ダイの大冒険の世界を念能力で生きていく   作:どか0623

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キャラ崩壊注意。
むしろこれがやりたくてこの小説を書き始めたまであります。


124 おまけ1 よなおし

 魔王を倒し、世界に平和が戻ってから一年。

 かつて死線を共にくぐり抜けた仲間たちは、それぞれの道を歩んでいた。

 

 ある快晴の日。パプニカ王国の玉座の間に、やたらと落ち着かない青年が一人。

 その横では、武闘家マァムが腕を組んでため息をついていた。

 

「……だから落ち着きなさいってば、ポップ。姫様に失礼でしょ」

「いや、わかってるけどよぉ。姫様っていってもレオナだぞ? それに、あいつの消息を知ってるかもしれねぇと思うと、どうにも落ち着かなくてさ」

 

 そのとき、玉座の間の扉が開き、レオナ姫が姿を現した。

 かつてのようなドレス姿ではなく、今は動きやすい宮廷用のパンツルック。姫というより、“若き実務家”といった雰囲気が漂っている。

 

「久しぶりね、ポップくん、マァム!」

「レオナ、ひさしぶり!」

 

 挨拶もそこそこに、ポップたちはダイのことを尋ねた。

 というのも、ここ数ヶ月、彼らはダイと顔を合わせていない。バーンやトーヤたちと一緒に新たな国を築いている、という話は当然知っているし、実際に協力もしている。

 だが最近は、訪ねても行き違いやすれ違いばかりで、会うことができずにいた。

 

 昨日も会いに行ったばかりだったが、またしても不在。

 そんなわけで、レオナに相談しに来た、という次第だった。

 

「あら? 確か今はパプニカの城下町に来てるんじゃなかったかしら? バーンと一緒に“世直しがどうのこうの”って……あ、ほら、やっぱり。ここに出店許可の決裁書があるわ」

 

 レオナは書類の束から一枚を引き抜き、満足そうに頷く。

 

「ほんとか!? ……って、出店?」

 

 ポップとマァムが揃って声を上げた。

 こうして二人は、ダイを探しに、パプニカの城下町へ繰り出すことになった――。

 

 

 +

 

 

 パプニカの城下町は今日もにぎわっていた。商人や旅人、観光客に子どもたちまでが行き交い、ちょっとしたお祭りのような雰囲気だ。

 そんな中、ひときわ目立つ長蛇の列に、ポップとマァムは足を止めた。

 

「うわ……なんだこの行列。ここだけ異常に混んでないか?」

「この辺りに来てるって話だったし……もしかして、ここかも?」

 

 ポップが行列の先を見上げる。建物の正面には、ドーンと豪快に掲げられた看板。

 二人が眉をひそめた、そのとき。

 

「ポップ! マァム!」

 

 後ろから聞き覚えのある声が飛んできた。振り返ると、見慣れた少年が手を振って駆け寄ってくる。

 久しぶりの再会に、ポップとマァムの顔がぱっと明るくなる。

 

「いや〜、よかった! 二人に会えるなんて! ここに来て正解だったなぁ!」

 

 ダイは満面の笑みで、まるで犬のように尻尾が見えそうな勢いで喜びを爆発させている。

 

「ていうか、ダイ、お前こんなとこで何してんだよ? ここって……お前の店?」

「うん! 10日くらい前から出張店舗の営業でさ。せっかくだし、中見て行ってよ!」

「え、いいのか? 並んでる人いるけど……」

「関係ないよ、スタッフだし!」

 

 そう言って、ダイは二人を連れて列をすり抜け、裏口からするりと店内へ。

 俺らスタッフじゃねぇけどな。と、ツッコミを入れつつも、結局ポップとマァムはダイの後についていく。

 

 そのとき――。

 

 ちょうど店から出てきた、ポップの背丈の倍はありそうな巨大な老婆とすれ違った。

 ポップは思わずのけぞり、マァムも思わず目を見張る。

 

 二人が心の中でぎょっとしている間に、ダイと老婆は何やら世間話をし、老婆は満足げに頷きながら立ち去っていった。

 ダイは微笑ましそうにその背中を見送りながら、ポップたちを振り返る。

 

「“腰の痛みが消えたよ、ありがとうねえ”……だってさ」

「お、おう……そう、か。ここって病院……ってことでいいんだよな?」

「うん、そうだよ」

 

 ポップは心の中に湧き上がる疑問を飲み込んだ。

 納得はしていないが、ひとまずダイに従い、マァムとともに店の奥へと進んでいく――。

 

「久しいな、ポップにマァムよ」

「のわあぁああああっ!!?」

 

 突然現れたのは、あの大魔王バーン。

 気さくに手を振るその姿を見た瞬間、ポップは素っ頓狂な叫び声をあげた。

 

「なななな、なんでコイツがここにいるんだよ、ダイ!?」

「なんでって、この病院の先生だもん。普通に働いてるよ?」

「“普通に”じゃねえよ! おかしいだろ、元・大魔王が診察してんのはよッ!」

 

 ポップのツッコミに、バーンは穏やかに笑って答えた。

 

「案ずることはない、昔は少し世界征服を目論んでいただけで、今は一介の医者だ」

「いやいやいや! “少し”のスケールがデカすぎんだろ!」

 

 ポップが全力でツッコむ横で、マァムはまだ目を見開いたまま固まっていた。

 その隣では、ダイが気まずそうに頬をかきながら、苦笑いを浮かべている。

 

「……それで? あなたたち、ここで何をやってるの。レオナからは“世直し”って聞いてたけど……」

 

 マァムがようやく口を開き、病院内をぐるりと見回す。

 受付、待合室、リハビリルーム。どこからどう見ても、ただの病院にしか見えない。

 

「はっはっははははは。“世直し”ではない。“余が治す”から――“余治し”だ。情報がどこかで捻じ曲がったようだな」

 

 どうやら店の名前らしい。

 ドヤ顔で笑うバーンの姿に、ポップとマァムは一瞬、沈黙する。

 

(……こいつ、天然か?)

