そろそろ「発」が欲しいなあ。
転生してから二年半。ずっと念の修行ばかりしてきたけど、もうそろそろ覚えてもいい頃だろう。
潜在オーラも、そこそこ育ってる気がする。きっと天空闘技場にいたズシよりは上じゃないかと思う。
……今、ちょっとバカにしただろ? でも、これでも結構頑張ってるんだぞ?
ズシだって、ゴンとキルアが化け物すぎて目立たなかっただけで、作中ではかなりの才能持ちなんだからね。
神様にチートをもらうとき、「ゴンとキルアくらいの才能が欲しい」ってお願いしたんだけど──。
「素質はあげるけど、それを活かすセンスがないとズシくらいになるよ」って返された。
センスってなんだよセンスって。やっぱあいつら、天才すぎるんだよ……。
そんなわけで、俺の才能はズシレベル。まあ、ゆっくりやるタイプだからいいんだけどさ(震え声)
さて、気を取り直して「発」を覚えようと思う。
ということで、まずは水見式だ。
近くの川から汲んできた水に、その辺で拾った葉っぱを浮かべて──両手を近づけて練を行う。
すると、葉っぱがくるくると、ゆっくり回り出した。
……操作系かあ。ドラクエ世界で操作系って、どうなんだろう。強いのか?
本音を言えば、強化系が理想だったんだけどな。
あ、今のセリフ、クラピカっぽかったかも。
まあいっか。操作系にもいろいろできることあるしな。
よし、とりあえず能力を考える前に、「発」がもっとはっきり出せるよう修行あるのみだ。
+
来る日も来る日も、水の上の葉っぱを動かす。
両手に凝でオーラを集めたり、指先に集中させたり。ただの水見式じゃなくて、工夫しながら実験も兼ねる。
やっぱり、オーラを水に近づけたときのほうが葉っぱの動きが顕著になるな。
それに、葉っぱを動かそうと意識を集中すると、さらに激しく回る。
なるほど。やっぱ「念」って言葉通り、念じることが大事なんだな。
──そうだ。これを使って、食料の採取をやってみよう。
葉っぱの動きを見てふと思いつき、外に出る。
果物が実っている木の下まで行って、リンゴに向かってオーラを飛ばしてみる。
リンゴ全体を包むようにオーラをまわし、引っ張る。
「ふんっ。おらっ。ほおっ」
……落ちない。
というか、リンゴって意外としっかり枝についてるんだな。全然取れる気がしない。
仕方ない、今度は捻ってみよう。
枝ごと回すように、オーラでリンゴをぐりぐり回す──が、30分頑張ってもまったく落ちる気配なし。
今日は諦めることにした。これ以上粘ってオーラ切れになったところをモンスターに襲われたらシャレにならん。
水に浮かんだ葉っぱがあんなに動いてたから、いけると思ったんだけどな……。
やっぱり、質量のある物を動かすには、まだ「発」の練度が足りないらしい。
よし、これからは生活のすべてを修行に変えよう。できるだけ手を使わず、操作系の能力で物を動かす。
……でも、操作系って「愛着のある物ほど操作しやすい」って言ってたよな。
今回やったのは、超能力者がやるような念力のイメージだったけど、念としてはちょっと違うのかも。
そもそも、念能力って原作でも説明されてない部分多いしな。
思い込みが強ければ成立するって言っても、非効率すぎるのはちょっとなあ。
制約と誓約も試してみたいけど、相談できる相手がいないのが辛いところだ。
あーあ、どうせならHUNTER×HUNTERの世界に行きたかったな。
……いや、でもあそこは死亡フラグ多すぎるか。
せめて同じ作者の『幽遊白書』の世界だったら、玄海師範とかに相談できたのになぁ。
──そうだ!
幽白の能力をそのまま持ってくれば、それなりに強いんじゃないか?
紙もペンもないから、木の枝を使って地面に制約と誓約を書き込む。
【霊丸】
・一日に最大4発まで使用可能
・発射後の残弾補充には24時間のインターバルが必要
・連射不可、1発ごとに1分の間隔が必要
・5発目以降は発動しない
「こんなもんかな」
霊丸は放出系っぽいけど、操作系とは隣り合ってるからまあいいだろう。
戦闘用の能力としては申し分ないしな。
誓約はとりあえずナシにしておこう。どの程度使えるかわからないし。
いろいろ試して、必要になったら誓約を追加する方針で。
制約と誓約は、あくまで最後の切り札。まずは基礎修行に力を入れていこう。
「ピギー」
お、ちょうど良いところにスライム発見。
さっそく試し撃ちしてみよう。
スライムに気づかれないよう、「絶」を使ってゆっくり距離を詰める。
俺の絶はまだ完璧じゃないけど、スライム相手なら問題なし。
20メートルほど離れた場所から、人差し指にオーラを集中させて……おお、すごい!
オーラがビリビリ集まってきてる。
あの程度の制約でも、ちゃんと効果あるんだな。
外さないように狙いを定めて──。
「くらいやがれ、霊丸ッ!」
気合とともに放ったオーラの球が、一直線にスライムへと飛んでいく。
次の瞬間──スライムは地面ごと吹き飛び、断末魔すら残らなかった。
すっげぇ……。
地面が1メートルはえぐれてる。
+
霊丸の威力に大満足して小屋へ戻ると、中から人の気配がした。
……なんだ? もしかして小屋の持ち主か?
でも、俺が住み着いてからもう二年以上経ってるはずなんだけどな。
ゆっくりと扉を開けると──そこには、今の俺と同じくらいの年頃の女の子が、リンゴを齧っていた。