ダイの大冒険の世界を念能力で生きていく   作:どか0623

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38 助っ人

 数時間前。俺は破邪の洞窟でカードの異変に気がついた。

 

 そのカードとは、ヒュンケルの名を登録してある『追跡』のカードだ。

 方位磁石のように対象者の向きを示し続けるその針が大きく動き、記されている彼我の距離数が数キロ単位で変動していたのだ。

 

 これはダイとの戦いに決着がついたに違いないと確信し、アバンとの別れを手早く済ませて、急いで駆けつけたのだった。

 

 カードの示すままに進んでいくと、俺はようやくヒュンケル――ついでにクロコダインも――を見つけることができた。

 二人はなにやら話し込んでおり、その会話に耳を傾けていると、なんとダイを助けにバルジ島へ向かうというではないか。

 

 ならばちょうどいい。この機に、俺も本格的にパーティーに参加しようかと思ったのだった。

 最初は、突然現れた俺に警戒を強めていた二人だったが、ダイの知り合いだということを懇切丁寧に説明することで、ようやく打ち解けることができた。

 

 ヒュンケルは(ダイにやられて)ボロボロだし、クロコダインも(ヒュンケルにやられて)かなり弱っているようだ。

 原作の彼らは、よくこれでダイたちの加勢になんぞ行けたものだ。

 

 常人なら死んでいてもおかしくない怪我なので、俺は『エリキシル剤』を二人に渡し、傷を癒してもらうことにした。

 

「ほう、これは凄い。体の底から力が湧いてくるようだ。以前よりも強くなったような気がするわい」

 

 薬を飲んでクロコダインがそう言った。

 ……それは気のせいだよ。

 

 上機嫌なクロコダインとは対照的に、ヒュンケルは暗い表情のまま動かずにいた。

 どうしたんだ一体。早く傷を治して、ダイの加勢に行かなきゃいけないんだけど。

 

 不思議に思っていると、ヒュンケルが俺を見て口を開いた。

 

「……お前は俺たちの話を聞いていなかったのか。俺たちは魔王軍だったんだぞ」

 

 薬の小瓶を持つ手は、自身への怒りなのか、かすかに震えていた。

 

 下らないこと言ってないで早く薬飲めよ。そうしないと、先に飲んじゃったクロコダインの立場がないだろうが。

 まるで飲み会で乾杯前に飲み始めちゃった人みたいになってるじゃないか。

 

 それでもヒュンケルは、俺の答えを待ったまま、一向に薬を飲もうとしない。……仕方ないな。

 

「――元魔王軍ね。ちゃんと聞いてたよ」

「ならば、何故こんなマネをする。恨みはないのか?」

「恨みって言ってもな……。魔王軍にいたなら、人間と戦うのは当然だったわけだし。今は人間側にいるんだから、仲間に恨みごとを言うのは、それこそおかしいんじゃない?」

 

「……な、仲間……だと?」

「いや、仲間だろ? これからダイを助けに一緒に戦いに行くんだから」

「ワ~ハッハッハハハ!!! ヒュンケルよッ。これが人間という生き物だッ! これ以上ヒトの好意を無下にするものではないぞッ!」

 

 大声で笑いながら俺の背中をバンバン叩くクロコダイン。ちょっと痛いです。

 再度薬を勧めると、ようやくヒュンケルは瓶を傾けた。

 

 そして、その効果に驚いた様子で手を握り、身体の調子を確かめるのだった。

 

 

 +

 

 

 事情を知らない体を装っている俺は、二人からダイたちの状況を聞いていた。

 

 ダイたちとフレイザードがバルジ島で戦ったこと。禁呪法によりバルジ島では皆の力が封じられてしまうこと。ダイの仲間が人質に取られたこと。

 すべての話を聞き終えた俺は、「こいつら、やけに事情通だな」と思いつつも、すぐに出発するため立ち上がった。

 

「早くダイたちと合流しようぜ」

「待て。合流するのは、ダイたちが魔王軍と戦い始めてからの方がいい」

 

 そう言って俺を止めたのはヒュンケルだった。

 

「どうして?」

「恐らく魔王軍は、バルジ島へ乗り込んだダイを総出で迎え撃つだろう」

 

 だろうな。だからこそ、早く合流した方が良いと思ったのだが……。

 続きを待っていると、先に口を開いたのはクロコダインだった。

 

「魔王軍が総出で掛かるといっても、戦力差は歴然。奴らは少なからず油断しているはずだ」

「なるほど、魔王軍の意表を突くわけか。……確かに、元軍団長が二人もダイに加勢してるってバレたら厄介だよな」

 

 どうりで原作で、二人がタイミングよく現れたわけだ。

 さすが元軍団長。戦い慣れてるって感じだ。頼もしい限り。

 

「ダイたちは、フレイザードよりも先に炎魔塔と氷魔塔を破壊しようとするだろう。俺とクロコダインは、その塔を守る敵を迎え撃つ」

「いくら多勢に無勢とはいえ、隙を突いて塔を破壊するくらいなら十分可能だろう」

 

「で、俺は?」

「トーヤは、どちらでも構わない。体を張るのは俺たちの役目だ。ダイたちと合流したら、そのままフレイザードの元へ向かってくれればいい」

「なんだ、自由か。なら俺はさっき言った通り、島に入る前にダイと合流してもいい?」

「構わんが……何かあるのか?」

 

 俺の意図が掴めないらしく、ヒュンケルは眉をひそめて聞いてきた。

 

「まあね。俺はお前らと違って、魔王軍に警戒されてないから合流しても問題ないだろうし。それなら、先に向こうでやっておきたいことがあるんだ」

「そういうことなら異論はない。俺とヒュンケルは一足先に島へ行って待機していよう」

 

 話がまとまったところで、俺は二人と別れてダイの元へ向かうことにした。

 

 『同行』を使うわけにもいかないので、バルジ島への道のりを全力で走る羽目になったが、そこでふとあることに気がついた。

 

「……結局、別行動かよ。話しかけた意味ないじゃん」

 

 ガルーダに乗ってどんどん小さくなっていく二人の背中を眺めながら、俺はやるせない気持ちになるのだった。

 ……っていうか、俺もそれに乗せて欲しかった。

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