ダイの大冒険の世界を念能力で生きていく   作:どか0623

18 / 127
18 講義その4(実技)

「本当に大丈夫なの?」

 

 マリンがヒャドを右手に溜めながら、心配そうにこちらを見つめる。

 

「ヘーキヘーキ。もしものときの準備も万端だし」

 

 俺は回復アイテムと、その隣に置いた風呂を指さす。風呂は、ヒャドが直撃した場合の凍傷治療用だ。

 マリンたちは回復呪文も使えるし、ここまで用意しておけば万が一の事態にも対応できるだろう。

 

「いつでもいいぜっ」

 

 左腕に装着したガントレットを構える。

 

「それでは、いくぞ。ヒャドッ!」

 

 アポロの声に合わせて、マリンとエイミも同時にヒャドを放った。

 三発の呪文が飛んでくる中、俺は着弾を待たずに駆け出す。呪文が目前に迫った瞬間、ガントレットでそのうちの一発を受け止め、そのまま速度を落とさず突き抜けた。

 

 両脇をすり抜けた残りの二発が、俺の背後で炸裂する。

 

「っと、こんな感じ。って、冷たっ!」

 

 凍りついたガントレットを素早く外し、メラで腕を温める。

 

「随分と無茶なことをするな。これを私たちもやるのか?」

 

 アポロがやや引き気味に言った。

 

 これは、フレイザードのフィンガーフレアボムズに対抗するための特訓だ。

 ただし、そのことは話していない。「魔法を使う敵に囲まれたときの対処法」として説明している。

 

 実際、やっていることは以前スライムに囲まれたときの訓練に似ている。

 

 それもあってか、エイミが不満げに口を開いた。

 

「この特訓って、あの時と大して変わらないじゃない。こんな危険なやり方で、わざわざやる意味あるの?」

 

 もっともな疑問だ。何しろ、これから彼女たちも同じことをやるのだから。

 

「この特訓が無駄に見えるってことか。確かにそう思えるかもな。じゃあ、クイズを出そう」

 

 あらかじめ用意しておいた例え話を口にする。

 

「10分で地面に1メートルの穴を掘れる人がいたとする。その人が100人集まったら、10分で100メートルの穴が掘れると思うか?」

「……できない」

 

 少し考えてから、エイミが答える。

 

「理由は?」

「同じ場所じゃ作業できる人数に限界があるから。多すぎても邪魔になる」

「正解。じゃあ、これを“敵の攻撃”に置き換えて考えてみてくれ」

 

 そう言って、三人の中心に移動する。

 

「敵に囲まれたとき、同時に攻撃してくるのはせいぜい前後左右の4人くらい。多すぎると互いに邪魔になる。でもこれは、武器や素手で戦う相手の話。もし敵が魔法使いだったら話は別だ」

 

 右手にメラを灯し、俺がさっき立っていた位置に放る。

 のんびりと飛んでいくそれに続けて、4発のメラを時間差で投げ込む。放物線を描いた5発のメラは、すべて同じ場所に時間差で着弾した。

 

「こんなふうに、呪文はわずかなスペースがあればいくらでも飛んでくる。威力が弱くても、まとめて当たれば無事じゃ済まない」

 

 視覚的に示した効果もあってか、みんな納得したようだ。

 

 よし、気が変わらないうちに特訓を始めるとしよう。

 

 フィンガーフレアボムズは、極めて強力な呪文だ。

 5発のメラゾーマを同時に放つ技で、それを完全に避けるのはほぼ不可能。耐えきれるわけもない。

 

 ならば、多少のダメージを覚悟で突っ込むしかない。

 そのために、ガントレットを用意した。これでダメージを最小限に抑えつつ攻撃に転じる。それが現状、最善の戦法だ。

 

 いつになるかは分からない。

 だが、彼らは確実にフレイザードと戦うことになる。そのときに後悔してほしくない。だから、今のうちにこの経験を積んでおいてほしい。

 

 彼らは真面目だ。

 特訓が終わっても、自主的に練習を続けるだろう。

 

 椅子に腰を下ろし、彼らの様子を見守る。

 

 ……よくやるよな、明確な目標もないのに。

 それとも、“立派な賢者になる”ってのが目標なんだろうか。

 

 そうだ。頑張ったご褒美ってわけでもないが、装備品でもプレゼントしようかな。

 特訓も大事だが、いい装備を整えるのも重要だ。

 

 となると、何がいいか……。

 

 『旧文字』を書いただけの装備品は、文字が読めない者には使えない。

 かといって、グリードアイランドのカードは渡せない。というか、そもそも他人が使えるかどうかすら試していないし、試すつもりもない。

 

 なら、やはり錬金釜で調合するか。

 

 錬金釜で作ったアイテムは、素材に『旧文字』を含んでいても問題なく使える。

 彼らが俺の作った『ヒーリングサルブ』や『メンタルウォーター』を普通に使えていることからも、それは明らかだ。

 

 ただし、俺が念を込めて『ヒーリングサルブ』を使うと、光を放ってホイミのように回復するのに対し、彼らが使う場合はただの薬として塗って使用する。

 それでも、数分で傷が癒えたり、魔法力が回復したりと、効果は異常に高い。

 

 アトリエシリーズで、戦闘中にアイテムを使えるのが錬金術士だけなのは、こういう理由なのかもしれないな。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。