 

 顔を見合わせた二人は、突っ込むべきかどうか本気で悩み、結局そっと口をつぐんだ。

 下手に反応すると、話がとんでもない方向へ転がっていきそうな気がした。

 

「俺たちの街じゃすごく評判いいんだよ。この間ひと段落ついたから、今度はこっちで困ってる人を治療しようって話になってさ」

 

 ダイがそう話すそばから、ギィィ……と重い足音が響く。

 奥の廊下から無言で現れたのは、銀色に輝くオリハルコンの駒。その手には、背中を丸めた小柄な老人が抱えられていた。

 

「……あれ、マキシマムの駒か? ハドラーの親衛騎団じゃなさそうだな」

 

 ポップがぽつりと呟く。確かに、そこには意志のようなものは感じられなかった。ただ静かに、淡々と業務をこなす機械のようだ。

 連れてこられたのは、見るからに年老いたお爺さん。歩くのもやっとという風情で、手足の関節は腫れ上がっている。

 

「ふむ。リウマチと……関節痛、か。呪文では根本的な治療は難しいな。パプニカでの完治例はほとんどない」

 

 バーンが問診を終えると、くるりとこちらを振り向いた。

 

「ちょうどよい。そこにいる若者たちよ、見て学ぶがよい。これが“余治し”の真骨頂だ」

 

 言うなり、バーンはお爺さんに手をかざし、鬼眼の力を発動させた。

 老いた体がみるみる変質していく。皮膚は赤黒く硬質化し、筋肉が隆起し、骨格すら変化していく――。

 

「うおおおいおいおいおい!? アンタ、なにやってんだよ!?」

「こ、これは……治療、なの?」

 

 泡を吹きそうな勢いで叫ぶポップと、言葉を失うマァム。

 だが、ダイはまったく動じる様子もなく、にこにことしたままだ。

 

「だいじょうぶだよ。回復呪文ってね、本人の治癒力に大きく影響するから、まず肉体を強化するのが先なんだ。あれくらい頑丈になれば、あとは半月もすればピンピンになるって!」

「それはもう、別の意味で“ピンピン”してる気がすんだけどな……」

 

 ポップが頭を抱える横で、変異したお爺さんが「おぉ……」と立ち上がった。

 背筋は伸び、腰もすっかり軽くなったのか、さっきまでのよぼよぼな姿は跡形もない。

 

「ありがてえ、先生! なんだか若返った気分じゃ!」

 

 満面の笑みで礼を言い、元気よく廊下を歩いていくお爺さん。

 その足取りには、もう杖も付き添いも必要ない。

 

「すごいでしょ?」

「すごい……けど、なんかこう、違う気が……」

 

 ポップとマァムは、妙な敗北感と共に、バーンの“医療行為”を見守るしかなかった。

 

「そろそろ交代の時間ですじゃ」

 

 その声とともに、診察室の奥からひょっこり現れたのは、かつての悪名高き妖魔司教――ザボエラだった。

 

「来たかザボエラ。では、あとは任せたぞ。余は休憩に入る」

 

 バーンが椅子を立ち、医師用の白衣をひらりと翻して奥へ引っ込む。

 

「いやいやいやいや! なんで当然のように医者チーム組んでんだよ!」

「バーンに休憩なんて必要なの……?」

 

 ポップが絶叫し、マァムが目を白黒させている間にも、無情にも次の患者が運ばれてくる。

 今度は小太りの中年男性。脈をとったザボエラが、「ふむ、高血圧に片頭痛……ありがちな組み合わせじゃて」と呟く。

 

 次の瞬間――ザボエラの爪が、そのまま患者の首筋に突き刺さった。

 

「はい!?」

「ちょっ……なにしてんだお前ぇぇぇぇ!!」

 

 ポップがすぐさま飛び出し、止めに入ろうとするが、それより早くザボエラが顔をしかめて説明し始める。

 

「落ち着け小僧。これは体内に少量の毒を流し込み、血管を一時的に拡張させて血圧を下げる毒療法。それと、神経毒による局所的な麻痺で頭痛も和らげるんじゃ」

「おかしいだろ! “毒”って単語が医療で何回出てくんだよ!」

 

 そう言ってザボエラは「ふぅ……やれやれ」とため息をつく。だが、それは明らかに“変なことに騒ぐ素人にうんざりしている顔”だった。

 患者はというと、「あれ、なんかスーッとしたわ……」とぼんやり笑いながら診察室を後にする。

 

「……もう、いいよ……」

 

 ポップが力なく呟き、マァムはただ天井を見上げた。

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