次回におまけ投稿します。
戦いが終わってから、数ヶ月が経った。
崩壊した都市。焼け焦げた森。潰された村々。
世界は深く傷つきながらも、瓦礫の中からゆっくりと立ち上がろうとしていた。
人々はまだ不安そうな表情を浮かべながらも、少しずつ前を向き始めている。
それを支えているのは、かつて“英雄”と呼ばれた者たち――そして、“かつての敵”だった者たちであった。
ニセ勇者・でろりん一行は、ちゃっかり“本物の勇者”として崇められていた。
実際、モンスターの軍団に追い詰められていた人々を助けて回っていたのは、確かにでろりん達なのだから、間違いではないのだが……なんとなく腑に落ちない。
そして、なぜかザボエラは、でろりん達の下で“参謀”のようなポジションに収まっているらしい。
まぁ、あいつは承認欲求モンスターだから、でろりん達とつるんでいた方が性に合ってるのかもしれない。
ハドラーと親衛騎団は、戦いの後、瀕死の状態から復活を遂げた。
ハドラーの復活には、俺が失くしたはずの最後の《大天使の息吹》を使った。その流れで、彼自身が親衛騎団を蘇らせたというわけだ。
その《大天使の息吹》は、ゴメちゃんが見つけてきてくれた。持ってきたとき、ゴメちゃんは小さくなっていた。“神の涙”としての力を使ったらしい。
ダイとゴメちゃんの間で、きっといろいろあったのだろう。ダイは、涙ながらにゴメちゃんに別れを告げ――俺も、その最期を見届けた。
その後、ハドラーたちがどこで何をしているのかは……俺は知らない。まあ、元気にやってるんじゃないか?
ヒュンケルは、どうやらミストバーンと共生しているようだ。
成長できる肉体を手に入れたのが、よほど嬉しいのか――ヒュンケルが奥に引っ込んでいる間、ミストバーンはせっせとトレーニングに励んでいるらしい。
まるで、新しいおもちゃを与えられた子どものように。
それでいいのかとヒュンケルに尋ねたところ、彼はどこか達観したような顔で、「好きにさせておけ」とだけ言った。
二人の間でどんなやり取りが交わされているのかは想像もつかないが――かつての師弟ということもあって、それなりにうまくやっているようだ。
平和に最も貢献したのは、レオナ姫だった。
彼女は、バーンが世界中にばらまいた黒のコアを、六芒星ではなく五芒星として再配置し、その莫大な魔力を利用してミナカトールを発動させたのである。
その結果、向こう百年は邪悪な力による脅威が現れることはない――と言っても、過言ではないだろう。
とんでもない産廃をうまく利用したものだと、正直感心する。「強かさでは他の追随を許さないな」と軽口を叩いたら、殴られた。
そして、俺はというと――バーンやダイと一緒に、新たな国を作っていた。
正直、バーンに復興の手伝いをさせるのは、当初かなり不安だった。
というのも、人々の心には、かつての“恐怖の大魔王”のイメージが深く刻み込まれていたからだ。
……だが、意外にもそれは問題にならなかった。
そもそも、バーンの“素顔”を知っている者など、ほとんどいなかったのだ。
当然と言えば当然か。実際、側近だったミストバーン以外には、バーンの正体を知る者など誰ひとりいなかったのだから。
バーンの桁外れの魔力で土地を整地し、巨大な建築物を造ってもらった。
ダイの人望によって、世界中の仲間たちが協力してくれた。人材、町民、資材――すべてがダイの名前一つで集まった。
俺? 俺は、その間を取り持って調整したり、雑用をこなしたり、たまに喧嘩の仲裁をしたり……まあ、なんというか、「便利な中間管理職」ってやつだ。
報酬もなしに働くなんて本来は御免こうむりたいところだが、この国は世界平和の象徴となるべき国だ。さすがに――やりがいだけはあると言っていい。
この国には、人間、魔族、モンスター。あらゆる種族の生き物が共に暮らしている。
当然のように、いざこざは多いし、問題も絶えない。
「魔族の方が力仕事に向いているのに、なんで人間ばっかり採用されるんだ」とか、「人間は平気で嘘をつくから信用できない」とか、「スライムの言葉が分からないからって無視するのは差別だ」とか。
聞いてるだけで頭が痛くなるような不満が、毎日のように俺のところに寄せられる。
でも、少しずつでも前に進んでいるのは確かだ。ぶつかりながらも、互いを知ろうとする意志は感じる。最初の一歩を踏み出しただけでも、十分に意味はある――と、思いたい。
俺はこの世界で、念能力という異物を抱えながら――それでも、前の世界と同じように悩み、怒り、笑い、生きてきた。
「原作通りに」と、そればかり考えていた日々もあった。けれど、結局はこの有様だ。
これが正解だったのかどうかは、正直わからない。……いや、きっと最初から、正解も不正解もなかったんだろう。
それでも――今となっては、これ以上の正解はなかったのだと思える。
「トーヤ! 会議始まってるわよー!」
遠くからマリンの声が聞こえてくる。
俺は手元の書類をひとまとめにして、よっこらしょと腰を上げた。
そして、この忙しくて騒がしい日々は――当分、終わりそうにない。