昨日(約五時間前)の教訓を活かし、まずは湖の完成を優先することにした。
と言っても、実際には昨日の時点でほとんど完成しており、残すは『湧水の器』の設置と、陸地へと繋がる道の舗装だけだ。
『湧水の器』は全部で五つ所持しているが、そのうち一つは自宅で使用中のため、ここには持ってきていない。
残りの四つを、それぞれのクレーターの斜面に傾けるようにして設置した。
このクレーターが湖として機能し始めるのは、おそらく一ヶ月後くらいだろう。
その頃には、この島の緑化計画もかなり進んでいるはずだ。
そうなれば、この場所だけでは水が足りなくなり、さらなる湖の建設が必要になるかもしれない。
──なんて、そこまで心配するのは気が早すぎるか。
気持ちを切り替え、道の舗装に取りかかることにした。
スコップに『周』を纏わせ、土を均していく。作業自体は単純で、ものの一時間もしないうちに終わってしまった。
だが、水が溜まっていない今の湖は、どうにも見栄えが悪い。装飾が足りないのだろうか。
どうしよう。レンガで舗装するのも良さそうだが、そのレンガを用意するのがひどく面倒だ。
錬金釜で作ることはできるが、一つ作るごとに釜の水を沸騰させなければならず、時間も燃料もかかる。
俺の錬金術は便利アイテムの作成には向いているが、大量生産には不向きなのだ。
……まあ、昼飯を食ってから考えるか。
今は作業効率が求められる時代。分からないことをいつまでも悩んでいても仕方がない。
「619、620、621、622っ……くっそ、割れちまった!」
昼食を済ませた俺は、島の岩場で強化系の修行に励んでいた。
ビスケのもとでゴンとキルアが行っていた、石で石を割るアレである。
一日一個の石を使い、ひたすら石で石を砕き続ける。
手に持っている方の石が砕けたら、その日は終了──のはずだが、俺は石が砕けても構わず続行する。
強化系と変化系のゴンとキルアでさえ、最初は200個も割れなかった。
操作系で相性の悪い俺が600個以上も割れているのだから、彼らの当時のレベルは超えていると見ていいだろう。
昨日の霊丸の威力からしても、大きく劣っているとは思えない。
だが、それに安心している暇はない。あくまで彼らは通過点だ。俺の目標は──ネテロレベルなのだから。
「もう一回最初からか……1、2、3、4──」
石を割りながら、ふと疑問が浮かぶ。
石を強化しているときの俺のオーラの系統は、どうなっているのだろうか?
傍らのコップに浮かべた葉に手を近づけてみると──葉はこれでもかというほど盛大に回り出した。
「やっぱり操作系だよな」
強化に使っているはずのオーラも、性質としては操作系のままだ。……なぜだ?
オーラは生命エネルギーであり、個人の資質により生まれつきの系統が異なるのは分かっている。
だが、意識して別の系統に近づけて使っているなら、性質もその系統に変わるのが自然ではないのか。
もしかして、根本的な考え方が違うのかもしれない。
俺は「石を強化している」と思っていたが、実際には「操作している」だけなのでは?
たとえば、空を飛ぶという現象を各系統で実現する場合──
操作系なら空気を操作して自分を押しやり、放出系なら推進力としてオーラを撃ち出して飛ぶ。強化系なら翼のような道具を腕力で羽ばたかせる。
つまり、手段は違えど「空を飛ぶ」という結果はどの系統でも実現可能ということだ。
では、石割りの場合はどうか。
強化系なら物質の結合を強化し、純粋な強度を増しているのかもしれない。
操作系の俺は、石の形状や状態を維持・制御し、擬似的に強化しているのかもしれない。
「……なーんてな。強化できてりゃ、後は知ったこっちゃねーや」
砕けた石を放り投げ、次の石を手に取る。
無心でやるには退屈すぎるので、妄想でもしながら一日中修行を続けた。
夕方には、大量の石ころの山ができていた。
「これだけあれば、レンガの代わりにはなるだろう」
昨日の修行でできた石の山を見ながら、ひとりごちる。
石割りの修行を始めたのは、何も湖の舗装を諦めたからではない。きちんと代替案を考えた上での行動だ。
つまり──砕けた石を砂利のように敷き詰めて、道を舗装すればいい。
修行と物資調達の一石二鳥。どうだ、なかなか効率的だろう?
後はこの石を道に敷き詰めていくだけだ。
スコップと巨大な桶を使い、運んでは舗装、また運んでは舗装。
クレーターの間の道は横幅が2メートルもあり、想像以上に骨が折れる。
昨日は「石を作りすぎたかな」と思っていたが、むしろ全然足りないくらいだ。
石が足りなくなっては追加し、追加してはまた運ぶ。
地味な作業の繰り返しだが、満足のいく仕上がりになるまで、結局三日もかかってしまった。
湖の水は、まだまだ溜まりきらない。
あと半月は、土でも耕して過ごすとするか。