ダイの大冒険の世界を念能力で生きていく   作:どか0623

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27 協力者

 夜の帳が下り、街中が静寂に包まれる頃、酒場だけが一段と騒がしさを増す。

 この宿屋もまた例外ではなく、自室にいながらにして酒宴の声が壁を揺らすのだから、もう少し考えられた構造にしてほしいものだ。

 

 しかし今は、この喧騒がかえってありがたい。何も考えずに済むからだ。

 

 ──俺はベッドに寝転び、オーラを右手、右足、左足、左手へと順にめぐらせながら、『流』の型の反復練習に耽る。

 用件はすでに済ませた。さっさとパプニカへ帰ればいいものを、アバンと話し終えた後、ただ無為に時間を潰しているのだった。

 

 

+

 

 

 「――というわけです。アバンさん、この話、信じてもらえますか?」

 「……にわかには信じがたい話ですが、あなたの表情を見ている限り、嘘はついていないようですね」

 

 俺は未来の結末のみを語った。ダイやバーンの詳細までは話さず、異世界転生や念能力の概念にも触れていない。

 信じてもらえなくても構わない。信憑性がないということは、裏を返せば話してしまっても問題無いということだ。言い訳さえ通れば、この場はそれで十分収まる。

 

「その情報は、いったいどこから得たのです?」

「神様のお告げ——所謂『神託』です。詳細は説明できませんが、さきほど申し上げた未来は必ず訪れます」

 

 アバンは眉間に皺を寄せた。だが顔色は変わらない。

 予想通りのリアクションだ。

 

「ふうむ、神託ですか。理由としては少々弱いですが……」

「信じてもらえないなら仕方ありません。私はこれで失礼します」

 

 一方的に押しかけられた形であるが、この流れは俺にとっては好都合でもあった。

 カウンターにおかれたミルクを一気に飲み干し、この場を去るべく席を立ち上がった。

 

「……待ちなさい。あなたの話だけでは説明のつかないことが、まだあります」

 

 アバンは俺の木刀に指をさす。

 

「トーヤさん。その木刀、あなたが作りましたね。木刀だけじゃない、他の諸々のアイテムはすべてあなたが作ったものだ」

 

 意外な一言に思わず立ち上がったまま動きを止めてしまった。

 

「……いいえ、違いますよ。なぜそう思うんですか?」

「昨日、その木刀の話をしたときにあなたはこう言ったんです『変な文字は書いてあるけど、普通の木刀よりめちゃくちゃ頑丈ですからね』と」

「言いましたよ。でもそれが何か?」

 

 アバンの言葉を頭のなかで反芻し、おかしなところがないか考える。

 しかし特に変なことなど有りはしない。普通の会話だと思う。

 

 アバンは静かに木刀を手に取り、刻印を指先でなぞる。

 

「私にはその木刀に書かれているのは模様にしか見えない。しかしあなたはこれを文字だと言う。代々学者の家系を自負する私でも、こんな文字は初めて見ましたよ。神託を持ち出しても、文字の読み書きや技術までは授かるものではありません」

 

 ――しまった。この世界の人間にとって現代の文字は読めないだけじゃなく、文字にすら見えないんだ。

 そんな簡単なことにも気づかないなんて……。

 

「……おっしゃる通りです。ですが、協力をお願いする立場ですが、私は自分の能力を明かすつもりはありません。戦士としての矜持ってやつです。自分の能力は明かせない。誰であってもね」

 

 アバンはふ、と笑った。

 

「矜持とは、また立派な。それでは仕方ありません。仕方ありませんので――あなたに協力することにしましょう」

「は?」

 

 思わずマヌケな声を出し、俺はただ立ち尽くすのだった。

 

 

+

 

 

 ――なんてやりとりからをしたのが5時間前。

 

 アバンはそれ以上の詮索をせず、「じゃあ、何をすればいい?」と問い返してきた。

 今すぐ彼に任せたいことは山ほどあるが、まずはポップを弟子にしてほしかった。だから俺はただ一言、「ランカークスへ行って、そこからは自分の判断で動いてくれ」とだけ伝えた。

 

 曖昧な指示にも関わらず、アバンはひと言の疑問も挟まずに出立した。

 彼が何を考えているのか、まったく見当がつかない。だが、どうやら本当に協力してくれるつもりらしい。

 

 魔王軍の動きが本格化するまでは大胆な行動は避けねばならない。

 アバンに本格的に動いてもらうのは彼がメガンテを使い、戦線から身を隠している間になる。

 

 ストーキングの拘束から解放された今、ここに留まる理由は失せた。パプニカへ帰還しても構わないはずだが――。

 

「はあぁ……今日はもう、寝るか」

 

 わずか二日とはいえ、アバンとの一連のやり取りにすっかり心身をすり減らされた。

 疲れを言い訳に、念の修行は手付かずのまま、ベッドにもぐり込む。酒場の喧騒が遠い子守唄のように耳をくすぐり、瞳を閉じる。

 

「今日の分は、明日やろう」

 

 そう自分へ言い聞かせ、俺は眠りに沈んでいった。

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