ダイの大冒険の世界を念能力で生きていく   作:どか0623

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13 破邪の洞窟

 キメラの翼を10個と、『同行』をセットして……っと。

 

 ぐーる、ぐーる、ぐーる。

 

 しばらく釜をかき混ぜると、輝き出した。

 現在14歳。バーンを倒す準備は順調に進んでいると言っていいだろう。

 

 出来上がったカードを見て、満足げに頷く。

 

【同行(アカンパニー) ランクF 回数:218】

 

 これに気づいたのは、最初に錬金術を成功させてから1年ほど経った頃だった。

 より強力なカードを作りたいのに、魔法具が全然手に入らない。

 

 世界各地の道具屋を巡っても、どれもパプニカで売っているのと似たような品ばかり。

 地底魔城にも足を運んでみたけれど、めぼしいアイテムは見つからなかった。

 

 ――ゲームと違って、伝説級のアイテムがダンジョンに転がっているなんてこと、現実ではまずない。

 

 しかもあそこ、今は廃墟だし。

 

 話が逸れたが、そういう事情があって俺は頭を悩ませていた。

 そのせいで、うっかり『同行』のカードとキメラの翼を釜に放り込んでしまったのだ。

 

 けれど、入れてしまった以上は仕方ないと調合を続けた結果――なんと、カードの回数が1回増えていた。

 さらに、再びキメラの翼を加えて調合してみると、また1回増えた。

 

 これは嬉しい発見だった。

 なにしろ、何度も旧文字で『同行』の文章を書くのは、メチャクチャ面倒くさい。

 

 スペルカード作成の補助として使っていた錬金釜が、思わぬ形で役に立った。

 

 たとえばスペルカードを収納するバインダー。

 紙束と布を入れて調合したら、システム手帳のようなポケットサイズのバインダーができあがった。

 

 特殊な能力こそないが、カードを持ち歩くにはぴったりだ。

 

 この要領で、身につける服も錬金釜で作った。

 たとえば今着ているジーパンとTシャツ。見た目はごく普通だが、この世界ではやたらと目立つ。

 

 ファッションセンスが微妙にズレてるんだよな、この世界……。

 とはいえ、長年着慣れた服のほうが動きやすいし、俺にはこれで十分だ。

 

 ――おっと、そろそろ時間か。

 

 部屋の隅に立てかけていた木刀をベルトに差し、身支度を整える。

 外に出て、バインダーからさっき作ったばかりのスペルカードを取り出した。

 

「アカンパニー、オン。パプニカ」

 

 

 +

 

 

 アポロたちの勉強部屋らしき扉をノックし、返事も待たずに入る。

 

「おじゃましまーす」

 

 中に入ると、机に座って真面目に勉強している三人の姿があった。まるで授業中の中学生みたいだ。

 

「あら、トーヤ。早いわね。まだ約束の時間までだいぶあるわよ」

「待たせちゃ悪いからな」

 

 そう答えながら、俺は勝手知ったるなんとやらで椅子に腰を下ろす。

 

 今しゃべったのはマリンだ。

 子供の頃とは違い、最近はずいぶん女らしい口調になってきた。これが思春期ってやつか。

 

 ……体つきも妙に色っぽくなってきたし。ていうか服装の生地が少なすぎ。

 この国の人たちは、ほんと露出に寛容すぎるんだよな。

 

 正直、目のやり場に困る。

 

「どうしてあなたって、そういう常識はあるのに、ノックの返事は待てないのかしらね」

 

 小言を言うこの声はエイミだ。

 彼女もマリンの影響なのか、最近は口調がやけにお姉さんっぽい。

 

 やたら文句は多いのだが、普段はそんなに怒っていない。大体原因は俺にあるからだ。

 

「いいじゃないか。トーヤもこの城では顔なじみとなっている。咎める者なんていないさ」

 

 アポロよ。

 今まさに目の前で咎められているじゃないか。

 

 彼らと知り合って、もうすぐ10年になる。

 会うのはせいぜい月に2度ほどだが、それでも俺にとっては友人と呼べる存在だ。

 

 そろそろ大魔王バーンが動き出すかと思っていたけれど――。

 三賢者の容姿を見るかぎり、まだ先になりそうだ。

 

 残された時間は、あとどれくらいあるんだろう。

 

 ……実はこの世界が『ダイの大冒険』を模しているだけで、実際には大魔王なんて出てきません、だったらいいのに。

 でもそれはただの希望的観測ってやつだ。準備しておいて損はない。

 

「で、いつ行く? 俺はいつでもいいぜ」

「今日の勉強はもう終わってる。私も準備OKだ」

 

 マリンとエイミも頷き、俺たちは出発することにした。

 向かう先は――破邪の洞窟。

 

 きっかけはアポロだった。最近伸び悩んでいるらしく、特訓がしたいと言い出したのだ。

 バーンのことなんて知らないはずなのに、どうしてそこまで強くなりたがるのかは謎だ。

 

 だが、強くなって困ることはないし、俺は協力することにした。

 

 もっとも、賢者の彼と模擬戦なんかしたら大怪我しそうだったので、代案をマリンに求めたところ――勧められたのが、破邪の洞窟だった。

 その場にいたエイミも「私も特訓したい」と言い出し、こうして三賢者+俺での遠征となったわけだ。

 

 ……まるでピクニックだな。

 

「準備はいいか? それじゃ、ルーラっ」

 

 皆に見えないようにカードを手に持ち、小声で『同行』を使用する。

 

「すごいわよね、ルーラって。一瞬でこんな遠くまで来られるなんて。昔はメラも使えなかったのに」

「何年前の話してんだよ。今じゃメラもバッチリだっつーの」

 

 感心するマリンに軽口を返しつつ、カードを素早くしまう。

 

 この世界でルーラを使える人は少ない。三賢者でさえ、それは無理なのだ。

 普通は馬車や気球、もしくは徒歩での移動になるが……時間がかかりすぎる。

 

 だから俺は、「ルーラが使える」ということにして移動している。

 破邪の洞窟には以前も来たことがあるしな。

 

「みんな、今日は付き合わせてすまない。今回の目標は、15階にあるといわれているマホカトールだ。無理はせず、危険を感じたらすぐに引き返そう」

 

 アポロは先頭を歩きながら、洞窟へと足を踏み入れた。

 俺は最後尾に立ち、彼らの背中を見守るように歩き出す。

 

 ――15階って、目標低すぎやしませんかねえ。

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