ダイの大冒険の世界を念能力で生きていく   作:どか0623

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34 衝撃

 呪文を発動するには、高い集中力と時間を要する。

 その性質から、いわゆる攻撃呪文を戦闘中に発動させるには、それなりの経験が必要とされる。

 

 個人差はあるが、長年修行を積んできたアポロでさえ、初級呪文で一秒。中級呪文で五秒。上級呪文に至っては、二十秒はかかるだろう。

 もっとも、連射ともなれば話は別だが。

 

 また、今述べた時間についても、感じ方は人それぞれだ。

 一秒を早いと感じる者もいれば、遅いと感じる者もいる。

 

 残念ながら、アポロと対峙している騎士――不死騎士団長ヒュンケルにとっては、後者だった。

 それも、圧倒的なまでに……。

 

 彼の剣技は、人間の到達しうる極限に達していた。

 その剣をもってすれば、一秒の間に十以上の斬撃を繰り出すことすら可能だ。

 

 肉体的には並の人間と変わらぬアポロに、それを捌く術などあるはずもない。

 故に、これは決して油断などではなかった。

 なぜなら、ヒュンケルの斬撃に対し、アポロは本来、何の抵抗もできず切り裂かれる運命だったからだ。

 

「――ぐっ……ば、バカな。……正気か、貴様ッ!」

 

 ヒュンケルは、アポロのとった行動に戦慄し、困惑していた。

 あろうことかアポロは、視認すら困難なヒュンケルの斬撃を、その左手で受け止めたのだ。

 

「鎧がどうのと言っていたが、こちらにも強力な防具がある。自分だけが特別だと思うなッ!」

 

 アポロの両手には、トーヤから託された黒い手袋がはめられていた。

 その手袋は、強力な防刃性能を備えており、魔剣による一撃をも受け止めることができた。

 

 狼狽えるヒュンケルの隙を逃すはずもなく、アポロは言葉を紡ぎながらも、右手に蓄えていた魔力を一気に解き放つ。

 

「――イオラッ!!」

 

 残る魔力のほとんどを注ぎ込んだ渾身の呪文。

 それを掌打のような形で、がら空きになったヒュンケルの腹部へと叩き込む。

 

 直後、爆発の衝撃でアポロの身体は大きく弾き飛ばされ、壁へと激突した。

 激突の衝撃により吐血しながらも、彼は崩れ落ちていくヒュンケルの姿を見つめる。

 

 階下へと沈んでいくヒュンケル。床は完全に崩落していた。

 

 アポロは、斬撃を受け止めた左手の砕けた感触と、呪文の熱で焼けただれた右手の痛みを感じながら、壁を背にしてなんとか身体を起こした。

 そのとき、廊下の向こうから見知った人影が駆け寄ってくる。

 

 「アポロっ!? ――今、回復呪文をかけるわ。動かないで」

 「マ……マリン……」

 

 駆け寄り、回復呪文を唱える彼女の姿に、アポロは心の底から安堵した。

 

 治療の最中、アポロはマリンにあれこれ話そうと思った。

 だが、結局、口を噤んだままだった。

 

 どうしてここに? 無事でよかった。

 よくここまで登ってこれたな。姫様とエイミは屋上にいるはずだ。

 

 聞きたいことも、言いたいことも、山ほどある。

 だが、その中で一番気になることだけが、どうしても口にできなかった。

 

 ――トーヤは、どこにいる?――

 

 たったそれだけのことが、どうしても聞けなかった。

 

 

 +

 

 

「ふわああぁぁ……だりぃ」

 

 薄暗い洞窟の中で、大きな欠伸をひとつ、ついでに独り言ちる。

 言ったあと、ああ失敗したなと思った。疲れたとか怠いとかって口にすると、余計にそう感じるもんだよな。

 

 『大天使の息吹』を作るために洞窟の奥にこもって、今日で17日目。

 俺はついさっき、ようやく2枚のカードを完成させることができた。

 

 以前に作った分もあわせて3枚。奇しくも、HUNTER×HUNTER原作のカード化限度枚数と同じになった。

 

 若干の不安は残るけど、他にも回復アイテムはあるし、3枚あればなんとかなるだろ。

 ていうか、もう時間もなさそうだしな。

 

 本当はすぐに寝てしまいたいくらいには疲れてたけど、さすがに17日間もこもりっきりだったせいで、外に出たくなった。

 気分転換にパプニカで飯でも食おう。よく考えたら、最後に行ってから3ヶ月以上経ってるし。

 

 マリンたちにも会いたいな、と思いながら鉄扉を開けると、散らかり放題の家具が目に入った。

 

「……ああ、そういえば。これも片付けなきゃな。マジでだりぃ」

 

 俺は基本、嫌なことは後回しにするタイプだ。

 というわけで、洞窟の掃除は脳の片隅に追いやることにした。

 

 そのまま外へ出ようとしたとき、一輪の花が目に留まった。

 

「なんだこれ? なんで一本だけ、こんなとこに……」

 

 枯れかけたその花を見て、少しだけ疑問に思ったけど、やっぱり深くは考えず、目的地へ向かうことにした。

 

「アカンパニー、オン。パプニカへ!」

 

 さーて、今日は何を食おうかな。久しぶりの外食だし、メニューの端から順に頼んでやろうか。

 なんて考えながらパプニカの街に入ろうとした、そのとき――。

 

 俺は、とんでもない光景を目の当たりにした。

 

「やっべえ……出遅れたぁぁぁぁっ!!」

 

 荒れに荒れきったパプニカの街を前にして、俺は一人、絶叫するのであった。

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