ダイの大冒険の世界を念能力で生きていく   作:どか0623

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22 家庭菜園

 バルジ島。そこは無人の孤島である。

 外部からの上陸を妨げる巨大な渦が、自然要塞としての役割を果たしている。

 そんな人を寄せ付けない場所で、俺は今日もひたすら振り続けている。

 

 なにをって? 決まってるだろ、鍬だよ鍬。

 深夜3時。島全体の緑化計画、絶賛実行中なのである。

 

「よいしょー。よいしょー。あ、よいしょー」

 

 リズミカルに鍬を振ることで、寂しさを紛らわせているのだ。

 一人暮らしも長くなると、こういう処世術が自然と身につく。

 

 昨日の昼まで、マリンと一緒に島の視察をしていて思ったんだ。

 この島、あまりにも閑散とし過ぎている。

 

 思い返せば『ダイの大冒険』の原作でも、避難していた兵士たちが食料を巡って揉めていた。

 ならば今のうちに自然豊かな島に変えておけば、いざという時の避難生活も快適になるってもんだ。

 

「俺ってちょー親切だよね」

 

 人のために苦労を惜しまない、この献身的な姿勢。素晴らしいと思いませんか?

 ……というのは表向きの理由で、実際は念の修行を思いっきりやるのに最適だと思ったからなんだけどね。

 

 今まではアイテム探しや作成ばかりで、念の修行は指輪の能力に任せっきりだった。

 そろそろ霊丸とか、他のテクニックも練習して慣らしておかないといけない。

 

 なので、まずは『周』の練習からだ。

 

 鍬にオーラを流して地面を耕す。

 ゴンとキルアがビスケのもとでやっていた、あの穴掘りと同じ要領。

 

 念能力は、結局のところ基本が一番大事。

 こういう地道な努力が、いずれ実を結ぶのだ……たぶん。

 

 とはいえ、修行といってもただ地面を耕してるだけじゃモチベーションが上がらない。

 そこで思いついたのが、この島を実り豊かな土地に変えるというサイドミッションだ。

 

 ある程度耕し終えたところで、俺はポケットからカードを取り出して唱える。

 

「リターン、オン。トーヤ」

 

 唱えた瞬間、カードに記された数値がひとつ減り、目の前に光る球が現れた。

 光が収まると、そこには自宅のコンテナに入れておいた荷物が出現した。

 

 これは俺のスペルカード、《再来(リターン)》の能力だ。

 

 【 再来(リターン) ランク:E 回数:104 】

 ・指定された場所にある荷物を、宣言した場所や人の元へ飛ばす。

 ・場所の指定には《道標(ガイドポスト)》が必要。

 

 このカードも、《同行》と同じくスペルカードの一種。

 本家『グリードアイランド』とは効果が違うし、《再来》に至っては他のカードと併用しないと使えない。最初はずいぶん困ったもんだ。

 

 まあカードの作成者が俺なんだから、記憶の曖昧さが反映されてるのも当然か。

 《道標》の作り方は簡単で、《旧文字》で「使用した場所や人を記憶する」と紙に書いて素材にするだけ。

 

 かくして、荷物の搬送を労せずして行えるようになったわけである。

 ……とはいえ、《同行》の往復で荷物はどうとでもなるから、実際はそんなに大したカードじゃない。

 

 そんな想いを頭の隅に押しやり、緑化計画を再開する。

 

 木を植えるにしろ、野菜を育てるにしろ、水の確保が先決だ。

 荷物の中から器を取り出して、設置に適した場所を探す。

 

 【 湧水の器 】

 ・常にきれいな水が一杯になっている不思議な器。

 ・水が減ると即座に補充される。上限は18,000リットル。

 ・蓋をして一日経過すれば再び湧き始める。

 

 このアイテムは一日おきに蓋の開閉が必要なので、設置場所はなるべく近い方がいい。

 川のように上流に置くより、湖や池のような場所に橋を架けた方が利便性が高い。

 

 だがこの島には、そういう場所がない。

 ならば――作るしかない。

 

 俺はバルジ塔の最上階へ登り、外を見渡した。

 

「あの辺がよさそうだな」

 

 目星をつけた場所に人差し指を向け、意識とオーラを集中させる。

 そして、全力の霊丸を放った。

 

 子供の頃以来の全力霊丸。以前とは比べ物にならないほどの大きさに成長していたそれは、着弾と同時に爆撃のような轟音を響かせた。

 土煙が晴れると、そこには直径20メートル近い大きなクレーター。

 

「おおっ、これはすげぇ! 毎日の『堅』の成果だな」

 

 オート修行、マジでありがてえ。

 

 1分のインターバルを空けて、さらに3発の霊丸を発射。

 縦横2×2で隣接するように撃ち込み、中央には十字の道ができあがった。

 

 あとは道を舗装し、各クレーターの底を繋げれば人工湖の完成だ。

 スコップ片手にクレーターへ飛び降り、開通作業を開始する。

 

「よ、ようやく終わったか。……思ったよりしんどいな」

 

 十字の道の下部に小さな穴を掘って、4つの池を繋げた。

 水が流れるには十分なサイズだったが、予想以上に体力を消耗していた。

 

 地盤が硬かったのか、それとも霊丸4連発でオーラ切れなのか。

 とにかく、やたら時間がかかってしまった。

 

 疲れたし、今日はもう休もう。

 

 水場ひとつ作るだけでこの苦労。

 最初からこっちの作業を優先すればよかった……と、段取りの悪さを少し後悔する。

 

 額の汗をぬぐい、《再来》で飛ばしておいた風呂桶を準備。

 コンテナに風呂桶が入ってるとか突っ込みたくなるかもしれないが、ちゃんと分解して入れてるから問題なし。

 

 組み立てを終えた風呂桶に、《湧水の器》で水を注ぐ。

 水が溜まる間に、今夜の入浴剤を選ぼう。

 

 【 美肌入浴剤 】

 ・あらゆる肌の悩みを解決する万能入浴剤。

 ・疲労回復効果もあり。香りは全15種類以上。

 

 この入浴剤、効果は同じでも香りは豊富。

 どれを使うかは日々の楽しみのひとつでもある。

 

「今日は薬湯にするか。疲れたしな」

 

 メラでお湯を沸かし、選んだ入浴剤を投入。

 

「くはー、生き返るぅ……」

 

 まるでオヤジのような声を漏らしつつ、ゆっくりと湯に浸かる。

 誰に見られる心配もなくのんびり風呂に入れるのは最高だ。……まあ、普段から特に気にしてないけどね。

 

 風呂から上がったら、片付けは明日。今日はもう寝ることにする。

 

 リュックから枕を取り出し、バルジ塔の中へ。

 床に毛布を敷いて寝転がる。

 

 【 快眠枕 】

 ・頭を乗せて眠ると、4時間で8時間分の熟睡効果が得られる。

 ・ただし、枕から頭が外れると効果なし。寝相の悪い人は注意。

 

 「これさえあれば、どこでも安眠だ」

 

 明日は、湖をきっちり完成させたいな――。

 そんなことを考えながら、俺の意識は静かに沈んでいった。

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