ダイの大冒険の世界を念能力で生きていく   作:どか0623

14 / 127
14 洞窟一周目

 アポロたちと共に破邪の洞窟に潜って、すでに四時間ほどが経っていた。

 

「ヒャダルコ!」

 

 エイミの放った呪文が、さまよう鎧を完全に凍りつかせる。

 

「そっちも終わったようだな」

「ええ。いい調子ね。この分なら予定より早く、15階まで辿り着けそう」

 

 キャットフライと戦っていたアポロが、わずかに息を切らせながらもエイミに声をかけた。

 

 二人は俺とマリンの存在を確認すると、前方へと歩みを進めていく。俺は、その後ろ姿を黙って見つめながら、後を追った。

 

「どうしたの? さっきからずっと怖い顔してるよ」

 

 少し先を歩いていたマリンが振り返り、心配そうに声をかけてきた。

 

「……いや、なんでもないよ」

 

 一瞬迷ったが、結局俺は何も言わず、二人の背中を追いかけることにした。

 

「体調が悪いなら、ちゃんと言ってちょうだいね?」

 

 俺を気遣うマリンの声に適当な相槌を返して、歩みを速めた。

 

 洞窟内での戦闘は、すべて三人に任せていた。

 アポロ曰く、「俺が戦闘に加わってしまうと特訓にならない」らしい。

 

 それなら俺、ここにいる意味ないよね――と思いつつも、口には出さない。

 

でも、アポロはなぜ俺を「強い」と思っているんだろう。確かに長い付き合いではあるけど、そう思わせるような力を見せた覚えはない。

 

 ……ああ、そういえば前に霊丸を撃って見せたっけ。

 

 けど、あれだけでそこまでの実力を感じるかな?

 まあ実際、俺が本気で戦ったら本当に特訓にならないだろうし。

 

 ……とはいえ、見てるだけってのはやっぱり辛い。

 今だって――

 

「メラゾーマ」

 

 あばれザルを呪文でオーバーキルしながら、アポロは容赦なく先へ進んでいく。

 

 破邪の洞窟はモンスターがわんさか湧いてくるからな。のんびりしていたら、すぐに囲まれてしまう。だから先を急ぐのはいい。そこに文句はない。

 

 でも、あばれザルごときにメラゾーマって、何考えてんだよ。しかも、魔法力に余裕があるわけでもなさそうだ。みんな、けっこう疲れてるのが見て取れる。

 

 ――ゴンとキルアを見守っていたビスケも、きっとこんな気持ちだったんだろうな。ヤキモキして仕方がない。

 

 今も、彼らは前方の敵に夢中で、背後から忍び寄るマミーにまるで気づいていない。案の定、背後をとったマミーがマリンに掴みかかった。

 

「きゃあっ!」

 

マリンの悲鳴が響く。

 

ああ、もうっ!

 

「おらぁッ!」

 

 腰の木刀を抜いてオーラを込め、思いっきりマミーに叩き込む。

 

「ありがと……う」

 

 首を締められていたマリンが、苦しそうに礼を言う。だがその言葉を聞き終えるよりも早く、俺は駆け出していた。

 

 アポロの横を風のようにすり抜け、ミイラ男とわらいぶくろを木刀の一振りでなぎ倒す。

 

 そのままの勢いで、背後にいたじごくのハサミを蹴り砕き、その死骸を思い切りヒートギズモに投げつけた。

 

 時速160キロの豪速球もかくやとばかりにぶつけられたヒートギズモは、為す術もなく霧散する。

 

 天井からぶら下がっていたバンパイアが、逃げようと動いた。

 

「逃さないわっ! ヒャダル――」

「よせ! 放っておけ!」

 

 エイミが呪文を放とうとしたのを制して、俺は木刀を腰のベルトへ収める。

 

「トーヤ、君は“見るだけ”って約束だったろう? たしかに今は少し危なかったが――」

 

 息を整えていたアポロが小走りで近づいてきて、軽く咎めるように言ってくる。だが俺は、その言葉を遮るように叫んだ。

 

「アホか~~~~っ!!」

 

 あまりの大声に、全員が一瞬硬直する。

 

「ど、どうしたの? そんなに大声出して……」

「どうしたもこうしたもあるかいっ! 見てられなくて手ぇ出しちまったんだよっ!」

 

マリンの問いも無視して、俺はさらにまくし立てた。

 

「あんな雑魚相手に、どんだけ苦戦してんだよ!」

「そ、それは……き、君から見たら私たちは弱いかもしれないけど、だからこそ、こうして特訓してるんじゃないか!」

 

 悔しそうに拳を握りしめながら、アポロが俯く。

 あ……なんか落ち込んでる。言い方が悪かったか。

 

「悪い悪い、お前らが弱いとか、そういう話じゃないって。強いよ、お前たちは。うん」

 

「気を遣わなくていい。君と俺たちの実力差は明らかだ。さっきの戦闘だって、君は一瞬で終わらせてしまったじゃないか」

 

「それは、今まで戦ってなかったから体力が余ってただけだって!」

 

 フォローしたつもりだが、全然聞いてない様子。……めんどくさいヤツだな。

 

「だぁ〜〜っ、もう! 一旦外に出るぞ! こっち来い!」

 

 アポロの腕をつかんでマリンとエイミの元まで戻り、誰にも見えないようにスペルカードを取り出す。

 

「リレミト!」

 

 と叫びつつ、《同行》を使って全員を洞窟の外へと脱出させた。

 

「お前ら、そこ座れ!」

 

 外に出た俺は、三人を落ち着かせるために座らせようとする。だがなぜか、全員が座らずにキョロキョロしている。

 

「……あなた、リレミトも使えたの? それにしてもおかしいわ。破邪の洞窟では、モンスターの邪気のせいでリレミトは使えないはずなのに……」

 

 ――やば。忘れてた。

 

「いいから座れっての!」

 

 マリンが何かを考え出す前に肩を押さえて強引に座らせる。……まあ、もう遅いかもしれないけど。

 

 マリンが座ると、ようやくアポロとエイミも腰を下ろした。

 

 三人の視線を受け止めながら、俺は咳払いを一つして向き合う。

 

「これから、戦闘時における呪文の使い方について講義を行います。終わったら一人ずつ洞窟に入ってもらうので、しっかり聞くように」

 

 勢いでごまかそう。そして俺は、未だかつてないほど熱く、戦闘とは何たるかを彼らに語り始めた――。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。