡……? バ……カな……」

 

 そして、崩れ落ちるように地面に倒れ伏す。

 そのまま、大魔王の意識は闇へと沈んだ。

 

 俺は、地に伏したまま、息を切らしながら笑った。

 

「室田遠矢だ。覚えとけ、バーカ」

 

 

 +

 

 

 同時刻、世界各地の街が、不穏な影に包まれていた。

 空は鉛色に曇り、魔王軍のモンスターたちが街道を蹂躙し、村を囲み、人々は家の陰で震えながら空を見上げていた。

 

「ま、まさか……このまま……滅ぶのか……?」

「誰か、助けてくれええええ……!」

 

 そんな絶望の最中――突如、大地が唸り声をあげた。

 

 ゴゴゴゴゴ……!!

 

「じ、地震か!?」

「いや、なんか来るぞッ!!」

 

 人間も魔物も、思わず一斉に足を止め、地鳴りのする方角を振り返る。

 

 そして現れた――!

 

 荒れた地面を踏み鳴らしながら、整然と駆けてくる大軍団。その先頭に立っていたのは――。

 

「ガハハハッ!! 真の勇者、でろりん様のお通りだーーッ!!」

 

 巨大な魔物の上に立ち、どこか勇者っぽいポーズで仁王立ちするのは、あのニセ勇者・でろりんだった。

 その横には、ずるぼん、まぞっほ、へろへろが無駄に眩しい笑顔を浮かべている。

 

「まさかこの日が来ようとはの……!」とまぞっほ。

「俺たち、ホントに救世主になっちまうな」とへろへろ。

「おほほほ! モンスターどもよ、震えなさィ!」とずるぼん。

 

 彼らの背後には、コントローラーで操られた大量の超魔生物たちが、規律正しく行進している。かつてザボエラが操っていたそれらは、今や完全に――ニセ勇者パーティーの支配下にあった。

 

「う、うおおおお!! ゆ、勇者さまが来てくれたぞおおお!!」

「いっけえええええええ!! 正義の軍団!!」

 

 でろりんがカチカチとコントローラーを操作すると、超魔生物たちが一斉に突撃を開始した!

 魔王軍の兵士たちは為す術もなく吹っ飛ばされ、悲鳴とともに空を舞う。

 

「うぎゃあああ!」「こっち来るなァ!」「やめてくれぇええ!?」

 

 魔物を従えたでろりん一行は「正義の軍勢」として、次々と村を解放していく。

 

「よーし次はあの城いってみよう! あそこになんか悪そうな塔あったよな!」

「ついに俺たちの時代が来たぜ……!」

 

 勇者でろりんと仲間たちの伝説は、こうして世界各地へと広がっていった――。

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